このブログで何度も指摘しているが、スマートホンで動画撮影が簡単にできる時代になっていることで、介護現場で行われる不適切な行為が、隠し撮りされてSNSなどに投稿されることよって、世間の目にさらされる機会が劇的に増えている。

そのような形で密室で行われる虐待などの不適切行為が顕在化することが、虐待や不適切行為の抑止力になるのだろうか。

しかし人を護るべき介護サービスの場で、言葉や暴力によって傷つけられた人の痛みは、加害者の行為が明らかになり、加害者が世間から糾弾されたとしても決して消えることはない。加害者が罰せられたとしても、被害者が守られるということにはならないのだ。

だからこそ私たちは、介護サービスの場で隠し撮りされて世間から糾弾される行為自体を抹消せねばならない。そのためには人権意識をしっかりと持った人材を育成するシステム作りが急務である。人材はどこからか寄って来たり、自然発生することはないのだと自覚しなければならず、人材を見抜き・選び・育てるということがすべての事業者に求められるのだと覚悟すべきである。

本気でそのことを考えなければならない。

そうであるからこそ、人手が足りないからとりあえず募集に応募してきた人を採用し、教育は現場職員に丸投げするというような、経営責任を放棄したかのような状態をなくさねばならない。

今日から愛媛県3地域(松山市・今治市・伊方町)で行われる、愛媛県内地区老施協及び愛媛県老施協共催の「中堅リーダー研修会」では、そのことをリーダーの皆さんに伝えるとともに、リーダーの皆さんには、「自分の心の中のカメラで自分を撮影して、一日の終わりにその画像を自分で確かめて、恥ずかしくない仕事をしよう。」と指導できるリーダーになれるように伝えたいことがある。(参照:心の中に自らを写すカメラを持っていよう

しかし実際には人材を育てない介護事業者が数多く存在し、人を護るはずの介護サービスが、人の心を奪い、人の心に取り返しのつかない傷を負わせるにとどまらず、命さえ奪うという悲劇を生んでいる。

昨日も宮崎県宮崎市にある有料老人ホーム「フェニックスフォレスト」で、20代の男性介護職員が90代の女性入所者に対し馬乗りになり暴言を吐くなどの虐待行為を行っていたことが明らかになった。(事件発生は、2019年7月27日にさかのぼる。)

その虐待行為は、同僚が動画を撮影しツイッターに投稿したことから明らかになったものだ。

その動画では、入所者の女性が施設の床に横たわり、職員がその女性に馬乗りになった状態で、「この状態を作ったのはあなただよ」・「危ないことやったら、すぐこの体勢に戻るから」などと大声で叱責している様子が映っている。その職員は虐待の事実を認め、すでに解雇されている。

被害者の女性は歩行困難な認知症であったというが、その動画撮影の日から3日後に死亡している。施設側は被害女性の死亡と虐待との因果関係を否定しており、死因は老衰としているが、しかし被害者の死亡を巡っては、今後事件化する動きも考えられ、そうなると施設の管理責任も当然問われることになる。そうなったとき、この有料老人ホーム(特定施設)の母体は、介護事業経営を続けていくことができるだろうか・・・。

どちらにしても私たちは、人の命と暮らしを守るための介護サービスの場で、このような悲惨な事件が繰り返し起こっている事実を受け止め、なぜこのような事件が全国で繰り返し引き起こされているのかをもう一度深く考えなければならない。

その根底には利用者を顧客とみようとせず、介護を施しレベルで考え、「してやっている」という意識の職員が数多く存在しているという問題があり、顧客に対するサービスマナー教育がまったくされていないという問題もあるということを、介護事業経営者は自覚すべきである。

今回は同僚職員が撮影した動画が、ネット上で拡散したようだが、今後はいろいろな形でスマホやタブレットを利用した動画が撮影され、ユーチューブやSNSを通じて拡散されることが当たり前になる。そうした世の中では、今回のような不適切かつありえない行為が潜在化せず、必ず世に明らかになると考えなければならない。そのためにもこうした行為に及ぶ要素を完全に排除していかないと、介護事業経営は危機に瀕すると考えるべきである。

介護事業を安定して経営するためには、利用者を護るという当たり前の行為に徹する職員を育てなければならず、そのためには、「人間尊重」という価値前提を徹底させる必要がある。その基盤となるのがサービスマナー教育である。それは職業倫理として求められる以前に、事業戦略上、必要不可欠なものだという意識をもって、介護事業経営者は、事業システムの中にサービスマナー教育、人権意識の向上の取り組みを組み込んでいかねばならない。

そうしないと、本事件のような事件がいつ自分の身に降りかかってくるかわからず、たったひとりであっても、おかしな職員がそこに存在するならば、加害者責任が問われて、事業経営者や管理者が裁判の場で指弾を受けることになるかもしれないのである。

今回の宮崎の事件を対岸の火事と眺めているような悠長なことをしている暇はない。介護事業経営者の方々には、職員の教育は十分なのかを今一度、改めて見直していただきたい。

職員教育を怠り、利用者に対するサービスマナーの確立という意識が低い介護事業経営者や管理職に待っているのは、近い将来の贖罪の日々であり、多額な損害賠償金の支払いに汲汲とする明日なのかもしれない。

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