10月から、「介護職員等特定殊遇改善加算(以下、特定加算と略)」を算定しようとしている介護事業者は、今週中に特定処遇改善計画を所轄行政担当課に提出しなければならない。
そのため事務担当者は、今日あたりから最終確認と提出書類の作成の追い込みにかからねばならないだろう。その中には、自分が一銭もこの加算の恩恵を受けない事務員さんもいらっしゃるかもしれない。しかしそれでも文句ひとつ言わず黙々と申請準備をしているあなたの姿を見た施設長が、いつか加算以外であなたの給料を上げてくれると信じて頑張っていただきたい。
7月23日にこの加算に関連して、2019 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)が発出され、おおむね必要とされる疑義解釈が出揃った感がある。加算対象事業所はそのルールをしっかり確認して、算定漏れをせず、不適切請求とならないようにしなければならない。
加算算定ルールはさほど複雑ではないために、間違った算定は多くならないだろうが、配分ルールには注意が必要で、加算配分してはならない職員に配分した分は配分とみなされず、それによって支給要件(算定金額はすべて配分対象職の給与等改善原資として使い切る必要がある。)に達していないことが実地指導等で明らかになった場合は、達していない金額だけではなく、加算金額がすべて返還対象となるので、ここは慎重にも慎重を重ねて最終チェックが必要だ。
特定加算の配分については、経験技能のある介護職員の範囲や、配分対象職種をどこまで広げるかなどの判断について、「各事業所の裁量により柔軟に設定」するとされたために、支給に向けて何がベストの方法なのか悩んだ事業経営者が多いことと思う。しかしすべての職員に不満がない方法で配分支給することは不可能だ。
そこで求められることは新加算について、職員すべてに丁寧にわかりやすく説明して、できるだけ多くの職員からコンセンサスを得ることだ。その際にこの加算の配分が最終的にどのような形になろうとも、それは事業者や事業経営者の収益にはならず、あくまで職員の給与等の待遇改善の目的として全額が使われるということを理解してもらうことによってしか、不公平感や不満を最小化する方法はない。
・・・と書いたところではあるが、「事業者の利益にならず」という部分には疑問符をつける人がいるかもしれないと思ったりしている。
というのも、「賃金改善の見込み額」とは、a.(特定加算を取得し実施される賃金の改善の見込み額を加えた賃金の総額)〜b.(初めて特定加算を取得する月又は初めて特定加算を取得した月の属する年度の前年度の賃金の総額)を差し引いた額とされているからである。
aが、「特定加算を取得し賃金改善が実施された月の賃金額」であり、bが「初めて特定加算を取得する月又は初めて特定加算を取得した月の前の月の賃金額」であれば問題ないのであるが、そうではなく、加算算定前年度賃金総額と加算算定見込み額を加えた賃金総額の比較と言うルールであるのだから、実質この加算は、4月に昇給させた部分も含めて「改善額」とみることが可能になっている。さすれば加算を4月にさかのぼって支給したとみなしても良いような解釈になる。なぜなら4月に昇給させた部分も比較賃金上は、前年度賃金総額より改善した金額に計上できるからだ。
そのことに関連して、2019 年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.2)では次のような疑義解釈が示されている。
問 20 :本来は 10 月から特定加算を算定し、これによる賃金改善を行うことになるが、法人・ 事業所の賃金制度が年度単位であることに合わせるため、年度当初から特定加算を織り 込んで賃金改善を行いたいと考えた場合、4〜10 月分の賃金改善に特定加算を充てるこ とは可能か。(例:10 月から月2万円の賃金改善を行うのではなく、4月から月1万円の賃 金改善を行う場合)
回答:今般の特定加算については、年度途中から開始するものであり、給与体系等の見直しの 時期が、年に1回である事業所等において、既に年度当初に今回の特定加算の配分ルール を満たすような賃金改善を行っている場合も想定される。
・ こうした場合には、その年度当初から 10 月より前に行っていた賃金改善分について、介護職員等特定処遇改善加算を充てることも差し支えない。
・ なお、当該取扱いを行う場合にあっても介護職員の賃金低下につながらないようするとともに、事業所内でよく検討し、計画等を用いて職員に対し周知することが必要である。
↑ここでは「こうした場合に」という条件付きで、「10 月より前に行っていた賃金改善分について、介護職員等特定処遇改善加算を充てることも差し支えない」としているが、「こうした場合」に該当しないケースであっても、比較賃金自体が4月昇給分を含むのだから、実質多くの事業者が、その額を見込んで改善計画とするのではないか。
そうなると消費税が上がることが確定しておらず、特定加算が支給されるかどうかわからない時期に、事業者の収益の中から支給した定期昇給分の財源にも、特定加算はなり得るということになり、実質「加算金額は事業者利益につながる」ということにもなりかねないような気がする。
加算の恩恵を最大限受けたいと考える職員の皆さんにとって、この部分は大いなる矛盾と感じるだろう。どちらにしても事業経営者は、この配分ルールをどう考えたかも含め、職員に懇切丁寧に説明し、不公平感や不満の最小化に努めねばならない。
また加算要件・配分ルールに疑問が残っており、もう少し熟慮したいということであれば、計画書の提出を1月遅らせて、算定支給月を11月からとするということも有りである。
ただしこの場合は、職員からクレームが殺到するかもしれない。そのことも含めて事業経営者として、様々な判断が求められているのが、今この時期である。
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