今年10月の介護報酬改定は、消費税増税に対応して行われるものだが、これはあくまで臨時の報酬改定であり、定期的な介護報酬改定は2021年4月からの改定になる。

しかし今、社保審・介護保険部会で議論されているのは、2020年に予定されている「介護保険制度改正」についてである。

関係者の皆様には、制度改正と報酬改定をきちんと分けて考えられるようにしていただきたいが、そもそも法令上、制度改正や報酬改定はどのように定められているだろうか。

制度改正については介護保険法附則第2条で、「〜この法律の施行後五年を目途としてその全般に関して検討が加えられ、その結果に基づき、必要な見直し等の措置が講ぜられるべきものとする。」という文言があり、これを根拠として制度の見直しが行われていることがわかる。

そしてその内容をよく読むと必ず5年ごとに見直しが行われるという文言ではなく、制度見直しは、「必要に応じて」行うことができるということがわかる。つまり制度改正は国が必要と考える時期にいつでもできるわけである。

一方介護報酬の改定については、明確な法的根拠はどこにも存在していない。このことについて国に確認すると、介護保険制度の創設につながった「医療保険福祉審議会の議論」の中で「関係者の合意」により「介護報酬の見直しを3年ごとに行うこと」とされた経緯があり、それを踏まえて3年ごとに介護報酬改定が行われているということである。

なぜ当時の関係者が3年で見直すことに合意したかについては、介護保険法・附則において介護保険事業計画・介護保険事業支援計画が「3年に1度」の見直し義務があるために、それに合わせて見直すことにしたという意味がある。

関係者の合意」といっても、その当事者が誰と誰を指すのかさえ、すでに不明瞭になってはいるが、こうした経緯から今後も介護報酬は3年ごとに見直されていくわけである。

では制度改正と報酬改定の違いは何かについては、昨年の介護報酬改定と、その前に行われた制度改正の改正との関連をみれば理解できるかもしれない。

2018年4月からの介護・診療報酬ダブル改定に先駆けて行われた制度改正としては、2017年の地域包括ケアシステム強化法の成立が挙げられる。この法律によって介護医療院や共生型サービスの創設され、翌年4月からの介護報酬告示につながっていったわけである。

利用者の3割負担の導入も、この法律で規定され翌年8月からの導入になった。

またその法律にって老健施設は、「介護老人保健施設とは、要介護者であって、主としてその心身の機能の維持回復を図り、居宅における生活を営むことができるようにするための支援が必要である者に対し、 施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その 他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的とする施設。」というふうに新たに定義づけがされ、それによって翌年4月の介護報酬改定時には、在宅復帰・在宅療養支援等指標によって新類型に分けられるという形につながっていった。

このように前年の法改正が翌年の報酬改定に結び付いていくわけである。つまり法律で定められた内容は、公布日は7同じであっても、それぞれ施行日は異なっているので、いつ法律の効力が発効されるかという確認も必要である。

そして今審議されているのは、再来年の報酬改定につながる、来年度中の制度改正である。

そこでは「給付と負担のテーマ」として以下の3点から議論されている。
1.被保険者・受給者の範囲
2.居宅介護支援費の自己負担導入
3.軽度者の生活援助サービス


1については、いよいよ2号被保険者の年齢引き下げ議論が本化することになる。将来の20歳までの年齢引き下げに備えて、まずは30歳までの引き下げが模索されることになる。

また3割負担と2割負担の対象所得の見直し(引き下げ)が検討され、より多くの人が2割負担以上となるように検討される。

また補足給付の対象費用に現在所得に含まれいない土地・建物などの資産も所得勘案することが検討される。現在1千万以上の預金がある人は補足給付対象外となるが、資産価値が一定額以上ある人も補足給付の対象外とされる検討である。

この場合、現金がなく払えない場合は、銀行から借り入れができるようにする仕組みがリンクされることになる。資産価値の範囲で銀行が貸付を行い、利用者の死後、土地・建物を売却して借金を銀行に帰すという形で貸付金の焦げ付きリスクがない形で、借金で利用者負担分を支払う方式が検討されている。

このほかには老健と介護医療院の多床室の室料を自己負担化することも、ほぼ決定済みだ。(※特養の多床室の室料は、2015年報酬改定時にすでに自己負担化されている)

このように制度改正といっても、その主たるテーマは、国民の新たな負担と給付の制限である。

来月から消費税がアップし、その一部は特定加算として、介護事業者職員の給与改善に使われることになる。そして消費税アップ分は社会保障費に使われるという。

その一方で国民に新たに痛みを求めているわけである。それはまるで消費税アップ分社会保障費や介護職員等の処遇改善に回した分を回収するかのような詐欺的施策とも映らないことはない。

どちらにしてもこうした国民の痛みは、政治家が全く痛みを伴わない状況で行われることになる。これを異議も唱えず許してしまう日本国民は、なんと静かで、おとなしい国民なのだろうか。

他の国なら暴動さえ起こりかねないと思うのは僕だけだろうか。

しかし物言わぬことは、愚かという意味と同義語でもある。

小さな力でしかなくとも、正論を吐き続けることは必要なことであり、それぞれのステージで声を出し続ける必要があるのではないかと思っている。みんなでもっと頑張ろうではないか・・・。

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