介護福祉士の資格取得に関連して、介護福祉士養成校ルートにも2022年度から国家試験合格を義務付けることが既に決まっている。

2017年度から2021年度の5年間は、その猶予期間にあたり、この間に介護福祉士養成校を卒業した人については、5年の間に国家試験に合格して資格を得るか、5年続けて介護実務に従事すれば国試をクリアしなくても資格を与えるルールとなっている。

その経過措置を経て国試合格義務化は2022年度から完全に義務化される予定になっているわけである。

しかしこの決定事項である国試義務化が見直され、2022年度以降も国家試験合格なしに養成校ルートには介護福祉士の国家資格を与える方針転換の可能性が高まっている。

その背景には介護人材不足がある。その対策として2017年9月から外国人の新たな在留資格が創設され、養成校を出て介護福祉士になれば日本で長く働いていける環境が整ったことが関係しているのだ。

このため介護福祉士養成校に入学する外国人留学生が急増し、今年度の入学者数は前年の倍となっており、全体の約3割を外国人の学生が占めるという状態が生まれている。

しかし介護福祉士養成校ルートにも国試合格義務を課してしまうと、日本語スキルの乏しい外国人留学生にとって国試のハードルは高いために、国試に合格せずに、せっかくの在留資格要件緩和が機能しないことになるという懸念が示されるようになった。

そうなればサービスの担い手を量的に確保していく観点からはデメリットが大きいということで、自民党から見直し意見が出され、10/31に開かれた同党の社会保障制度調査会・介護委員会で関係団体の意見聴衆を行なったところ、全国老人福祉施設協議会、全国老人保健施設協会、日本介護福祉士養成施設協会、全国社会福祉協議会から国試義務付けの実施延期の賛成意見が示され、国会議員からの異論が出されなかったことから、養成校ルートの国試義務化はさらに先送りされ、なし崩し的に見送られていく可能性が高くなった。

これに対し当日の参加団体では、日本介護福祉士会だけが、「介護福祉士の資格の価値を落とす。人材を確保は処遇の改善、それに伴う社会的な評価の向上こそ本質的な改善策のはずだ」として義務化延期に反対を主張した。

その反論は、心情的には理解できないわけではない。

しかし養成校ルートの国試義務化と、処遇改善がリンクしているわけではない中で、介護福祉士という資格が業務独占の資格でないことを鑑みても、国試の義務化によって介護福祉士という資格に対する社会的認知度が高まって、待遇が改善し、人材確保につながるという主張は、やや説得力に欠ける。

それよりも介護福祉士になることができる人の絶対数を確保する方が、人材対策としは有効だし、「人口減少社会の中で」という記事で指摘した通り、我が国の人口構造を短期的に改善する手当や政策は存在しないために、全産業分野で日本人だけで人材確保が困難な状況ははっきりしているのだから、外国人がより介護サービスの場に張り付きやすく、定着しやすい環境を創るほうが、人材対策としては有効な政策・手立てになることは間違いのないところだ。

そもそも「国家試験を全ルートに義務化しないと、介護福祉士の資格の価値を落とす。」と主張する日本介護福祉士会の役員に、国試を受けないで介護福祉士資格を取得している人がいるのでは、その意見に何の説得力も感じなくなる。

本当に国試義務化が必要不可欠な対策というのなら、国家試験を経ずに介護福祉士資格を有している役員は、率先して一度資格を返上し、実務者ルートで国家試験を受けなおすべきだろう。そして全ルートの国試義務化が実現した場合は、経過措置期間の卒業生のみならず、現役の全介護福祉士について、一定期間内の試験合格義務を貸す提言を行うことでもしない限り、介護福祉士会の発言に重みは出ない。

人材を求める介護事業者の立場から言えば、従業員の質は資格によって左右されるものではないという現実があり、資格取得過程がどのようなルールになろうとも人材をきちんと見極めて選べばよいだけの話であるのだから、義務化の先送りにデメリットは何も生じない。

むしろもう少し下賤な方向から考えると、国試義務化によって、現在より介護福祉士資格を新たに取得する人の数が減れば、サービス提供体制強化加算等の加算算定に負の影響が生ずることを考えれば、義務化延長を歓迎する介護事業者の方が多いのではないだろうか。

そもそも国試義務化の延期によって、現在の介護福祉士の資格の重みが変わるわけではない。少なくとも現在より、その価値が軽んぜられるわけではないのだ。そうであれば介護福祉士会は、自らの資格価値が社会的に認められるために、介護福祉士としてどのような社会的活動をすべきかを考えたほうがポジティブだ。

介護福祉士の有資格者が、介護の質を担保する存在となっているのか、そのために日本介護福祉士会という職能団体が機能しているのかを自らの活動姿勢で国民全体に知らしめる必要がある。

待遇についても、すでに処遇改善加算や特定加算という改善がされているのだから、その価値にふさわしい介護福祉士であるのか、それよりさらに国費や介護給付費という財源を使って、待遇が改善させるべき価値がある社会活動をしている職種であるのかを示すのが先ではないだろうか。

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