看取り介護に関するセミナーで、看取り介護・ターミナルケアに関する加算を算定するための要件を説明することが主たる内容であったり、単に終末期支援の方法論をレクチャーして終わっている場合がある。

しかし本当にそれでよいのだろうか。勿論、終末期に起こり得る身体状況や、精神状況の変化について知り、それに対応する方法を学ぶことは大事である。だからと言って、終末期に至るまでの日常支援を無視して、終末期支援の方法論を語っても意味がないと思う。

看取り介護は特別なケアではなく、たまたま命の期限が明らかになっている人に対して行われるケアであるに過ぎず、日常の支援と分断した場所や方法としてで行われるものではなく、過去の暮らしと繋がっているものである。日常ケアが貧困な場所で、看取り介護だけQOLが高まるわけがないし、そんな奇跡があっても意味がないのである。

さらに言えば、看取り介護の方法論を考えるにあたっては、終末期にどのような支援が必要かを考えるだけでは不十分であり、自分が終末期になった場合に、どこでどのように過ごしたいのかということを、愛する誰かに対して表明しておくことが大事であることを理解しなければならない。それを確認したうえで、その希望に沿った支援を行うことが最重要課題となる。

だからこそ看取り介護に先立って、「リビングウイル」の宣言を支援することが、関係者に求められてくることを、しっかりと伝えずして、終末期の介護の在り方だけを語っても国民ニーズに沿った支援には結びつかない。

特定の疾患により終末期と宣言される状態とは異なる、老衰などの自然死を迎える人については、支援対象者がお元気な時期から関わっている介護関係者が、人生会議(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)の視点から、リビングウイルの支援に関わっていくことが求められるのだ。

そう考えると看取り介護とは、かつて介護支援の在り方が、ADL支援からそれにとどまらないQOL支援への転換がはかられてきたように、QOLからQOD(Quality of death)まで視野に入れた支援への転換ともいえるのだ。

QODとは、単にターミナルケアの方法論を問うものではなく、そこで暮らし、やがてそこで最期のときを迎えるまで、いかにその人が生命を持つ個人として尊重され、豊かな暮らしを送ることが出来、やがて安らかに死の瞬間を迎えることが出来るかという意味であり、我々がそこで豊かな暮らしを送ることが出来る支援のあり方と、最後の瞬間を看取り・送り出すまで、すべての過程を質の高いサービスとして構築することを意味する概念である。

そなわち看取り介護は、日常支援と繋がっているという意味であり、ごく普通の介護ということを意味することを、関係者はしっかりと自覚すべきだ。そのことを伝えない、「看取り介護セミナー」であっては困るわけだ。そんな意味のないセミナーを受講しても、本当の看取り介護なんてできるはずがない。

12月には愛媛県久万高原町と京都市と東京都世田谷区で、「看取り介護講演」を行う。3会場とも日常のケアと繋がっている看取り介護を語ってくる予定だ。

このうち京都市の看取り介護セミナーは、12/16(月)と12/17(火)二日間にわたるセミナーで、合計10時間の研修講師を、僕が一人で務めることになっている。主催者の希望でグループワークの時間もとっているので、僕の講演時間は2日間で合計6時間40分の予定である。これだけ時間があると、看取り介護について、様々な角度から、様々なケースを取り上げて語ることができる。

ちなみに現在スライド作成中だが、主な内容は以下の通りとしている。

全体テーマ「看取り介護実践の基本
1 看取り介護の基礎知識
・看取り介護とはどのような介護か
・介護施設で看取り介護が求められる背景
・看取り介護に備えるために必要とされるリビングウイルの支援とは何か

2 看取り介護の開始から終了までの手順
・判定〜説明同意〜計画作成〜連絡・連携〜実施〜終了〜評価までの具体的な流れ
・必要な書式
・求められるPDCAサイクル
・看取り介護加算の算定要件
・職員のメンタルケア
・遺族のグリーフケア

3 看取り介護の実際
・介護施設で行われた看取り介護の事例
・看取り介護の今後の課題
・スピリチャルペインの受容
・命の尊さを理解しながら看取り介護に関わる姿勢

この中で終末期診断の在り方、看取り介護計画作成の要点、説明同意に必要な視点、終末期の身体状況変化の特徴やその対処法、各職種別に求められる役割などについてくまなく網羅する予定である。

本研修は実施主体が、京都地域包括ケア推進機構・一般社団法人京都府老人福祉施設協議会・一般社団法人京都市老人福祉施設協議会とされており、会員の方のみの参加になっているが、参加された方々にじっくりと看取り介護の実践論を伝えてきたいと思う。京都の皆さん、会場で愛ましょう。

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