僕は今、岡山空港でこの記事を更新している。これから羽田空港を経由して新千歳空港に向かう予定だ。先週木曜日から始まった、東京〜福岡〜岡山の講演の旅を終えて、いったん自宅に帰るためである。

昨日は岡山市で行われた日総研看取り介護セミナーで5時間の講演を行った後、日ごろ何かとお世話になっている、川上中国大学の元教授のお誘いで、岡山の人気店でオフ会を行い、2次会のカラオケまで楽しんで過ごした。(参照:masaの血と骨と肉「信号はまだ、赤だし、動けません。」)

おかげで今朝は目覚めもさわやかで、ホテルのチェックアウトまで連載原稿の執筆作業をおこなっていたが、順調に作業も進んだ。

この旅の土曜と日曜の講演で、今年度の日総研看取り介護セミナーが無事終了することになった。全国7カ所を、このテーマで回る旅も、もう4巡目になったが、いまだに看取り介護に対する大きな誤解や、不適切な状態で看取り介護が行われている状態がなくならないのが非常に残念である。

今年度、全国を回って新たに問題だと感じたことは、「余命診断が行われていない看取り介護はあり得ない」という記事で指摘した不適切な状況が思った以上に多いということだ。

終末期判定がきちんと行われず、余命診断も行われていない状態の、偽物の「看取り介護」がまかり通っていることは、今年1月に上梓した、「看取りを支える介護実践〜命と向き合う現場から」でも問題提起している。

そうした偽物の看取り介護を行っている特養が、日本全国に存在している。

今回のセミナーに参加した人の中にも、自分が所属する80名定員の特養で、現在18人もの多人数の利用者が「看取り介護」とされていることに疑問を感じ、僕の講義を聴いて「看取り介護」とは何かを確認したいという動機付けを持たれている人もいた。

聴けばその特養では、利用者の家族が「看取り介護を希望する」ことが、看取り介護実施の条件と根拠になっているという。

とんでもないことだ。看取り介護とは、治療により回復の見込みがなく、数週間〜半年程度で死を迎えるだろうと予想される終末期であると判定された人に対し実施される介護のことであり、それを判定するのは医師以外の者には許されていない。もし家族の希望で一律、看取り介護としているのが本当なら、それは緩やかな死への誘導ともとられかねず、著しい人権侵害が疑われる。

それとは別の特養では、経管栄養になった人は全員看取り介護と判断しているという。馬鹿も休み休み言え!経管栄養とは、食物の経口摂取が困難になった人の延命を図るために行われる行為である場合が大半で、それは看取り介護とは対極に位置するものだ。食物の経口摂取が不可能かつ、その状態が治療によっても回復しないと医師が判断した場合に、安楽な終末期を過ごすために、『経管栄養を行わない』と判断して行う介護が、本来の看取り介護である。

またある特養では、利用者の半数以上が看取り介護対象で、その期間も一年以上に渡っている人が珍しくなく、中には数年に渡る期間となっている人もいるという。その状態とは、医師が真面目に終末期判定を行なっている状態とはとても思えない。

それは医師の責任を果たしていない状態と言えるし、そういう医師の判断に寄りかかっていたり、あるいはそういう判断に誘導している特養は、道義上の責任を問われて然るべきであるし、そういう施設のトップは、社会から厳しく糾弾されるべきである。

繰り返しになるが、終末期とは余命が半年以内と判定される時期のことを言い、看取り介護は長くてもおおよそ半年間という期間になるのが常識で、予測が外れても年単位で実施される介護ではない。

真面目に適切に看取り介護を行なっている施設において、看取り介護の実施期間は、看取り介護加算の最長算定期間である30日を下回るのが普通である。

なぜなら看取り介護とは、対象者もしくはその家族に対し、余命診断という形で命の期限予測を告げた上で、残されたその期間に、出来ること・したいことを実現できる期間という意味があるからだ。それは対象者や家族に、死に備えた覚悟を促すことにもなるのだから、治療により回復不能であるという判断も、余命が半年以内であるという判断も、必然的に慎重にならざるを得ないからだ。

そうであるにもかかわらず、終末期判定をおざなりにし、余命診断も行わずに、多数の利用者を半年を超える長期に渡って看取り介護の対象としている施設とは、介護施設でも、暮らしの場でもなく、単なる墓場の中継地にしか過ぎない。

恥を知れと言いたい。

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