介護福祉士養成校で非常勤講師として、一部の授業を担当している。

そうであれば担当している科目だけ教えるだけで良いわけであり、その授業に関する知識だけを学生に与えればよいという考え方もあるかもしれない。

しかし介護福祉士という対人援助の専門家を養成するための一授業ということで考えれば、その科目の中で教えなければならない知識や技術だけではなく、対人援助のスキルというマクロな視点も必要になると思う。しかも僕は社会福祉法人の総合施設長としての経験の中で培った、人を育てる視点も持っているのだから、学生に対しても現場の視点から伝えられることがある。

そのような考えに基づいて、人生の先輩である高齢者に対して、「タメ口」で接することがあってはならないということも教え、顧客に対するサービスマナー意識を叩き込み、就職した場所で顧客である利用者に接するにふさわしい適切な態度を身につけさせて卒業までこぎつけるわけである。

ところが適切なサービスマナーを身に着けて卒業していったはずの学生が、当初は利用者に対して丁寧な言葉遣いで、丁寧に対応していたのも関わらず、就職して数カ月後には利用者に対してタメ口になっている姿が時折みられる。

しかしそれは学生を指導した教師の責任でもなければ、学生自身の問題ともいえない。

新人として就職した職場で、新卒者が一生懸命丁寧な対応に努めている同じ場所で、模範となるべき先輩職員にマナー意識が全くない状態で、新人だけがマナーを意識した対応をし続けるのは非常に難しいということだ。

サービスマナー意識のない職場の職員の中には、正しい言葉遣いで顧客である利用者に接する新人に対し、「何気取ってるの」と冷やかしすとんでもない職員もいたりする。

これは陰湿ないじめそのものでしかないが、そうしたいじめからわが身を護ろうとする若い職員は、冷やかしながら若者の心を削る先輩職員に迎合し、その職員のようなスキルの低い状態にわが身を貶めないと、その職場に居続けることができなくなる。そうして志を失い、自ら醜い姿でいやいや働き続けるかわいそうな卒業生も少なくない。

そうした場所で卒業生は、言葉遣いを直せないスキルの低い先輩職員から、「タメ口はダメだなんて言うけれど、関係性があればタメ口は失礼な言葉ではなく、利用者に緊張感を与えずに、親しまれるための言葉遣いで、堅苦しくならないようにために必要な口調だよ。」などと洗脳される。しかしそれは嘘だ。

そんな連中がタメ口で利用者に接している理由とは、そんな積極的な理由ではない。スキルの低い連中が、自分たちの仕事が「施し」であるという意識から抜け出せず、利用者を上から目線で見ている結果でしかないのである。そんな言い訳は、対人援助の専門家としてのコミュニケーション技術という意識もない連中が作り出した屁理屈でしかなく、素人レベルで仕事が完結されている状態としか言えない。

そもそも関係性というが、職員が思うほど良好な関係性を常に利用者と築いているとは限らず、その口調に不快感を持つ利用者も多い。そうならないためのセーフティネットがサービスマナー意識を持つ意味でもある。

志の高い若者の心を殺す職場では、ストレスを抱えて数カ月で辞めてしまう卒業生も毎年出てくる。

社福の総合施設長を務めていた当時は、毎年そのようにして辞めた卒業生や、辞めようとしている卒業生の相談にのり、その幾人かは自分の法人に雇い入れたりしていたが、僕がいた法人の場合は、職員の定着率が高く、毎年職員募集をしている状態ではなかったので、他の信頼できる事業者に紹介したケースも多々ある。

しかしそうした若者が毎年何人もいるという意味は、将来人材〜人財となる素質を持つ若者が、先輩職員のタメ口にストレスを感じて、職場を辞めているという意味である。そうした人たちはいったいどこに行っているのだろう。そのまま介護の職業から離れてしまっているとしたら、それはとても勿体ないことで、深刻な損失である。

しかし介護の仕事を続けたいからこそ、マナー意識のない職場でストレスを感じて、そこをやめてしまう人もいるのだから、丁寧な対応ができる職場で働きたいという動機づけを持っている人は、考えられている以上に多いという現状があるということだ。その人たちは、今きっとどこかで、サービスマナーに満ちた職場を探しているはずだ。

だからこそ人材不足での中で、良い人材を集めて高本質なサービスを売りにして、顧客を確保するためには、今いる職員の意識を高める教育を徹底的に行い、サービスマナーを身につけさせて、そこで働きたいという人材が寄り集まる職場を創ることが求められているのである。

丁寧な言葉と態度で利用者に接する新人をつぶす職員を辞めさせて、新人の手本になる職員を育てることが、中長期的に見れば人材を確保する職場に結び付き、顧客を確保し事業経営が安定する職場につながっていくのである。

しかし人がいないから、募集に応募してきた人をやみくもに採用し、教育もうまく浸透せず、マナーのない職員による質の低いサービスの職場には、ますます人は寄り付かなくなり、やがては滅びていかねばならなくなるのである。

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