赤ちゃんが生まれて、ちょうど知恵がつき始める生後6か月ごろから1歳ごろまでに、急な発熱が起こることが多い。これは俗称、「知恵熱」と呼ばれている。
あたかもそれは、人が知恵を得るために必ず通らねばならない試練であるかのようだ。しかし人の成長過程では、同じような試練の時期が必ず存在する。大人が成長するための通過儀礼のような辛い時期が誰にでも必ずあるのだ。
社会人としてスタートを切った新人が、意欲と希望に燃えて仕事を覚えていく途中で、自分の能力や仕事の意義に疑問を感じて停滞期に入ることがある。この停滞期を僕は、「大人の知恵熱」と呼んでいる。
それは遅かれ早かれ誰にでも起こる現象で、この時期を乗り切ってこそ、プロとしてふさわしい仕事ができるようになる。そもそも人間の成長曲線が、必ず右上がりの上昇カーブを描くなんてことはあり得ないし、それを期待しても無理だ。上に昇っていく過程では、必ず階段の踊り場があって、そこで立ち止まって休むことがあって当然である。
しかし難しいのは、休んだ後に必ず階段を昇ることができるという保障はないということだ。昇る気力を失ってしまう人がいる。上に続く階段を見つけられない人がいる。そのためせっかく昇った階段を降りてしまう人がいる。それはしばしばバーンアウト(燃え尽き症候群)と呼ばれたりする。
こうしたバーンアウトを防ぐためには、そっと手を差し伸べて、階段を昇る動機づけを与えたり、階段がある場所を見つけるヒントを与えてくれる人が必要になる。いわゆるスーパーバイジーと呼ばれる人の存在が必要になるわけだ。
特に対人援助の場でソーシャルワーク(以下SWと略)に携わる新人の場合、大人の知恵熱が起きやすく、深刻になることが多い。(※ケアマネジャーの仕事もSWであるから、同じ悩みを持つことになる。)
SWの仕事の相手は物ではなく人である。「人」という相手は、こちらが予想できない反応や行動を示すものなのだ。よって先輩から教えられたとおりに事が運ぶわけではなく、様々な感情と触れ合う中で、自分の頭で考え、自分で行動しなければならない。しかも援助の仕事には明確な手順があるわけではなく、思ったような結果に結び付かないことも多い。そのため自分の能力に疑いも持ちやすい仕事がSWともいえるわけだ。
しかも対人援助の専門家になろうと真面目に仕事をしている人ほど、知識や技術の確立に熱心になり過ぎて、全体的な視点を失ったり、してはならないことをしてしまったり、結果が出ないことに過度の自己責任を感じて、「大人の知恵熱」で立ち止まってしまう人が多い。
この時、知恵熱を冷ますことができるのが、「スーパービジョン」である。特にソーシャルワーカーは、介護職員のように先輩・同僚・後輩が数多くいて、同じ職種の中で悩みを共有したり、話し合ったりする機会に恵まれないことが多く、職場内でスーパービジョンを受けるシステムを意識的に作っておかないと、誰にも相談できず、誰にも自分の仕事ぶりを評価してもらえないというジレンマの中で、仕事に煮詰まってバーンアウトしてしまうことが多い。
しかしそうはいってもスーパービジョンができるスーパーバイザーが存在しなかったり、スーパービジョンそのものが理解されておらず、業務として機能していない職場の方が多い。
そもそもスーパービジョンは、アドバイスを受けようとする動機づけを持つスーパーバイジーがいてこそ成立する援助過程である。職場内にスーパービジョンとは何ぞやという理解がないところで、その過程が業務に取り入れられるわけがないのであるから、そこで悩みを持ったり、成長動機を促してもらいたいソーシャルワーカーがいたとしても、スーパービジョンがそれを助けてくれることを知らないことで、その機会を失ってしまう人が実に多い。
このようにスーパービジョンは、その知識がないことによって存在しなくなってしまうという一面を持つのである。だからこそスーパービジョンの理解を促す学びの場が大切になる。SWに携わる者だけではなく、職場の管理的立場に立つ人にも、是非そのことを学んでいただきたい。
来年1/17(金)と1/18(土)の2日間にわたって、福井市と坂井市で1日5時間の講演を2日連続で行う予定になっているが、そのうち17日の福井市では、スーパービジョンを取り入れた魅力ある職場づくりという観点からお話ししようと思っている。この研修は福井県介護支援専門員協会主催・介護支援専門員資質向上研修研修「スーパービジョンとOJT」として行われるもので、講演テーマは、「すべての『人財力』を活かす魅力ある職場つくりのために」である。
(※お問い合わせは、福井県介護支援専門員協会 事務局宛 FAX : 0776-60-1477)

翌18日の坂井市講演は、福井県介護支援専門員協会さかい支部主催研修として行われるもので、テーマは、『介護保険制度の今後の動向と介護支援専門員に求められる役割〜医療・介護連携からターミナルケアまで〜』
(※お問い合わせは、ケアマネSAKAI迄 TEL:080-6351-6667)

チラシ画像を添付しているが、どちらの会場も非会員でも参加できるオープン講演なので、お近くの方はこの機会に是非会場までお越しいただきたい。
スーパービジョンについては、このブログにも随時情報発信していく予定にしている。とりあえず1/17の福井市講演スライドに、その内容を入れて作成している最中である。乞うご期待を・・・。
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