老健の今後の役割を考える上では、老健の創設に至る経緯や、根拠法が老人保健法から介護保険法に変更されたことにより役割混乱が生じた歴史を振り返って考えなければ理解できない点がある。

そのことについては、「老健の今後は、その歴史から考えたほうがわかりやすい」という記事の中で解説している。

そこでも指摘しているが、老健施設の報酬改定を振り返ると、繰り返し在宅復帰機能の問い直しが行われてきた歴史が見て取れる。リンクを貼った記事に書いた、「中村秀一ショック」もその一つであるが、その後も役割混乱はところどころに見られてきた。

2012年3月までに介護療養型医療施設が廃止されることになり(実際には廃止は2018年3月まで延長された)、その転換先として2008年5月に、「療養型老健(新型老健)」が誕生したことで、再び老健の役割混乱が生じた。そして中間施設である老健にも、「ターミナルケア加算」が新設されたことによって、在宅復帰施設としての老健の性格がさらにわかりづらくなった。

そのため2012年4月の報酬改定では、在宅復帰支援型の介護老人保健施設を強化する観点から、在宅復帰の状況及びベッドの回転率を指標とした報酬体系の見直し等を行い、その報酬単価を高く設定した。

しかし2012年4月から2015年3月までの間の在宅強化型老健の収益は、一般型老健の収益を下回るという逆転現象がみられた。

なぜ介護報酬の高い強化型老健が、報酬の低い一般型老健の収益を下回ったかと言うと、その理由はベッド回転率と在宅復帰率を上げようとするあまり、ベッド稼働率が減るのに加えて、在宅復帰のための支援をする人材(セラピスト等)の人件費が高くなるという現象がみられたからであることが分かった。

そのため 2015年4月〜の報酬改定では、在宅強化型老健の更なる評価を行い、報酬単価をさらに引き上げた。

それ以降、在宅強化型老健の収益率は改善し、一般型老健を下回るということはなくなったのであるが、そこで起きたこととは、一般型老健から在宅強化型への転換を図る老健が増え、その過程で在宅復帰のためのリハビリテーションの効果を上げることなく、入所契約時にあらかじめ入所期間を、「3月」などと区切り、その期間が近づくと利用者に対して強制的に退所を迫る老健が増えたのである。

つまりリハビリ効果による身体状況の改善という結果に関係なく、一定期間で老健を強制退所させて、在宅復帰率とベッド回転率を上げようとする老健が増えてしまったのである。

これでは老健が本当の意味で在宅復帰機能を果たしているとはいえず、その改善をもくろんで2018年4月〜の報酬改定は、老健の報酬体系の抜本見直しが行われたわけである。

具体的には報酬改定に先立つ2017年に、介護保険法第8条第28項が、「介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、 施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。」と改正され、老健の機能は居宅における生活を営むことを目的にリハビリテーション等を提供する施設であることを明確にした。

そのうえで2018年4月〜の報酬改定では、療養型と療養強化型の評価を療養型に一元化したうえで、それ以外の老健については、在宅復帰・在宅療養支援等指標のポイントによって、在宅強化型・基本型・その他と区分した。

その真の意味とは、療養型老健は介護医療院の創設で歴史的使命を終え、いずれ介護医療院兇謀彰垢図られることを意味すると同時に、在宅復帰・在宅療養支援等指標が20未満の「その他」に区分される老健については、重要な15の加算を算定できなくなることにして、実質老健施設からの撤退を図り、一定の在宅復帰機能を持つ老健だけが生き残りができるようにしているのである。

さらに宅復帰率が50%に達していなくとも在宅強化型が取れることにした反面、介護保健施設サービス費()の介護保健施設サービス費()又は()を算定すべき介護保健施設サービスの施設基準には、「入所者に対し、少なくとも週三回程度のリハビリテーションを実施していること」という規定を盛り込んだ。

その解釈はQ&Aで、「入所者に対し、少なくとも週三回程度のリハビリテーションとは、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が個別リハビリテーション 20 分程度を週3回以上行うこと。」としている。

その意味は20分程度の個別リハビリを週3回実施できない老健は、在宅強化型の報酬算定ができなくなることを示している。

このように2018年4月以降の在宅強化型老健は、単に入所期間を区切って契約し、その期間内に強制退所させるような形を否定し、在宅復帰のために個別リハビリに取り組むとともに、入所前後や退所前後の訪問指導の強化や、退所後の居宅サービスでのフォローや、退所相談にのる相談援助機能の強化など、実際に在宅復帰できる身体機能・環境要因の充実を図る改定が行われたわけである。だからこそ在宅復帰率の要件は、ハードルを低くしたわけである。

そこでは一部の老健の相談援助職の実態が、「老健からの追い出し役」となっていることにも警鐘が鳴らされていることにも気が付かなければならない。

そして老健とは一度きりの利用施設ではなく、同じ利用者が何度も利用する施設であることの理解も必要だ。

老健に求められる役割とは、在宅で廃用が進んだ方々に何度か繰り返してリハビリテーション効果による機能回復を図り、それが難しくなった最終段階では、「ターミナルケア」を実施することも含めて、その機能を発揮する施設であることも理解しなければならない。(参照:老健施設におけるターミナルケアの在り方

老健の相談援助職は、そのために老健の中だけで業務を行うのではなく、もっと地域に足を運んで、地域の社会資源と密接に関係性を結んで活動しなければならない。

また老健のセラピストは、老健の訓練室だけで自立できることに何の価値もないことに気が付いて、暮らしの場に活用できる機能回復に着目して、生活機能を高まるためのリハビリテーションの在り方の工夫が求められていることを意識すべきである。

どちらにしても期間を区切った入所契約を続けているという実態がある老健施設には、そのことに対し、いずれ鉄槌が振り下ろされる可能性が高まっていることを覚悟してもらわねばならないだろう。

老健の今後の事業展開のための戦略は、そうした求められる役割を理解したうえで練られる必要があるのだ。

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