今後介護サービスの利用者の中心層は、「団塊の世代」に移行していく。それらの世代のいくつかの特徴については、以前にもこのブログ記事の中で書いている。
例えばその世代の人々は日本経済を支えてきた企業戦士やその伴侶であり、それらの人々を相手に商売してきた世代である。そのために顧客意識に欠けるマナーのない対応に厳しい目を向ける人が多いという特徴がある。
同時に団塊の世代は大きな塊であるからこそ、あらゆる場面でそのニーズに最大限の配慮をされてきた世代ともいえる。企業の側からすれば、団塊の世代に売れる商品を開発すれば、ほかの世代に売れなくとも儲けることができたため、顧客として手厚く遇されてきた世代なのだ。だからこそ介護サービスを利用する際にも、自分が優遇されることが当たり前だと考える人たちが多い。よってホスピタリティ意識のない従業員しかいない介護サービスは選ばれなくなる可能性が高い。
ここまでは今までも書いてきたことである。しかし団塊の世代にはもう一つの特徴がある。そのことを意識しないと介護サービスの場では、それらの世代の方々の価値観と対立して様々なトラブルが生まれるだろう。
そう考えて今日は今まであえて指摘しなかったその特徴も明らかにしておきたい。
それは団塊の世代の人々は全共闘世代であり、学生運動の中心にいた人々でもあったということである。
その時代はあらゆる価値観が変化していった時代であり、当時まだ若者であった団塊世代の人々は、自己主張をして大人たちと対立した。つまり団塊世代の人々とは、自分の感情を大切にし、建前より本音を大切にしてきた世代でもあるのだ。しかしそれは当時の大人たちにはエゴむき出しの醜い姿として見られてきた。
(※僕らの世代から見ても、それは決して美しい姿とは映らず、醜さを感じてしまう。)
当時の学生運動の目的を一言で表現するとすれば、それは古い価値観の破壊である。古い価値観を打破すること自体は悪いことではない。問題はあらゆるものを破壊することだけに夢中になることでだった。その喧騒の中で酔っぱらったように社会秩序と対立することだけを生きがいとしていた人も多かった。
しかし彼らは破壊することにやがて疲れ果てていった。しかも彼らは破壊した社会の再建のビジョンはまったくもっていないか、持っていたとしてもそのビジョンは幼稚で稚拙なものでしかなく、現実の社会に通用するものではなかった。
そういう人たちによる学生運動のたどり着いた先が、あさま山荘事件の後に発覚した、「総括」という名の連合赤軍による大量リンチ殺人事件という鬼畜の行為でしかなかった。それは全共闘運動の敗北と幻滅をも意味して、戦いに敗れ疲れ果てた人々は旧来の社会システムに何の疑いもなく組み込まれていったわけである。そのようにして全共闘世代の人たちは、自分が破壊しようとしたシステムの歯車の一つとなり、そのことによって生活の安定を得たのである。
この時代、団塊の世代の人たちは古い体質から解放されることを旗印にしていたが、その中には自分たちを解放するあまり、抑制というものがすっぽり抜け落ちてしまった人がいる。そういう人たちは私生活においても、抑制や我慢ということが足りないのではないかという思える場面がしばしばみられる。
そんなことが起因しているかどうかはわからないが、不倫ブームや離婚ブームの担い手は団塊の世代だとも言われている。
現に日本の離婚は1983年にピークを迎えている。団塊の世代という大きな塊が離婚しているからである。「バツイチ」という言葉は、団塊の世代に冠つけられたことにより社会に浸透した言葉でもある。
このことは今後、介護サービス利用の主役となる人々に、妻や夫と言った伴侶のないケースが増えることも意味しており、特に独身で元妻や子供たちと音信不通となっている男性高齢者の支援に大きな影響が出てくるかもしれない。
どちらにしても我々の理解のできないアイデンティティーの中で暮らしていた人が持つに至る価値観と、介護支援者は真正面から向かい合うことが増えてくるだろう。そうした価値観を持つ人のニーズや生活課題は、現在我々が使っているアセスメントツールでは引き出せないし、我々の価値観とぶつかって悩みを増やす原因になるかもしれない。そこに向かい合う覚悟が介護支援者には求められてくるだろう。
勿論、同じ世代でもいろいろな人々がいるし、世代の特徴と個人の特徴は異なるものなのだから、すべてを一括りに語ることは危険であるし、間違った見方につながりかねない。しかし同じ世代が集まると社会的に一つの特徴を持つことも確かなことであると言える。対人援助はこの部分にも考え方や視点を及ばせなければならない。
例えば介護事業経営者は、そうした世代の人々は自己主張が強く、独特の価値観を持つのだと考え、その人達に選ばれていくにはどうしたらよいのかということも考えねばならない。
だからこそ今後の介護事業経営の戦略では、介護の質は勿論のこと、サービスマナーをはじめとしたお客様を迎える側の職員の資質というものがより重要となってくるし、経営者だけではなく従業員にも多様な価値観に向かい合う柔軟な思考回路も必要になるだろう。そういう従業員教育ができているだろうかと振り返らねばならない。
要は介護サービスの利用者も世代交代が行われていることを、介護事業者自身が理解せねばならないということだ。世代が変われば売れる商品も異なるのだから、介護サービスの品質も、顧客の新しいニーズに応えて変わっていかねばならないということだ。
そういう意味でも、今後の介護事業経営は一筋縄ではいかないし、そもそもそんな頼りない縄に頼る古臭い経営スタイルでは、厳しい時代を乗り切れないということである。
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