看取り介護とは、「医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者」に対するケアである。

その判断は医師にしかできないが、この際に診断すべき人の、「年齢」によってその判断基準が変わってしまうことがあってはならない。

例えば「がん」の場合の終末期とは「治療効果が期待できなく余命がおおよそ6ヵ月にある時期」とある程度定義付けが可能でありそれが、「一般的に認められている医学的知見」とされている。

ではがん以外の場合の終末期はどのように判定されるのかと言えば、脳梗塞や誤嚥性肺炎など、特定の病気を繰り返している高齢者などの場合でも治療を試みてみないことには終末期とは判断できるはずがない。

その治療の試みを行って始めて医師の判断として、「回復の見込みなし=終末期」とされるのであり、判定すべき対象者が100歳を超えているから治療の必要はないと決めつけたり、治療の効果はないだろうという見込みだけで、「回復の見込みがない終末期である」という判定があってはならないのである。

その際に食事や水分の経口摂取が困難となる人についてどのように判断すべきかという問題が生ずる。

このことについて京都保健会盛林診療所所長・三宅貴夫氏が示している判断基準は、「回復が期待できない嚥下困難か、嚥下不可能な状態の時期であっても、胃瘻による経管栄養を行えば延命は可能であるが、自らが自分の生命を維持できなくなった状態にあるという意味で終末期とみてよい。」というものだ。

その判断基準を採用して経管栄養を行わずに自然死する人に対しても、看取り介護は行われている。

このことに関連して平成27年以降の介護報酬改定では、居宅サービス・施設サービス全般に、口腔衛生の充実・栄養改善の加算が手厚く評価されており、かつ経口維持加算が手厚く、より算定しやすく改定されてきている。それは食事の経口摂取の維持と、栄養状態の維持・改善がトータルの視点で評価されていることを意味しており、今後もその評価は継続することも意味している。さらに言えば経口摂取を続けることができる生活の質を問い直しており、安易に経管栄養にしないことで護られる生活の質を大切にする視点を介護事業者全体に促していると言える。

その延長線上には、これだけ食物や水分の経口摂取の維持に頑張った先に、経口摂取できなくなった場合の選択について問い直しているという意味もあり、経口摂取ができなくなった人に経管栄養を機械的に行うことなく、食べられなくなった時点で自然死を選択して、看取り介護に移行する選択もあることを示しているともいえるのである。

この方向性は診療報酬改定でも同様であり、例えば胃瘻造設術の報酬単価が大幅に下げられていることも、その方向性を示すものと言える。

ところでこのことに関連して、アルツハイマー型認知症の晩期の摂食障害をどう考えたらよいのかという疑問を持ったことがある人はいないだろうか。

アルツハイマー型認知症の人は時間経過とともに脳細胞が減って、口や喉の筋肉の動きをコントロールできなくなるためむせやすくなる。そのため食事形態を工夫することでしばらくの間はむせないで食べることができるが、脳細胞の減少は続くために再びむせるようになる。そしてだんだんと口を開けなくなったり、咀嚼せずいつまでも口の中に食べ物をためたりするようになる。この状態は体が食べ物を必要としなくなっている状態といえるもので、終末期の選択肢のひとつと言っても良いと思う。

ただここで問題が生ずる。アルツハイマー型認知症の人は、必ずしも高齢者とは限らない。若年性認知症の人で、40代の方が同じ状態になった時に、そのような若い人まで終末期であると判定しても良いのかと悩まれるケースがあることだ。

しかしあくまでも原則は、「年齢」によってその判断基準が変わってしまうことがあってはならないということだと思う。

まだ年齢が若いから終末期ではないという判定があり得るとしたら、その逆も真となり得る。つまりそれはある一定の年齢を過ぎたのであれば、病状が重篤であるという状態だけで、治療の試みもないままに終末期判定がされる恐れが生ずることになってしまうのである。

そもそも若いからという理由だけで、終末期判定が見送られる人がいるとしたら、その人は適切な看取り介護を受ける機会を奪われるかもしれない。人生の最期に周囲の愛する人々とのエピソードづくりの機会を失うかもしれない。人生の最終ステージを自分らしく生きるということができなくなるかもしれない。それは良いことなんだろうか?

だからこそ終末期とは、「治療効果がなく積極的な医療がないと生命の維持が不可能であり、またその医療を必要としなくなる状態には回復する見込みがない状態の時期」であるという判定は、年齢に左右されることなく行われる必要があると考えている。

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