食事を摂るという行為は、人間にとって最も大切な行為と言っても良い。

それは人間の命をつなぐために、必要な栄養を摂るという意味で重要となってくるが、だからと言って人は毎日、命をつなぐために栄養を摂らねばならないと考えながら、いやいや食事を摂っているわけではない。

食べることは人にとって一番の愉しみである。毎日3食おいしいく食事を摂ることは人にとって最大の喜びでもあるわけだ。健康のため、命をつなぐためだけの目的をもって、人は毎日食事を繰り返しているわけではないのである。

だからこそ介護サービスに携わる人には、「食事は栄養以前に、人の最大の愉しみである」という至極当たり前の感覚を忘れないようにしてほしい。栄養状態を良好にして健康を保つということは重要であるけれども、食の愉しみを忘れてしまえば、食事という行為自体が苦行になりかねないのである。

自力で食事を摂れない方に対する食事摂取の支援という行為は、おいしく食事を摂れて、食事の喜びを感じていただけることを第一に考えなければならない。そのことを介護に携わるすべての人に理解していただきたい。

食事を摂るという行為が、単に栄養のためだけならば、食卓に出されたものを機械的に口に入れて、一定時間内にそれをすべて摂取させるだけで良いだろう。しかしそれでは食事の愉しみも喜びもなくなってしまう。

栄養のために食事を摂取させるだけなら、おかゆに刻んだ副食をごちゃまぜにして、機械的にそれを飲み込ませるだけで良いのかもしれない。しかしそのような行為は、人の最大の愉しみである、「食事を味わう」という行為を奪うことになってしまうし、食事を餌に貶める行為ともいえる。

いかに食事をおいしく食べていただけるかが、食事摂取介助を行う際にも重要な視点となるのだ。食べてもらおうとしている物に対して食欲がわく、「見た目」も大切である。ましてやお茶碗の中身がなんだかわからないような、主食と副食のごちゃまぜなどあってはならないし、口にするために介助者から差し出されたスプーンの上に乗せられたものが、自分の口に入れてほしくないと思えるどろどろのなんだかわからないものであってはならないのだ。

食事として毎日食べるものの見た目、臭い、環境にも注意を払う必要があるのだ。そのうえで食べやすさとは何ぞやという視点が加えられなければならない。

特に食事の姿勢には注意が必要だ。食事は単に口に入れるだけでは適切に呑み込めない。食物をごく自然に飲み下すためには、前傾姿勢となることができる食事姿勢が不可欠なのだ。車椅子という座位に適さない移動ツールに乗せたまま、フットレストから足を下ろさずに、膝より前に足の位置を置き、前傾姿勢の取りずらい座位で食事を摂取することの危険性に気が付いてほしい。

あまり知られていないことだが、介護施設で食事介助中に亡くなった人がいない年は、この10年間で1年もないのである。つまり毎年食事介助中に窒息死している人がどこかにいるということだ。

勿論食事中に窒息する人とは、食事摂取介助を受けている人より、自力摂取している人の方が多い。しかも窒息の原因となる食材として一番に挙げられるのは米飯であり、常食の人がご飯をのどに詰まらせて死に至っている例が多いのだ。それは食事姿勢が起因している問題ともいえるわけである。

さらに食事介助が必要な人が窒息死する原因は、不適切な食事介助方法であることの理解も必要だ。介助を受ける人が上を向いて食物を口に受け、そのままの姿勢で飲み下そうとすれば誤嚥が起こるのは当たり前である。そうしないために大事なことは、食事介助を行う人は座って利用者と目線を合わせて介助しなければならないということなのだ。立ったまま食事介助を行い、ましてやその介助が複数の利用者に同時に行われるような、危険で食の愉しみを奪う食事介助であってはならないわけである。

介護職員向けに僕が行う介護実務講演では、必ず正しい食事介助方法について具体的に説明している。このブログの読書の皆さんは、食事介助の正しい方法や窒息に至る原因について、職員に正しく教育しているだろうか?そもそも、「刻み食」は嚥下食とは言えないという理解を職員に促しているだろうか?

食事をおいしく食べていただく前提は、安全で適切な食事摂取介助の方法論がきちんと浸透していることである。これらのことも基本知識・基本技術としてきちんと伝えていく必要がある。

そういう介護技術を含めて、介護に携わる専門職としての使命と責任、介護という職業の誇りについて伝えたいと思う方は、ぜひ一度連絡していただきたい。全国どこでも駆けつけていくので、お気軽に相談いただきたい。

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