ケアマネジメントで一番重要な視点は、高齢者の課題やニーズを、単に身体的な機能障害(インペアメント)という面のみで捉えるのではないという点である。

従来の医学モデルでは、脳卒中による片麻痺を身体的欠損としてのインペアメントとして捉え、それによる歩行障害を能力障害(ディスアビリティイ)であるとして、それに対するニーズは何かという観点から、治療的方法(リハビリ等)をとる立場にあった。

しかしケアマネジメントの手法は生活モデルであり、高齢者のニーズを単なるインペアメントとADLに関わるニーズとして捉えるのではなく、利用者がもつ社会的不利(ハンデキャップ)という観点からもアプローチすることによって、生活障害としてその問題を捉えることに特徴がある。

つまり要介護者が、どのような家族環境や地域環境の中で生活し、障害が不利な状況になっていないのかという部分も生活課題の一つとして捉え、インペアメントやディスアビリティに改善がなくとも、家族や地域の環境を調整することで生活課題が改善できる可能性があるという視点を加えたものである。

つまり要介護高齢者の課題や障害は、あくまで生活課題であり、生活障害であるという視点が重要なのだ。だからこそケアマネジメントには生活の全体性や継続性、個別性に目を向ける視点が不可欠である。

このことを理解しているか、理解していないかでケアマネジメントの質は大きく左右されてしまう。ケアマネジメントの援助技術の展開の目的が生活の全体性や継続性、個別性に目を向ける生活支援であるとしたら、そこには身体機能レベルだけでは解決できない様々な問題に対する援助の方法があってしかるべきで、必ずしも軽介護者に身体介護以外の生活支援が必要ではないという考えにはならないからである。

特に加齢による廃用という自然摂理を起因とした生活課題の解決のためには、生活援助を適切に結びつけることが大事だ。足腰の衰え、視覚や聴覚、味覚の減退は、ADLより、IADLの障害になって現れてくることが多く、軽介護者に必要な家事支援を適切に結びつけることも、生活維持には重要な視点である。

ところがこの家事援助が過剰支援であるとして問題になっており、その原因をケアマネジメントの質に求める向きがある。しかしそれは違う。

そもそも不必要な過剰サービスのケアプランが本当に存在するとすれば、その根本原因はサービス提供主体とそれを計画するケアマネジャーをパックで運用することが「利益を挙げ、生産性が高まる」ことに繋がっていることに起因する問題で、介護保険制度そのものの設計上の問題に原因があるのだ。

ケアマネジャーが自社と併設する居宅サービス事業の利益を考える必要がないように、ケアマネジメントだけで飯が食えるようにするだけで、問題解決の方向に大きく動くはずなのだが、そのことで利権を手にした連中は、根本問題に手を加えず、問題解決を一定回数を超えた生活援助を組み込んだ居宅サービス計画の届け出ということで解決を図っている。届け出て検証されるという心理的負担を介護支援専門員に与え、生活援助を計画する回数を制限しようとしているわけである。

つまりこの意味は、ケアマネジメントを財源抑制の手段として使うというマネイジドケアに使われているという意味だ。それは本来のケアマネジメントが、サービスの利用者の立場からの生活を支援するために形成されてきたものであるという目的に反したものだ。

このことはもともとケアマネジメントの諸刃の剣として、負の側面があるというし指摘を受けていた点であり、非常に危惧される問題だ。それがケアマネジメントの標準化という方向性でさらに強化されつつある。(参照:ケアマネジメントの標準化を企む学者の黒い腹

しかし一定以上の回数の生活援助計画の届け出が必要とされたきっかけとなった、最多で月101回の生活援助の利用例がある、北海道標茶町の直営の居宅介護支援事業所の主任ケアマネジャーの居宅サービス計画は、幻視・幻聴、物忘れなどがある精神疾患を抱える高齢者が、体調を崩して精神状態が不安定になった状態の居宅での生活を支えるための必要な援助を積み上げた結果で、同町の後の検証作業の結果、糾弾すべきプランではなく、模範とすべきプランであると判明している。

このように本来のケアマネジメントは、給付抑制に利用されるものではなく、一人一人の要介護者の生活課題を解説するために、本当に必要な社会資源と利用者を、より適切な状態で結び付けるものである。

それなのに介護支援専門員の職能団体であるはずの日本介護支援専門員協会は、本当のケアマネジメントを護る提言を全く行わずに、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネに限定することに手を貸したり、消費増税分の使い道がすべて決まってしまったこの時期に、処遇改善加算をケアマネにも渡せと言う実現不可能な提言しかしていない。そんな団体に頼って会費を納め続けてよいのだろうか・・・。

地域で本当にまじめに、そして懸命に援助技術を展開している多くのケアマネジャーの皆さんは、こんなわかっていない国の議論に異議を唱えるべきだ。日本介護支援専門員協会が声を挙げないのだから、自分たちで声を挙げるしかない。

少なくともケアマネジメント実務に関わっている人であるならば、利用者や地域に対して、ケアマネジメントとは何ぞやという意味を、自らの実践で語れるケアマネであってほしいと思う。

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