大手回転ずしのチェーン店で、アルバイト従業員が調理中の魚をゴミ箱に捨てる様子や、同じく大手コンビニエンスチェーンに勤めるアルバイト従業員が、商品のおでんを口にして吐き出したりする不適切動画をSNSに投稿する、「バイトテロ」が社会問題化しつつある。

雇用主側は、不適切画像を撮影したり投稿したりしたアルバイト従業員を、「解雇した」と発表しているが、不適切画像を撮影・投稿している当人は、はなから仕事を辞めようと思いながら不適切な状況を作り出しているので、「クビになる」ことは懲戒や罰則の意味にはならない。だから「クビになる」ことを恐れて、不適切行為がなくなることはない。

そもそも大手チェーン店にとっては、バイト店員の存在は不可欠であり、こうした行為でバイト店員を信用できなくなって、その雇用者数を減らすことは、人手不足を助長させるだけで、それはチェーン展開の根幹を揺るがす結果にしかならない。不適切行為も困るが、解雇するパート職員が増えて人がいなくなるのも困るというのジレンマを抱えているのが現状での本音ではないだろうか。どちらにしても解雇が、不適切行為の抑止力にはならないのだから困ったものである。

この問題に「伝家の宝刀」は存在せず、どんなに罰則を強化しても不適切行為を根絶することは不可能だが、せめてこうした行為を少しでも減らすためには、雇用主側がきちんと損害賠償請求を行って、不適切行為を行った従業員に多額な賠償責任を負わせるしかないのではないだろうか。

こうしたバイトテロの状況を考えると、介護業界がそのことと全く無縁であるとは思えなくなってくる。今後、介護事業者を舞台にして似たような不適切行為を行う従業員がいて、その行為を動画撮影してSNSに投稿して大問題になることが懸念されるのではないだろうか。

現在でも介護事業者における不適切行為が、ユーチューブ等にアップされて配信されるケースはある。しかしそれらはすべて介護職員等の不適切行為を疑った家族等が、動画を隠し撮りしてインターネット上に流しているものだ。

介護事業者で働く職員が、自らの不適切行為を自分で撮影してネット配信している画像にお目にかかったことはない。

しかしこれだけバイトテロがメディアで取り上げられると、それを真似しようとするお馬鹿さんが出てこないとも限らない。特に介護の仕事に見切りをつけて、ほかの職業に転職しようとする人間が、「後ろ足で砂をかける」かのように、所属事業者の評判を落とす目的で、利用者への虐待・不適切行為を自ら撮影し、ネット配信しないとも限らない。

その恐れを増す要素の一つが、「特定処遇改善加算」ということにならないだろうか?

この加算によって給料がアップするのは、すべての介護職員とは限らない。一番給料が高くなるのは勤続10年以上の介護福祉士であるが、だからと言って非常勤の勤続10年以上の介護福祉士も、常勤者と同じく給与アップすることにはならない。

勤続10年の考え方も事業者の裁量によるのだから、非常勤職員の勤続年数も勤務時間によって差をつけられるかもしれないし、そもそも勤続10年以上の介護福祉士の給与改善額は、全体の平均でみるので、個別には差がついて問題がないとされている。そうであれば当然勤務時間の短いパート職員は、時給が上がったとしても、その幅は全体から比べて小さなものになるだろう。場合によっては、パートの時給は据え置いて、常勤者の給与のみを上げるという事業者もあるかもしれない。

つまり特定処遇改善加算は、職場全体の平均給与は確実に引き上げるが、それによって職場内での給与格差も確実に広げるものであるという理解が必要である。

このことを職員に対して丁寧に説明・周知し、パート職員には、この差が決してパート職を低くみているとか、その地位を貶める意識の結果ではないことを理解してもらわねばならないのではないだろうか。そうしないとパート職員に余計なストレスを与え、「パートテロ」のような不適切動画のネット配信につながりかねないという意識も必要ではないか。

どちらにしても、今後の介護事業においても、不謹慎な職員による職場への背信行為は、「絶対にない」とは言えないのである。だからこそ日ごろの職員教育に努めることは勿論であるが、いざというときのために、不適切行為に対しては毅然と対応し、必要な賠償を求めていくという姿勢の表明も求められるのではないだろうか。

そんなことをも考えねばならないほど今般の状況は複雑怪奇で、本当に難しい時代になってきたと思う。介護事業経営者にとって頭の痛いことだらけであるが、そもそも経営とは頭の痛いものであり、楽なものではないのである。

社会福祉法人等のトップは、長い間、経営をせずとも、運営するだけでトップとして君臨できていたという温い時代がつい最近まであった。自分が経営者として優れた資質を持っていると錯覚の時代を過ごして経営者には、このことの理解ができていない人が多いが、そういうぬるま湯経営の時代は過去のものでしかないのである。いつまでも旧措置の頃を懐かしくような経営意識であってはならないのである。

しかしいつの時代においても、経営者として求められる姿勢というのは存在する。

職員を財産と考えて真摯に対応する姿勢と、不適切な行為や就業態度の乱れに対しては毅然と対応するという、経営者の揺るぎのない姿勢だけが、問題の本質を解決するのだということを忘れないでほしい。

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