10月から算定可能となる介護職員等特定処遇改善加算(以下、特定加算と略)の配分方法については、経験技能のある介護職員の範囲の判断や、配分方法などの判断について、「各事業所の裁量により柔軟に設定」することが可能とされ、法人単位の配分も認められている。

cグループに属する、「その他の職種」まで配分するとした事業者では、多くの職員が加算の恩恵を受けて給与改善が可能となる。この際、法人単位で配分する事業者においては、すべての職員が加算の恩恵を受けられると勘違いしている人がいるが、それは違う。

cグループの、「その他の職種」については、「賃金改善前の賃金がすでに年額 440 万円を上回る場合には、当該職員は特定加算による賃金改善の対象とならない」とされているので注意が必要だ。
※aグループ、bグループに属する介護職員については、年収が440万年以上であっても加算配分は可能であることにも注意が必要

しかしこの場合でも、Q&A(Vol.1)の問13に「賃金改善を行う職員に加え、賃金改善を行わない職員についても、平均改善額の計算を行うにあたり職員の範囲に含めることとなる。」とされている。平均改善額の計算式では、当該職員についてゼロ円が1名とすることとなるわけである。

このことについては厚労省の真鍋介護保険課長にも確認しており、同課長によるとこの規定は、「改善を行わない440万円以上の職員も母集団に加わることで平均改善額を低く計算できる」ためだそうである。つまりグループごとの配分は、a2:b1:c0.5の範囲に平均給与改善額を収めねばならないが、改善0円の職員も計算式に入れることで、給与改善される職員の改善額が少しでも上げられるという理由から規定されたようである。(※なおcグループの平均賃金額が他の介護職員の平均賃金額を上回らない場合は、cグループの給与改善額とbグループの改善額が同じになっても良いという例外規定がある。)

さらに問題なのは、Q&A(Vol.2) の下記である。
(問 13 )本部の人事、事業部等で働く者など、法人内で介護に従事していない職員について、 「その他職種」に区分し、特定加算による処遇改善の対象とすることは可能か。
(答) 特定加算の算定対象サービス事業所における業務を行っていると判断できる場合には、その他の職種に含めることができる。

ということは、「特定加算の算定対象サービス事業所における業務を行っていると判断できない場合」は、「その他の職種」に含めることができなくなり、加算を配分できないということになる。そうすると居宅介護支援事業所の介護支援専門員の専従者は、どう転がってもこの加算の配分対象にならないことになる。

例えば社会福祉法人が経営する特養に、短期入所と通所介護と訪問介護と居宅介護支援事業所(ケアマネ一人事業所)が併設されている場合で、このうち年収440万円以上は、施設長とそれぞれの事業管理者(介護職員とは兼務していない)だけと想定したとする。この場合、特定加算を法人単位で全職員に配分しようと考えたとき、年収440万円以上の施設長と事業管理者には配分できない。しかし、もう一人だけ配分できない職員が出てくる。それが加算算定事業所ではない居宅介護支援事業所の専任介護支援専門員である。

「特養」にも介護職員と兼務していない専任の介護支援専門員がいる場合が多いが、特養は加算算定対象事業であるため、特養の専任介護支援専門員は、「その他の職種」としての加算配分が可能である。そうであるにもかかわらず、居宅介護支援事業所の介護支援専門員には加算配分することは不可なのだ。

よってこのような法人では、年収440万を超える施設長及び事業管理者と居宅介護支援事業所の専任ケアマネ以外のすべての職員に、加算配分され給与改善されることになるため、年収が440万円未満である職員のうち、居宅介護支援事業所の専任ケアマネのみ、給与改善の蚊帳の外に置かれるという事態が生じかねない。

これは特定加算の配分ルール上はやむを得ないということになるが、それではあまりに理不尽である。ここは法人が救いの手を差し伸べなければならないところではないだろうか。

つまりこの場合、居宅介護支援事業所の専任ケアマネには加算配分はできないが、せめて法人内の、「その他の職種」と同額の給与改善は行うべきだと思う。勿論その場合の原資としては特定加算は使えないのだから、法人の持ち出しで行うということにならざるを得ないが、その程度の「愛の手」が差し伸ばせない事業者には将来はないと考え、ここは広い心で、加算配分できない従業員に対する手当を、加算算定とセットで考えていくべきではないかと思う。

繰り返しになるが、法人内で加算配分する際に、年収が440万に達していないのに、併設の居宅介護支援事業所の介護支援専門員であるという理由だけで、一人給与改善の蚊帳の外に置くのはあまりにも理不尽である。

この状態を放置していたら、介護支援専門員の成りてはなくなってしまうかもしれないし、どちらにしても介護支援専門員としてのモチベーションの低下は必至だろう。

それはとりもなおさず、サービスの品質の低下につながりかねない問題なので、そうならないための対策が、各法人ごとに求められると考えるべきである。

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