高齢者介護サービスの場は、まだ多くの戦中派世代の方々が数多く利用していることを昨日の記事で指摘した。

特に全国平均の利用者平均年齢が85歳に達している特養の利用層の中心は、戦争体験者の方々である。

しかし戦中派の方々は確実にその数を減らしており、居宅サービスの利用者層の中心は戦後派に移行している。現に通所介護は、利用者の平均年齢が70歳代の前半という事業所が多くなっており、そうすると戦後74年経っているのだから、戦後に生まれた人の方が数多く利用しているということになる。そしてここ数年のうちに通所介護の利用者の中心層は、「団塊の世代」になっていくのである。その人たちのニーズに応えられない通所介護は、廃業へまっしぐらだ。

例えば今年70歳になる女性が、軽い認知症の症状が出始めて、心身活性化と身体機能の維持のために通所介護を利用し始めたとする。そういう人たちはどういう時代を、どのように生きてきただろうか。

そのことをきちんと意識してサービス提供している事業所と、そうではない事業所では、サービスの方法に差が出てこようというものだ。実はそれが顧客確保できるかどうかの差になってきている。

通所介護計画を立案するためにアセスメントを行うことは当たり前であるが、現状のアセスメントとともに、利用者の生きてきた時代のアセスメントを行っているだろうか。おそらくそれを行っている通所介護事業所は多くない。

僕が経営・運営指導を行っている通所介護事業所は、必ずそのアセスメントを行っている。具体的には、その利用者の生きてきた時代を知るために、年表を書いて、その人の年齢に応じた世の動きとリンクして、様々なことを考えさせるようにしている。

今年70歳になる方は、昭和24年に生まれた方である。その時期はまだGHQの占領下で、3歳に達するまで占領政策は続いている。しかしゼロ歳から3歳までの記憶が残っているわけがなく、その時代背景はその人たちの、現在のライフスタイルに影響している可能性は低いだろう。

しかしその人たちがおぼろげながら記憶しているかもしれない6歳の頃に、電気洗濯機・自動式電気釜発売されているという時代背景は多少の影響があるかもしれない。それが一般家庭に普及するようになるまではまだ数年かかっただろうし、地域によってその時期に差があると思われ、70歳のデイ利用者の方の記憶に残る、「母親」とは、電気釜や電動洗濯機がない時代に、朝早くから起きて火を起こしてご飯を炊くところから始まり、手で洗濯をして大変な重労働を家の中で担う母親だったのかもしれない。

そんな記憶を手繰る会話は、デイサービスのサービス提供中に利用者が生き生きと話すことができる話題に通じるのではないだろうか。そしてその会話の元になるものが、利用者が物心ついた当時、まだ電気洗濯機や自動式電気釜が一般家庭に普及していなかったことを知っているという知識なのである。

さらにその人たちが19歳〜21歳にかけて、グループサウンズが大流行している。そうであれば彼女たちの、「懐メロ」とは演歌ではなく、テンプターズやタイガースなのかもしれない。そんな人たちに対し、サービス提供時間に小学校唱歌を唄わせたり、午前中の大部分を、演歌中心のカラオケで過ごさせるデイサービスに客が集まらなくなるのは当然である。

その世代の人たちが、デイサービスに風船バレーをしに来ると考えるのもどうかしている。

今年70歳になる人は、働き盛りの42歳でバブル経済の崩壊に遭遇している。そうであればバブル期にバリバリ仕事をして日本の経済を動かしていた人が今年70歳になっているという意味だ。そしてその人たちが47歳の時に、携帯電話普及率は2桁を超えているのである。携帯電話もタブレットも使うことができる世代が今年70歳になる人たちであるともいえるわけであり、風船バレーをするくらいなら、タブレットやスマートホンを使ったゲームで、頭と体を使って心身活性化につなげたほうが受けが良いに決まっている。

そういう人たちに、介護保険制度が始まった当時と同じサービスメニューしか提供しないデイサービスが、「面白くない」として見放されるのは極めて当たり前である。悪い言い方をすれば、「チーチーパッパ」のサービスが残存するデイサービスは、顧客から見捨てられるのである。

先日書いた、「地域密着型通所介護に永続的な経営モデルは存在しない」で指摘したように、これからの通所介護は、顧客を増やして都道府県指定事業に規模を大きくしていかないと経営が厳しくなるのだ。

通所介護を立ち上げれば自然に利用者が集まってきた時代は遠い過去なのだ。その中で、顧客である利用者に選ばれるサービスは、サービス内容を他事業所と差別化しながら、介護の知識と技術を基盤とする高品質サービスを作り上げて、そこに従業員のごスピタリティ精神を加えて、接客から接遇への脱却を図ることができるデイでなければならない。

それができる事業所だけが、事業規模を拡大して、生き残っていけるのである。

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