介護業務の効率化を狙って、業務を分担することが必ずしも業務の省力化につながらずに、逆に業務ロスを増やして業務時間が長くなったり、分担するがゆえに人数がそろわないと分担業務が始まらないという弊害を、「介護の質を上げる工夫の具体例(入浴支援2)」という記事の中で指摘した。

逆にいえば業務を分担せず、一人の職員で一つの業務を完結することができれば、臨機応変にこなせる業務というものがあるわけである。もっともこのことがわかりやすい例として、認知症の人の介護拒否場面を考えてみよう。

認知症の人は様々な理由で、様々な状況において、必要な支援行為を拒否することがある。それは本人にとっては理由のある拒否なのであるが、必要な支援を行なえない介護支援者にとっては、非常に大きな介護負担であり、ストレスにもつながることが多い。

食事拒否、排泄介助拒否、誘導拒否、様々な拒否が考えられるが、拒否するからと言って無理に行為を行うことで、さらに認知症の人の心には壁ができて、介護をまったく受けようとしなくなるかもしれない。だから介護拒否への対応はデリケートである。無理やり力づくで、しなければならない行為を終わらせるわけにはいかないのである。

だからこそそうした介護拒否場面では、認知症の人の過去の生活習慣に思いを馳せ、日ごろの行動パターンを思い浮かべ、現在の感情のあり様を慎重に見極め、介護拒否する理由は何かといううことを探り、その理由にアプローチするという、根気のいる頭脳労働・知的対応が求められるわけである。

しかし根気よく理由を探る過程で、何となくその理由が見えてきたりする。例えば介護を拒否する理由が、認知症の人を子ども扱いするような不適切な支援者の言動であったり、ご飯の時間だから食堂に行きましょうと言われ連れていかれたのに、ご飯が食卓に出てくるまでに1時間以上もかかり、その間何の説明もなく放置された経験であったり、挨拶もなく部屋に入ってきた介護職員に対する怒りであったりすることもある。

そのような介護側の問題対応のほか、便秘でお腹が苦しいのに、その理由がわからない認知症の人が、そのことでイライラしていたり、個々がどこかわからない混乱の中にいる不安の中で、風呂に入りたいとも思わないし、ご飯を食べるどころではないという風に、その人自身の身体・精神状況が理由になっている場合もある。

そうした理由を想像して発見することが何よりも重要である。

そして発見できた様々な混乱と不安に、うまくアプローチできたときに、認知症の人の気分が突然変わり、「したら風呂入るべか」と言ってくれたりするときがある。その時に分業でしか対応できない場所では、その気分の変化に対応できずに、「少し待っててください」と言っていいるうちに、タイミングを逃してしまうことがある。

そうなると再度そうした気分に持っていくために、どれだけ時間がとられるかわからない。分業しなくても、マンツーマンでの対応ができる場所であるなら、こうした気分の変化に即応した対応が可能になり、そうした対応が日常的に可能な場所では、「日課」にとらわれないサービスの提供が可能になる。

日課にとらわれなければ、特定の時間帯に介護をしなければならないという強迫観念に縛られずに済むから、特定の時間帯に何かをしようと、認知症の人に、「説得」し続けるという無駄な時間が無くなる。それだけでも大きな業務の省力化と言える。

そもそもユニットケアとは日課のないケアのことであり、それは業務の都合に合わせてケアサービスを提供するのではなく、利用者のニーズや都合に合わせてケアが提供されることを意味する。

勿論、日課にとらわれないと言っても、生活リズムの乱れは無視してよいということではないが、(参照:小規模施設の経営者が陥りやすい落とし穴3〜日課のないケアサービスの意味)、気分を無視した日課へのとらわれを捨て去ることによって、業務はよりスムースに回ることも多いし、なにより日課をこなさねばならないという介護提供者のストレスが軽減され、それは介護職員の心身の疲弊を防ぐことにつながっていくという効果にもつながっていく。

このように分業絶対主義から抜け出して、マンツーマンで介護が可能となることによって、業務省力化がすすめられるという視点から、介護の在り方・やり方を見直しても良いのではないだろうか。

大手介護事業者のメッセージが、介護業界から撤退しなければならなかった最大の理由は、同社が開発したアクシストシステムという、15分刻みで日課をこなす介護方法により、職員の心身が疲弊していった結果であるとも言われている。

そうしたことも反面教師にしながら、もう一度便利だと言われる分業を見直しながら、原点回帰の介護の方法論を考えていく必要があるのではないだろうか。

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