3月27日に報告された、中央社会保険医療協議会・診療報酬改定結果検証部会の「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進に係る評価等に関する実施状況調査」によると、医師が「負担が非常に大きい」・「負担が大きい」と感じている業務では、「主治医意見書の記載」が59.1%で最上位となっている。

そして「主治医意見書の記載」については、他職種に実施、または補助してほしいと思っているとの回答が多かった。・・・ということは、他職種が医師に比べて暇だと思っているのだろう。

しかし仮に「主治医意見書の記載」を医師以外の誰かが実施または補助できるとしても、診断に関することは他の職種の者が業務として行うことはできないのだから、代行できることとは、医師がメモしたことや口頭で指示した内容を代筆したり、PC入力してプリントアウトりする程度にとどまる。それでは大した業務軽減にはつながらないだろう。

というかそれほど業務負担になっているほど、まじめに医師は意見書を書いているのだろうか?医師意見書を丁寧に書いている医師などあまりいないというのが僕の実感である。

僕は介護保険制度がスタートした年から、登別市の認定審査委員を務めているが、認定審査の際に医師意見書が必須の資料だと感じたケースは1件もないと言い切ってよい。参考程度に見ることはあるが、それがなくても審査はできる。

そもそもほとんど何も書いていない意見書もある。特記すべき事項が書かれていないだけではなく、患者氏名と生年月日、診断名だけ殴り書きして終わりという意見書もある。調査票を読むと、明らかに重度の認知症であることがわかる人の医師意見書の診断名に、「高血圧」とだけしか書かれておらず、認知症に関する記述が一切ないこともある。

要介護1相当の場合は、予防給付である要支援2とするか、介護給付となる要介護1とするかについては、認知症の自立度が重要なファクターであるが、その際に医師の判断と調査員の判断が異なることがある。その際にも医師意見書の判定内容より、調査員が書いた調査票の判定が正しいと思われるケースの方が多い。中には判定基準を確認しているのか疑わしい医師意見書の判定もある。

そもそも認知症の自立度判定は、判定項目そのものをみなくとも、調査票の内容から審査員はそれを判断することができるので、その部分でも医師意見書が必要不可欠ということにはならない。

そんな医師の意見書の作成料金は1件につき新規が(在宅)5,000円(施設)4,000円、継続の場合は(在宅)4,000円(施設)3,000円とされている。ほとんど何も書いていない意見書でも、これだけの費用が支払われているわけである。財源問題が給付抑制につながっている今日、この費用こそ無駄であって削減すべき費用ではないのだろうか。

しかも医師の意見書が介護認定には必要不可欠とされていることによって、審査には大きな弊害も生まれている。それは、「医師意見書の遅れを何とかしてくれ!!」で指摘しているように、作成依頼しているにも関わらず、意見書の提出が遅くなって審査ができないという弊害である。

医師の意見書が挙がってこないことによって、認定審査ができないケースがある。この場合、認定結果を待つ申請者は、認定結果が出る前に「暫定利用」でサービスを利用することはできるものの、審査会で認定結果が非該当となった場合、保険給付が受けられないことになって、暫定利用したサービス分をのちに全額自己負担せねばならないために、それを恐れてサービス利用ができないというケースさえある。

それもすべて、忙しくて大きな業務負担であると言って、医師意見書を書いてくれないという医師の都合に他ならない。

であれば・・・医師の意見書の業務を減らすことは根本的に難しいことを鑑みると、いっそのこと認定審査の仕組みを大幅に変えて、医師の意見書を廃止してはどうなのだろう。完全に廃止しない場合も、医師の意見書がなくとも認定審査を行うことを基本するルールに変えて、認定審査の際にどうしても医師の専門的意見が必要なケースのみ、審査会の求めで医師の意見書を書くというルールに変えるべきではないだろうか。

そんな風にして医師の意見書が審査資料として必要ではなくしたとしても、審査結果自体は今と違いは出ないし、審査そのものに支障が来たすようなこともないだろう。

それで意見書が遅れて審査ができないという弊害は無くなるし、財源負担も減るのだから、これは一石二鳥、いや一石三鳥の効果があると言ってよいのではないだろうか。

医師意見書の作成が業務負担だと言って嘆いている医師も、それがなくなれば喜ぶのではないだろうか。

そうした医師意見書廃止論に医師会が反対するなんておかしい。もし反対するなら会を挙げて、医師意見書の提出が遅れないように取り組めと言いたい。

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