昨夜から今朝にかけて、「ケアプラン有料化先送り」というニュースが一斉配信されている。

共同通信社のネットニュースでは、以下のように報道されてる。(19日22:04配信)
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ケアプラン有料化、先送りへ 介護保険制度改正の焦点

政府は19日、高齢者が介護保険サービスを利用する際に必要な「ケアプラン」(介護計画)の有料化を介護保険制度の改正案に盛り込まず、先送りする方向で調整に入った。介護費の膨張を抑えるため議論している制度見直しの焦点となっていたが、一律に自己負担を求めることに与党内から慎重論が相次いだため判断した。
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これは先の、「居宅介護支援事業所の管理者要件を主任ケアマネとする経過措置延長」に引き続いて、居宅介護支援事業所関係者にとっては朗報と言えるのではないだろうか。

僕は有料化にはずっと反対意見をこのブログの中で書いてきた。(※関連記事

ケアプランが有料化されれば、居宅介護支援事業所の担当ケアマネは、自己負担分の請求とその費用徴収業務が新たに業務負担となってくる。当然滞納ケースも出てくるだろうから、その催促・滞納金の支払いに関わる支援業務も負担となってくるだろう。しかも滞納金は、すべて回収できるとは限らないので、居宅介護支援事業所の収益減にもつながりかねない。

そんな中で利用者が自分の懐から実際にお金を支払うことで、一部の利用者には過度な権利意識が生じ、不必要なサービスの利用プランを立てさせようとするプレッシャーが強まるだろう。それに迎合せざるを得ない、「御用聞きケアマネ」が多くなることも容易に想像できる。

そもそもケアプランを有料化しても財源抑制効果はほとんどない。「ケアプラン有料化にメリットはゼロどころか・・・。」の記事の中で有料化のデメリットを指摘しているが、その4で書いたように、無料でセルフプランを作成支援する事業者による、「囲い込み」が増え、不必要な過剰サービスが増えるからである。

そんなメリットのないケアプラン有料化が、ここまで引っ張られて議論された理由は、財務省がそのことを強く主張し、日経連等がその主張を強く後押ししたからである。

そのため関連部会で現場の関係者の多くが有料化に懸念・反対の声が挙げてもなお、次期報酬改定時には、この有料化の流れは既定路線のように論じられる傾向にあった。しかしここにきて政府与党内で慎重論が広がったことから、大逆転の流れとなったということであろう。
※なお10/28の社保審・介護保険部会の中で、全国老人福祉施設協議会の桝田和平経営委員長は、「1割負担、2割負担といった方法ではなく、例えば月額500円など定額制の方が望ましいのではないか」との考えを示し、有料化に賛成する意見を述べていたことを、関係者は記憶にとどめておく必要があるだろう。

そのことはひとまずほっと息がつけたと言ってよいだろう。しかしこれは有料化案が廃案になったわけではなく、「先送り」されただけにしか過ぎないという点にも注意が必要だ。されば2021年の報酬改定では、有料化は見送られたとしても、2024年の報酬改定時にはまたぞろ有料化を求める意見が出され、それに対する議論が再燃するという意味でしかない。

そもそも今回の与党の懸念も、自己負担が増える中でケアプランも有料化されれば、国民の批判が強まるので、ソフトランディングのために、有料化案を先送りしてはどうかというニュアンスが強いように思える。

その背景には、11/19に経団連が公式サイトで2割負担の対象者を拡大するように提言するなど、介護給付費に対する国民負担を増やす圧力が強まっていることと関連している。

今回ケアプラン有料化が見送られたが、介護給付費分科会に示されている検討事項としては、「自己負担2割の対象者の拡大」・「高額サービス費の上限引き上げ」・「要介護1と2の生活援助の地域支援事業化」が残されているわけである。

そうするとケアプラン有料化を先延ばしした分、残りの3検討事項の実現性は高まったと言えなくもない。

さらにここにきて政府は、介護施設の食費・居住費の補足給付の資産要件について、預貯金が1.000万以上あれば支給対象としないという現行要件を見直して、預貯金が500万以上の対象者を除外する方向で調整に入っている。

どちらにしても国民にとっての痛みの伴う改正が行われることには変わりないという訳である。そしてそれは政治家や官僚の痛みとは無縁な場所で、堂々と行われようとしている訳である。

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