特定加算という大きな給与改善原資の算定がいよいよ来月から始まる。
それを前に給与等の改善計画書を市町村に提出済みの事業者においては、この加算の算定と配分について、職員間でひそひそと話題になっているのではないだろうか。経営者や管理職員の方々は、そのひそひそ話を丁寧に拾っておかないと、後々大変なことになるかもしれないと心得ておいてほしい。
配分に対する不満は、実際に配分が反映された給与を受け取った後から急に大きくなるものだ。今くすぶっている不満が、10月以降に大きな炎とならないようにしたいものである。
給与の不満が直接の引き金になって、能力のある職員が他事業所に移ってしまうことだけは避けたいものだ。そのあたりは配分方法を考える際に十分考慮しているのだろうが、配分を個別の能力に関係なく、グループごとの一律ルールとしてしまっているところが多いので、有能な人が不満を抱えて煮詰まってしまうケースは少なからず出てくるだろう。
そういう人を狙って声が掛かっている場合もないとは言えないのである。特にリーダーとなる人材を求めている事業者は、経験年数を他事業所の経験まで勘案するルールにして、広く人材を募っているので注意が必要だ。
ところで特定加算を巡っては、小規模の事業者が不利であることは間違いないところだが、その中でも通所介護事業に厳しい加算体系となっている。通所介護事業経営者にとって加算率の低さが、最大の悩みの種となっているように思う。
以前にも紹介したが、100人定員の特養なら月額加算が945.000円程度にはなるので、単純計算すると月8万円の給与改善ができる介護福祉士が11人以上という数字になる。GHでも月額155.000円の加算額が期待できる。
それに引き換え通所介護で、かつ地域密着型である場合、どう頑張っても月額24.000円程度しか加算算定できないのである。これだけ見ても通所介護は、この加算による給与改善が他のサービス種別より低いことは明らかである。
そのため地域密着型通所介護は、一人以上に必ず月額改善8万以上の給与改善をするか、もしくは年収440万以上の職員が必ず一人以上いなければならないという算定要件の例外が適用されることになる。
しかし例外対象だからと言って喜んでいられない。そのルールに喜んでいる経営者がいたとしたらずいぶん能天気だ。なぜなら職員には算定ルールの適用除外なんて何も関係なく、ただただ自分の職場では今後にわたって、他のサービスに比べて給与が上がりづらいという意味でしかなく、将来に対する不安が増幅するだけだからである。
すると今後通所介護には、今後人材が集まりづらくなるのではないかという不安もでてくる。
現在は介護施設と比較して、通所介護のほうが人材確保が容易であると言ってよい。その要因と理由は、通所介護には夜勤がなく、労務負担が少ないと考えられているからである。しかし給与格差が現在よりも広がり、介護施設の職員と比べて、通所介護の介護職員がかなり給与が低くなる場合に、今までのように通所介護に勤めたいと思う介護職員がどれだけいるかは不透明だ。確実に通所介護で働きたいという動機付けは少なくなることだろう。
しかももっと問題となるのは、この加算の格差は、通所介護と通所リハビリの間にもあるということだ。
加算率から言えることは、一人分8万円アップを確保できる月額収入を考えた場合、通所介護であれば700万以上の収入が必要であるが、通所リハビリの場合は400万以上ということになる。そうであれば両サービスで月額収入が同じである場合、介護職員の給与は確実に通所リハビリの方が高くなるわけである。
しかも通所リハビリは単独事業所ではなく、老健と併設している場合が多く、法人単位で特定加算の配分を行うケースが多いので、通所サービスの職員としての括りで言えば、単独事業所より加算配分の恩恵をより多く受けることができる。
通所介護と通所リハビリは確かにサービス種別は違うが、日中の通所サービスであるという点では同じであり、両サービスにおけるに介護職員の仕事内容を考えた場合、その違いはほとんどないといえ、今後、通所介護よりは通所リハビリに勤めたいと考える人が増えるのではないかと思われる。
しかも通所介護は夜勤がないといっても、「お泊りデイサービス」という形で、保険外宿泊サービスを行っている事業者が多く、介護職員も定期的に宿直勤務が必要になる場合もある。しかし通所リハで保険外宿泊サービスを行っているところはほとんどない。この点も夜間働けない人にとっては魅力的な職場の映る要素である。働く動機づけを通所サービスというカテゴリーに絞って考えた場合、どう考えても通所リハビリの方が有利と思える要素が高まっている。
少なくとも介護福祉士養成校の進路指導担当教員は、通所介護の単独事業所への就職を勧めなくなることは確実である。
そういう意味で通所介護の単独事業というのは、今後の事業展開に向けて岐路に立たされていると言えると思う。
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