(昨日の記事から続く)
結論から先に書くが、特定加算の配分をcグループ(その他の職種)まで広げるメリットはほとんどない。
職場内格差を気にして、配分を全職種に広げたい気持ちはわからぬでもないが、cグループに配分したとしても、その平均額はaグループの1/4(25%)未満でしかないわけだから、どちらにしろ格差感は解消できない。そうであるならcグループまでに配分することで、a・b両グループに配分する費用が減って、介護職員の不満が高まることの方を事業リスクと捉えたほうが良い。
何しろ介護事業者で嘆かれている人材不足の根本は、「介護職員不足」なのである。その本質を忘れて事業所内の「和」を中心において考えてしまえば、根本対策の手当てが不十分になり、誰もが不満という状態がずっと継続することになりかねない。特にそれをきっかけにして、配分率の下がった介護職員は、cグループに配分しない介護事業者に流出する可能性を視野に入れるべきだ。
そもそも配分をcグループに広げて、法人単位で加算を支給する場合であっても、特定加算の算定事業に関わっている職員でなければその配分はできず、法人内に併設している訪問看護事業所や居宅介護支援事業所に専従する職員には加算配分はできないのである。そう考えると前日の記事で指摘したように、その他の職員は加算を原資とはせずに、その他の収益の中で加算による改善を行なった職員に渡さなくてよくなった原資をまとめて、その他の職種の昇給原資にして、別に給与改善を考えたほうが良いという結論になる。
そのうえで改めて加算配分をそうしたらよいかと考えた場合、aグループ(経験・技能のある介護職員)に限定配分するよりも、bグループ(その他の介護職員)にまで範囲を広げて配分するという方法をお勧めしたい。
そうしないと介護福祉士養成校の卒業生や、若い経験の浅い介護福祉士は、その事業者に就職しなくなるからだ。そこに就職すれば10年後にまとまった額の昇給が可能であると言っても、そのスパンはあまりに長く、現実的問題として受け入れられる人は少ない。若い女性ならそれまでに結婚退職してしまって、その恩恵を受けられないと考える人も多い。
そもそも10年後に特定加算が存在するという保障はない。今現在少しでも高い給与を得られる事業者に就職したいと思うのは、人情として理解できる。
さらに今現在働いている経験年数の浅い介護職員の立場を考えると、aグループになるまでに数年の経験をさらに経なければならないのであれば、経験が浅い介護職員にも加算配分する事業者に転職して、より高い給料をもらいながらそこで経験を積んだ方が良いと考える人も当然出てくる。aグループに限定配分する事業者からは、このように経験の浅い介護職員の流出可能性が高まるのである。
一方で、bグループまで配分範囲を広げた場合、今現在経験と技能のある介護職員に該当する人たちは、その分配分額が減らされて不満であろうという意見も当然出るだろう。しかしそうであっても即、経験と技能のある介護職員が退職・流出につながる可能性は極めて低い。
なぜなら周囲を見渡すと、この加算配分を法人単位で行う事業者が多いが、そうであっても事業種別単位での配分であっても、「経験と技能ある介護職員」の経験年数(就業年数)を他の法人にまで広げて計算しているところは非常に少なく、大多数は自法人内の経験年数で見ているからだ。
ということは現在の法人内ではaグループとして、一番高い加算配分がされる対象となっていたとしても、その法人を退職して他法人に就職した場合、同じくaグループとしてくれる就職先は極めて限定される状態と言えるのだ。むしろ転職した場合、今までの自分の経験年数がリセットされて、給与が下がるケースが多くなっているのだ。
ということはこの加算によって、実は「経験と技能のある介護職員」は固定化が促進される可能性を高めていると言えるのである。だからこそ流動化しやすいbグループの介護職員までは配分を広げる必要があると結論付けられるわけである。
この結論が今のところ僕が最も職員が流動化せず、必要な人材が張り付く方法だと考えるのである。
どちらにしても、この加算を算定しようとしない事業者には、人材は回っていかなくなり、ごく近い将来、介護事業経営から撤退せざるを得なくなるだろう。
様子見の事業者は、一日も早く加算配分して職員が張り付く流れに乗らないと、同じように波に乗り遅れて、経営危機に陥るだろう。
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