2015年の報酬改定時に、特養の看取り介護加算の算定要件が改定され、PDCAサイクルの構築が義務付けられる中で、「看取り後のケアカンファレンス」が義務付けられている。

そのためこの加算を算定している施設については、必ずデスカンファレンスを開催することになっているはずである。しかしそうした施設でも、看取り介護対象外であった、「急死した人」に対するデスカンファレンスが行われていない場合が多い。

しかし本来のデスカンファレンス目的を考えたならば、看取り介護の実施の有無にかかわらず、それは実施すべきである。

なぜならデスカンファレンスで検証すべきは、「看取り介護中に、何が行われたのか」ではなく、看取り介護の実施時期も含めて、亡くなられた方が施設で暮らしていた間の、私たちが提供したサービスが適切なものであったのかという振り返りであり、それはまさに、「〇〇さんに対する日ごろのケアのあり方」という、ケアの個別性が問われているからである。

しかし看取り介護加算を算定していない特養の場合、利用者が亡くなった後の、デスカンファレンスを一度も行ったことがないという施設が少なからず存在している。それはあまり褒められたことではない。

むしろひとり一人のケアサービスのありようを検証すために、デスカンファレンスだけではなく、退所カンファレンスとして、在宅復帰や医療機関への入院による退所、施設変更のための退所など、すべての退所ケースを検討する機会として、退所カンファレンスも行われるべきである。

前述した看取り介護加算の算定ルール上の、「看取り後のケアカンファレンス」以外に、法令上デスカンファレンスや退所カンファレンスは求められていないが、施設サービスの品質を維持・向上させる、「動機づけ」を生むためには、こうしたカンファレンスが必要不可欠であると考え、退所者が出た場合は、必ず検証のカンファレンス(以下デスカンファレンスとのみ表記)を行うシステムを構築すべきである。

こうした振り返りの機会を持つことによって、職員は必然的に、退所された方に対してどのようなケアサービスが提供されたのかということや、それは果たして適切なものであったのかを考えることになるが、それは単に過去を振り返ることにとどまらず、これから先、今までと同じようなサービスの状態で良いのか、あるいは変えるべき問題があるのかということを検討することにつながるのである。

デスカンファレンスとは、そういう意味で、介護施設の「未来を照らし、未来に導く」検証作業なのである。

デスカンファレンスを通して、職員は対象者が亡くなるまで教えてくれていたと感じていた事が、カンファレンスを通して亡くなったあとでも教えて下さる事の多さ、その大切さを改めて痛感することができる。

さらに誰かの限りある人生の最終場面に、その時期を意識して関りを持つことで、そこで打ち出された課題を一つ一つ改善していくためには、どんな事をしたらよいかと具体的に考える事ができるようになっていく。

そのような意味で、個別の利用者支援を考えるための最後のカンファレンスは、反省・後悔するためだけのものではなく、施設で生活している方たちに、これから活かす・繋げるためのものであると考えるべきである。

看取り介護についていえば、限られた命の時期を周囲の人たちが意識する中で行われる介護であり、対象者の人生の最終ステージにおいて、エピソードを刻み、その記憶を残された人の心に刻んでいくことが大切になる。そのためには利用者の生活史の中でどのようなエピソードがあったかという情報も必要で、特に家族との関係性を表すエピソードが、最期の場面で必要とされる場合がある。

だからこそ家族と一緒に「看取り介護対象者が、その方らしく生きるために何ができるか」を考えるようになる。そうなると職員は、普段からの家族との関わりを大切にし、いろいろなエピソードを聞き出しておきたいという気持ちが湧き上がってくる。それは利用者のみならず、家族との良好な関係性を築くきっかけにも結び付いていく。

そして日常のほんの小さな「気づき」を行動に変える力がついていくのである。それはまさに一番近くで気付く人、一番近くで代弁する人としての介護施設職員の役割を肌で感じ取れるようになることにもつながる。

そんな形で精神面・技術面の向上を目指そうとするスタッフの前向きな姿勢が養われていく。そこにカンファレンスという他職種との率直な意見交換の場を加えることで、それぞれの職員が自分の意見をしっかりと伝える力をつけることができるようになっていくのである。

そこでは、看取り介護になってからの援助よりも、日頃の援助こそが大切であることが再確認できるようになっていくことなるだろう。

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