政府が年末に編成する2020年度予算案で、「保険者機能強化推進交付金」が、現在の2倍となる400億円に拡充されることが確実となった。

保険者機能強化推進交付金とは、通称インセンティブ交付金とも呼ばれるもので、2018年に創設されたものである。現状の予算200億円は、市町村へ190億円、都道府県へ10億円の配分となっており、それは介護予防や自立支援の成果を挙げた自治体に手厚く配分するという、「報酬金」という性格を帯びている。

現在その交付金については、PDCAサイクルの活用による保険者機能の強化、ケアマネジメントの質の向上、多職種連携による地域ケア会議の活性化、介護予防の推進、介護給付適正化事業の推進、要介護状態の維持・改善の度合いなど、都道府県に向けては23項目、市町村に向けては65項目の評価指標に基づいて、毎年評価(ポイント計算)し配分額が決められている。

そのインセンティブ交付金について、今年6月の未来投資会議で、新たな成長戦略のひとつとして強化する方針を打ち出していたところであるが、予算案にそれが盛り込まれたことで、強化策としての予算拡充が確実なものになった。

交付金の目的は、認知症の予防や要介護状態の維持・軽減に成果を挙げること等で、介護予防効果を上げて、介護給付費等の抑制を図るためであるとされているが、本当にそのような自立支援効果が発揮されているのだろうか。

予算財源が潤沢にあるわけではない各自治体としては、当然その交付金はできるだけ多くもらいたいのが本音だから、国の指標に沿った成果を挙げることが目的化される向きがあることは否めない。交付金がもたらす効果に関心を寄せるよりも、交付金を得るためのテクニックにエネルギーが注がれるわけである。

そうであれば、この交付金によってもたらされているものは、自立支援ではなく自立編重の給付抑制策にしか過ぎないのではないのだろうかという疑問が生ずる。

介護保険制度からの卒業という変な言葉が独り歩きして、元気高齢者がもてはやされ、介護サービスをつかわないことに価値があるという方向に住民意識を持っていき、真にサービスを必要とする人が肩身の狭い思いをしていないだろうか・・・。どうもその心配が現実化しているような気がしてならない。その傾向が益々進められていくのが、今回の拡充策ではないだろうか。

拡充された交付金については、地域の高齢者の、「通いの場」の拡充や、その通いの場にリハビリ専門職が関わっているかなどが新たな評価として加わることになっている。ここにはすでに地域支援事業化されている要支援者の通いの場(通所型サービス)の充実も含まれることになるだろう。

そこに自治体のエネルギーが注がれ、高齢者の通いの場が充実されていった先には、要介護1と2の軽介護者と呼ばれる人たちの通所介護も、地域支援事業化されていく可能性が高まる。

来年から団塊の世代の人々が、すべて70歳に達する。まだお元気な方が多い団塊世代の人々であるが、70歳を超えてくると徐々に心身に障害を持つ人が増えてくるだろうし、通所介護を利用する人も増えてくるだろう。

そうなると現在、過当競争気味で顧客確保に苦労している通所介護事業者が多いという状況が好転して、通所介護事業においては顧客確保が現在より容易になるかもしれない。しかしそれは同時に介護給付費の増加につながる問題であり、国としては団塊の世代の人たちが介護サービスを使うことで増加する介護給付費を、少しでも抑えようとすることは目に見えている。それが要介護1と2の通所介護の地域支援事業化に他ならない。

ということで2020年の制度改正・2021年の報酬改定時に、要介護1と2の通所介護が介護給付から外れる可能性は低いと思うが、その次の制度改正もしくは報酬改定時に、そのことは実現されてしまうのではないかと危惧しているところだ。

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