(昨日の記事から続く)
社会保障費の自然増を毎年5000億円程度に抑えるために、給付抑制策がとられ続けられる中でも介護保険サービス受給者が増え、給付費用は2018年の10兆円から2028年には20兆円に膨らむ。
その費用を得て収益を挙げようと考える企業等が、今後も介護事業に参入することになる。さすれば顧客確保の競争は、現在より厳しくなるわけだ。
しかも給付費の自然増を抑えようとすれば、顧客単価は下げなければならず、少なくとも上がる見込みはなくなる。そうであればサービス事業者は、顧客数を増やさなければ、今と同程度の収益さえ上げられないということになる。よって事業規模の拡大と多角経営が、介護サービス事業者の最大の課題となることは間違いのないところだ。
つまり介護サービス事業者には、サービス提供主体が増えるという競争が激化する状況下で、今いように顧客を確保して、事業規模を大きくしていかねばならないという試練が待っている問う意味である。
だからこそ僕はこのブログ記事の中で、地域密着型通所介護1事業所の経営のみで介護事業経営を続けていくという戦略は成り立たないと主張してきた。(参照:地域密着型通所介護に永続的な経営モデルは存在しない)
地域密着型通所介護事業所は、顧客から選ばれる高品質サービスを提供できるようにして、地域住民から選ばれて顧客数を増やし、定員を増加して都道府県指定事業所に規模拡大を図っていかねばならない。
顧客に選ばれるためには、従業員がホスピタリティ精神を持って顧客対応ができるようにするために、最低限のサービスマナーを持って対応しなければならず、マナー教育は生き残りをかけた事業戦略の生命線となると言える。ここをおざなりにする事業所は消えてなくなることは明白だし、なくなっても良いと思う。
それと同時に、変化し続ける顧客ニーズに対応したサービスメニューの見直しも不可欠だ。顧客から選択されるためには、通いたくなる動機づけとしてのサービスメニュー開発が重要な要素となってくる。
通所介護を利用する人は要介護者であるが、同時にその人たちは立派な大人である。いつまでも小学生相手に行うようなチーチーパッパのサービスメニューであっては、顧客から逃げられて当然だ。
介護保険制度以後、通所介護事業所は格段に増えたが、その段階では通所介護というサービス自体が物珍しく、サービスメニューの工夫をしなくとも、半日そこで過ごして、昼ご飯も食べられ、お風呂にも入れるというだけで利用する人はいた。そこでは風船バレーやバケツリレーというサービスであっても、それをリハビリだと信じる顧客は寄ってきたのだ。
他人のへたくそなカラオケを聴くだけで時間が過ぎていく通所介護も、それなりに顧客確保できたが、現在は利用者のニーズが確実に変化しており、サービスメニューに工夫がなく、通って面白いと感じない通所介護からは顧客離れが起きている。そういう事業所は早晩廃業に向かわざるを得ない。
では実際に顧客の興味を引き、かつ通所介護の目的に合致するメニューとはどのようなサービスだろう。例えば僕が今関わっている通所介護事業所では、PCやタブレット・スマホを使ったサービスメニューが人気を博している。
今年70歳なる方は、ガラケーを普通に使える人が多いが、タブレットやスマホには腰が引ける人がも多い。そういう方々を対象に、心身活性化・認知症の予防効果を見込んでスマホとタブレットの使い方講座をサービスメニューにすると参加希望者が多い。スマホの基本操作が理解できた後は、様々なアプリをダウンロードし、そのアプリを使ったゲームなども行うことができる。
ゲームと言えば、麻雀・ルーレットなどのギャンブル的なゲームを取り入れた通所介護事業所が一時話題になったが、それらのゲームは疑似通貨などを獲得する目的と合わせて、射幸心をあおって盛り上がる傾向にあるため、神戸市の例ように、行政から一定の規制を課せられるなどのデメリットも伴う。それは社会的批判につながりかねない問題を含んでいると言え、リスク管理上は決して良いサービスメニューとは言えない。しかしスマホアプリのゲームは、射幸心をあおるものではないものがたくさんあるし、認知症予防の心身活性化メニューにつながるものも多いために、それらを大いに利用すればデメリットも生じない。
またPCを使える高齢者の方は多いが、ネット検索はできても、自分から情報発信している人は意外と少ない。そのためブログを作成指導する講座もサービスメニューに組み入れている。ここでは自分でブログを作ってもらった後、通所介護を利用するたびにサービスメニューとしてブログ記事の更新の手伝いをしている。
「〇〇爺さんの通所介護日記」などとタイトルも自分の好みでつけてもらったブログには、必ずアクセスカウンターを設置し、利用者同士でアクセス数を確認し合うと、競争心が芽生えて大いに盛り上がり、アクセス数を増やす工夫のアイディアがいろいろと出てくる。更新記事内容も面白いものに進化してくる。
もちろんそのためにPCをはじめとして、タブレットやスマホも、利用者が使う専用の機器として通所介護事業所に備え置いておく。これは必要な先行投資である。そういうお金の使い方ができない事業所も消えてなくなる予備軍である。
カラオケ・塗り絵・切り絵・クイズ・風船バレー・・・そんなサービスメニューしか選びようのない通所介護は、廃業に向かってまっしぐらである。
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