長崎県の老健協会からお声がけをいただき、10/11(金)13:40〜長崎ブリックホール 国際会議場にて、「住み慣れた場所で自分らしく過ごすためには〜その時、老人保健施設の役割とは〜」というテーマで、90分お話をさせていただく機会をいただいた。

この講演会は市民公開講座として開催されるもので、老健関係者が多いものの、一般の方の参加もあるとのことで、市民レベルで理解できる話をしてほしいと依頼を受けた。

そうであればどのような流れの中で老健施設が誕生し、どのような転換点があったのかを説明しながら、昨年の報酬改定時に新たに老健に求められたことを解説することが必要ではないかと考えた。

老健の誕生のきっかけとなった意見書やモデル事業、その後の法的位置づけなど一連の過程を解説しながら、老健とはどのような施設かということを紐解くことが、老健に求められる役割を理解するためには一番わかりやすい方法であると考え、現在講演内容を構想しているところである。

老健とはどんな施設なのかというレベルまで講演内容を引き下げては、参加者の多数を占める老健関係者には退屈な講演になるのではないかという心配の声が聴こえてきそうだが、果たしてそんなことになるだろうか。

例えば、老健施設が中間施設と呼ばれていることを知らない関係者はいないだろう。しかし中間施設とは、いったい何と何の中間施設なのかということや、いつからそうされているのかということを正確に答えられる人は、現在の老健関係者の中にどれだけいるのだろう。

「中間施設って、医療機関と居宅の中間だろう」って簡単に答えている人が多い。それは間違いではないが、老健が誕生する経緯を見たときに、老健という新しい施設を創ろうとした構想段階で、社会保障審議会が「中間施設を検討する必要がある。」という意見書を出した時点では、医療機関と居宅の中間施設という意味ではなかったのである。そのことを知っている人はどれだけいるだろう?

老健施設がはっきりと医療機関と居宅をつなぐ、「中間施設」としての位置づけが確定したのは、昭和62年2月から全国7カ所で実施された、「老人保健施設モデル施設の指定事業」以降のことである。

このモデル事業は予測以上に良い結果が出た。というのも病院ではリハビリの時間内で筋肉・関節の訓練を行うが、老健モデル施設では身心のケアを十分に行い自立を促し、日常の行動全般に訓練・リハビリを組み入れ、生活に生きがいを持たせたことにより大きな効果が見て取れた。そのことによって社会的入院と言われ、長期入院を続ける高齢者を家庭に復帰させるための新しい施設としての可能性が見いだされたのである。この結果によって老健施設とは、医療機関と居宅をつなぐ中間施設という概念が確立したのだ。

そうであればモデル事業以前の意見書の段階での中間施設とは何だったのだろう。その答えは、当日の講演会場、「長崎ブリックホール 国際会議場」で明らかにすることになるだろう。

それと老健の今日までの短い歴史を振り返ると、「役割混乱とその修正」というキーワードが出てくる。過去2度にわたる大きな役割混乱の時期を乗り越え、昨年の報酬改定では、その混乱の収束のための大改革が行われたという意味があるように思え、そのことも当日の講演で明らかにしたい。

ちなみにモデル事業以降の流れは以下のようになる。

S62.11 老人保健審議会において、「老人保健施設の施設及び人員並びに設備及び運営に関する基準について」を答申
S62.12 国会報告
S63. 1 「老人保健施設の施設及び人員並びに設備及び運営に関する基準について」公布
S63. 4 老人保健施設の本格実施
H 9.12 介護保険法成立(根拠規定が老人保健法から介護保険法に移行)
H12. 4 介護保険法施行

勿論、介護保険以降の老健の改革・改定についても触れることになる。そこには「中村秀一ショック」というキーワードも出てくることになる。

同時に僕からの提言として、「老健の役割や機能を都合の良いように使い分けてはならない」ということを指摘してきたい。

時にはここは医療機関ではなく介護施設だと言いながら、時には老健は生活の場ではなく在宅復帰を目指した滞在施設だという使い分けを都合よく行いながら、施設目線での介護サービスの提供が目立つ老健が多い。しかし在宅復帰を目指す施設だとしても、そこにも暮らしはある。だからこそ暮らしの質を無視した治療的関わりのみの視点は介護施設とは言えないと思う。そもそもリハビリテーションの本来の意味は、全人的復権=人としての権利を取り戻すものであるということを考えると、もっと利用者視点に沿ったサービスの在り方が考えられてよいと思う。

そうしたことも含めて、老健のターミナルケアについても、中間施設として矛盾しないことなどを語る内容になっている。

これらの内容は、僕が老健施設のわずか一年という短い勤務経験があるから語ることができる内容ではなく、老人保健法の時代から、老健の誕生と推移を見ながら、裏側の政治的な動きや、官僚の思惑をも知る立場にあったからこそ語ることができる内容と言え、他では聞くことができないと思う。

そういう意味で他では聞くことができないとても面白い講演になると思うので、聞き逃しがないようにしてほしい。

市民公開講座ということでどなたでも参加できると思うので、お近くの皆さんは是非会場にお越しいただきたい。期待は裏切りません。

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