政府の規制改革推進会議の答申がまとめられ、6日安倍首相に提出された。

それを読むと介護関連では、昨年9月28日に発出された、「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」によって介護保険内・外サービスの柔軟な組合せが適切に行われるルールの明確化を中心に、フォローアップしたことを評価するとともに、今後も豊島区で行われているモデル事業を踏まえたうえで、さらなるフォローアップを行うとしている。(※32頁)つまり、「混合介護」をより一層推進するという意味だろう。
(参照:混合介護のルール明確化1・訪問介護編 ・ 混合介護のルール明確化2・通所介護編 ・ 混合介護のルール明確化3・道路運送法上の取扱い

このことは介護サービス事業者が保険外収入の手段を手に入れるということことにもつながるが、同時に保険外サービスと一体に保険給付サービスを提供するケースが増えるという意味は、その方法が適切かどうかについて、計画担当者である介護支援専門員のチェックの視点がより重要になるという意味でもあり、ケアマネの業務負担は確実に増加することを覚悟せねばならない。

しかしそのこと以上に、ケアマネの業務負担が増加する内容が、規制改革推進会議の答申には書かれている。それは「介護離職ゼロに向けた対策の強化 」という部分である。(※34頁〜35頁

そこには、「働きながら介護をする労働者の支援策」が提言されている。

そこでは、近年認知症介護のケースが増えているが、BPSD(行動・心理症状)が要因となり、家族介護者が突発的な対応を余儀なくされることが多く、かつ認知症は症状が徐々に進行する特徴があるため、変化に応じてケアプラン の見直しを行う等、家族介護者が介護専門職と相談できる機会の確保が不可欠であるとし、こうした相談は短時間で済む場合が多いが、現行の介護休暇は取得単位が 「半日」であるため、所要時間に応じた小刻みの取得ができない点を問題点としている。

そのため介護休暇について、時間単位の取得が可能になるよう、必要な法令の見直しに向けた措置を講ずることを提言している。それは良いとしても次の提言はどうだろう?

こうした介護と仕事の両立のための支援制度があるにもかかわらず、家族介護者の うち9割以上が介護休暇と介護休業のいずれも利用したことがなく、同制度の認識がある者は家族介護者の 42.2%にとどまることを問題点として挙げている。

そして勤務先に介護休業制度があることを認識していた労働者の介護離職率は、認識がなかった者の約半分に低下するとした労働政策研究・研修機構の報告データを示し、この結果を援用して、現在の制度の認知度が仮に 100%になった場合の離職率を試算すると、現状の離職率 15.0%から4割程度低下することになるとし、このことは介護離職者の約 75%を占める女性のキャリア継続に効果が大きいと結論付けている。

そのため「厚生労働省は、 ケアマネジャーが、就労している家族の勤務実態も踏まえてケアプランを作成できるよう、セミナーの開催やその受講を評価する仕組みを通じて、ケアマネジャーへの情報提供や支援を行う。 」と提言している。

勿論、そうした制度があることをケアマネジャーが十分理解し、利用者の家族支援の意識を持つことも必要だろうが、そのことを介護支援専門員の義務のように押し付けるのはいかがなものか。これは本来、行政責任で企業等の担当者に制度を活用するように指導し、労務管理担当部署の担当者から雇用する職員に対して周知すべき問題ではないだろうか。

そもそも介護休暇・介護休業の制度が普及しないのは、そのような制度があることを知らないからという理由よりも、そのような制度があっても、人手不足などの職場環境などの状況から、そのような制度を活用できないという意識や職場の雰囲気があるからではないのだろうか。そうであるがゆえに制度を周知しても、それが活用できない様々な要因を排除しない限り、離職率が4割も低下するなんてことにはならないだろう。

しかし今回の提言では、まず周知が必要で、それも直接ケアプランに介護休暇を活用した家族介護の視点を持ち込むことによって、労働制度の啓発と普及を介護支援専門員に担わせるとうわけである・・・。

しかし介護保険制度創設の目的の一つは、介護の社会化であり、家族介護に頼らずに、社会的に要介護者を支えるというものではなかったのか。介護休暇や介護休業の活用をケアプランに盛り込んでいくという方向性は、介護の社会化の縮小や否定につながりかねない問題ではないだろうか。

しかもそのための知識を得るためにセミナーを受ければ、「ケアマネジャーが評価される」とされている。それはセミナーを受ければ何らかの形で介護報酬に反映されるという意味だろう。しかしそれはいずれ、当該セミナーを受けなければ介護報酬は全額算定できないという風に、加算ではなく減算化されていく可能性が高い。

つまり極めて義務化に近いセミナーの新設となりかねないものだ。

日ごろ地域を忙しく走り回っている介護支援専門員は、報酬改定の度に複雑化する加算ルールについては、計画に関連するすべてのサービス種別の知識が求められるため、日々の勉強が欠かせない。そんな中で利用者は、毎日のように介護支援専門員を頼りにして様々な支援を求めてくる。しかしこの資格には更新制度があり、5年に一度は、利用者支援を他の誰かに任せて、研修のためだけに何日も時間を使わねばならない。ただでさえも忙しいし、勉強もし続けているわけである。

そんな中で、介護離職を減らすという国の政策責任で行うべきことのために、介護支援専門員は目的外使用を余儀なくされるわけである。そのために介護支援専門員に新しいセミナーを受けさせるというわけである。いい加減にしろと言いたい。

百歩譲ってそのような勉強が介護支援専門員に求められるのであれば、更新研修にそのカリュキュラムを組み入れれば済む問題である。

そうしないで新たな独立したセミナーを新設しようとする意味は何だろうか?このセミナーの受講対象者は、少なくとも全国の居宅介護支援事業所の介護支援専門員すべてを対象と考えられていることは想像に難くない。するとこのセミナーを開催するということだけで動くお金はかなりのものとなるだろう。

つまり極めて受講義務化に近いセミナーを全国で開催するという意味は、間違いなく利権と繋がっているという意味だ。

そんな利権のために、誰かを設けさせるために、介護支援専門員は新たな役割を求められ、安い報酬でこき使われるわけである。まったくたまったものではない。

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