昨日から統一地方選挙がスタートして、これからしばらく選挙モードに染まる地域が多い。

政治にも選挙にも興味がないという人も多くなっているが、この国の国民すべてが、一定年齢以上になった時に「選挙権」が得られるようになったのはそれほど昔ではない。女性に選挙権がなかったという信じられない時代がつい最近まであったのだ。その時代に選挙権を手に入れるために、血のにじむような運動を続けた方がいて、今の制度になっていることを考えると、その権利を安易に放棄するのはあまりにも情けないことだ。是非選挙権を行使するという形で、国や地方自治体に物申していただきたい。(参照:私を選挙に連れてって!!

夏には参議院議員選挙も行われるが、全国老施協も推薦議員をもう一人国会に送ろうと、活動を活発化している。とても立派な候補者が立候補するので、僕も応援したいと思う。

先日、その候補者の方と老施協の推薦者の方のトークショーを聴く機会を得た。その中で両者は、特養等の配置規準の「3:1基準」について、あまりにも現場の業務実態とかけ離れた基準であり職員を疲弊させているので、その基準を「2:1」にするように運動したいと話されていた。

ご存知のように現在特養の人員配置規準では、「介護職員及び看護職員の総数は、常勤換算方法で、入所者の数が三又はその端数を増すごとに一以上とすること。」とされている。

これを「入所者の数が二又はその端数を増すごとに一以上とする」と変更するために運動するという意味だろう。当然そのために雇用職員を増やさねばならないのだから、それに見合った金額に基本サービス費(介護給付費)を引き上げるという意味も含まれていると理解した。

つまり施設サービス費を引き上げて、職員配置を2:1とするという改正を訴えるということだ。

しかし僕はそのことには賛同できない。それは日本の人口様態と雇用状況を考えると、その配置が困難となる事業者が続出するだろうと思うからだ。

日本の人口構造を見ると第一次ベビーブーム(1947年〜1949年)に生まれた人が大きな塊となって、他の世代より圧倒的に数が多い。その団塊の世代と呼ばれる方々が全員後期高齢者に達する2025年から、その方々が90歳になって数が減っていく2040年くらいまでが、高齢者介護問題の正念場であるという見方がある。

しかし団塊の世代に次ぐ塊として、1971年から1974年までに生まれたに生まれた団塊ジュニア世代(第2次ベビーブームで誕生した世代)の方々が存在したいることにより、その世代の方々が団塊の世代を支える介護人材としても大きな塊となっていると言える。

ところが団塊の世代の方々が減っていく2040年以降に、団塊ジュニア世代の方々が70歳となるのだ。その中で生産労働人口はさらに減り続ける。しかも我が国には第3次ベビーブームが存在しなかったために、団塊ジュニア世代を支える次の塊の世代は存在しないことになる。

つまり2040年以降に高齢者の数が減り、介護事業者の数が今のレベルで必要とされなくなっていく過程においても、高齢者の数の減少を上回るスピードで介護従事者の成り手が減少していくために、人員・人材確保はますます難しくなるのである。

そのため今後の高齢者介護を支える人材を、日本人だけで賄おうとすることには無理があることは明白で、外国人労働者をある程度受け入れ、介護人材として組み入れていかねばならないとして、外国人技能実習制度に関する法改正を行い、職種に「介護」を追加するとともに、その期間を5年に延長した。さらに入管法を改正し、特定技能により介護分野で最長5年の滞在を可能とするとともに、介護福祉士の資格を得た外国人は永住も可能としたのである。

しかしそうした外国人が長期的にみて日本の介護人材問題を解決する切り札になるとは思えない。(参照:人材確保は多方面・多角的視野で

つまりいくら介護給付費が引き上げられて、職員給与を改善できたとしても、生産年齢人口の絶対数が減る社会で、介護労働にだけ今より多くの労働力が供給されることはあり得ないのだ。その中で配置規準が引き上げられ2:1にされたとき、その配置規準をクリアできない事業者が続出する恐れがある。

配置規準が満たされない場合の人員欠如減算は、3カ月は3割減算であるが、3カ月目以降は5割減算となる。その減算を受けてもよいという事業者はないが、人口減少社会の中で、容易に雇用者が増えるわけもなく、2:1をクリアできない事業者は少なからず存在するようになる。そうすると減算単位では運営継続は不可能なので、事業廃止に追い込まれる施設が続出しかねない。それは即ち施設サービスという社会資源が失われるということを意味し、介護施設に入所できない「介護難民」を大量に生み出すことにつながってしまう。

よって現在の少子高齢社会で、生産年齢人口の枯渇に対する切り札的政策が存在しない中での配置基準引き上げは無謀というしかない。むしろ配置規準を2:1に引き上げて基本サービス費を上げるのではなく、配置規準を現在のままにして、別に看護・介護職員配置加算を新設して、2:1以上の配置を行う施設には、加算で対応すれば良いのではないかと考える。

職員の雇用・定着のシステムを整備して、配置規準を基準以上に配置できる施設は、当然介護の質も向上する要素があるということなのだから、配置規準加算は単なる体制加算ではなく、職員を配置基準以上に配置して、高品質なサービスを提供できるというアウトカム評価にもつながっていくものと思え、より現実的な方法ではないかと思う。

全国老施協の推薦候補も、その方法での改正を訴えたほうが、現場の経営者の賛同を得やすいと思うんだけどなあ・・・。

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