介護人材の確保が困難であることが叫ばれて久しいが、この状況の改善はいつ、どのような形で図ることができるのだろうか。

我が国の社会情勢を読むと、団塊の世代がすべて75歳の後期高齢者に達する2025年までは、75歳以上の人口が急速に伸びていく。その中で20歳〜39歳の人口が減少していくことになる。

団塊の世代がすべて75歳に達した2025年以降は、75歳以上の人口増は落ち着くが、85歳以上の人口が伸びていく。その中で40歳〜64歳の第2号被保険者も減少し、現役世代が減少していく。

85歳以上の高齢者がさらに増えるという意味は、今日まで元気だった高齢者が、明日脳血管障害等の急性疾患を発症し、そのまま重介護状態になってしまうケースが日本中で増えるという意味だ。

そのような情勢下で生産労働人口が減少することを考えると、この状態に対して適切な介護の量を確保できる手立ては見えてこない。

介護する人の数の問題をよりシンプルに考えると、日本人だけで必要な介護する人の数を確保することは不可能という結論しか出ない。

そのため介護の分野に、外国人労働者がより張り付くことができるような法改正が行われたわけであり、建前はともかく、それは外国人が日本人に替わって介護労働に就ける手立てを広げたことに他ならない。

ただし新たな外国人労働者の在留資格のうち、在留期間の5年が回数制限なく更新できる「特定技能2号」については、「介護」は認められなかった。介護分野における新在留資格とは「特定技能1号」のみとなっており、この部分でのハードルは全廃されているわけではない。

こうした考え方に対して、『既に介護福祉士合格をもって「特定技能2号」相当、すなわち介護現場で働いている限り更新可能な在留資格として認めるという入管法改正が平成29年9月1日で施行されているので、いまさら介護分野で「特定技能2号」の取り決めなど不要ではないのか?』という意見がある。

しかし特定2号と介護福祉士の在留資格は同じであっても、ハードルが違うことは明白だ。介護労働分野では、「介護福祉士」という国家試験に合格しないと特定2号と同じ在留資格を得られなくなっているという意味であり、これは厳然と残っているハードルなのである。

特定技能1号」は最長5年の技能実習を修了した人も対象になるものだから、新在留資格で介護分野で就業する人とは、実質技能実習制度での受け入れ最長期間が10年に延長されることとさほど変わりがない。それらの人たちが本当に介護事業者の戦力になるだろうか?

特に技能実習生は、複雑なコミュニケーション能力が求められる介護の仕事をすべて担うことは難しいのではないかという懸念が拭えない。その能力が問題とされる場面が予想を超えて現れるだろうし、労務管理は現在よりずっと難しくなり、様々な新しい問題が介護労働の場で発生することになるだろう。

しかし前述したように、日本人だけで必要な介護労働力を確保することは、「困難」というより、「不可能」であると認識せねばならず、外国人労働力を適切に介護事業に張り付けていく手立てが求められることは間違いのないことだ。それは緊急の課題であるともいえる。

介護事業者の労務管理の在り方も、外国人の方々が働くことを前提に、それらの方々が働きながらコミュニケーション能力をはじめとした、「介護労働スキル」を高めていくことが可能となるように、教育課程の充実を図るなどの、「労務管理の新たなステージ」を模索していかねばならない。

この時に思い違いをしてはならないことがある。日本人が外国人労働者を見る視点は、外国人労働者の目線とは必ずしも一致しておらず、そのことで様々なトラブルが生じてしまうということだ。

外国人が日本の労働の場にマッチングせず、トラブルが生ずる大きな要因は、言葉や文化の違いだけはない。むしろトラブル要因となるのは、外国人労働者に対する、雇用主や日本人従業員の偏見にも似た、「思い込み」である場合が多い。

日本人は足りない労働力を外国人で補おうとして、職場に外国人を受け入れるという考えに偏りがちだが、外国人労働者は日本の介護労働力確保のために来日するのではなく、出稼ぎに来るだけである。

しかも彼らは労働力としてやってくるわけではなく、人間としてやってくるのだ。

ここの意識の違いを埋めて、外国人の方々のプライドやポリシーにも気を配り、それらの方々が働く喜びを持ちながらスキルを向上させる意識付けをできるかどうかが、職場環境改善をはじめとした労務管理の見直しにかかっている。

人は物でもないし、機械でもない。思った通りの結果に結びつかない部分は多々ある。人として、人をどう受け入れるのかという視点は欠かせないのである。

血の通った人間であるからこそ難しい問題があるし、ロボットではなく感情のある人間だからこその困難性は排除できないが、人であるからこそ、人の尊厳と誇りをきちんと認め合ったときに、ロボットや機械にはできない結果を生むことができる。

そうしたポジティブな視点から、新しい時代にマッチした職場づくりの視点が必要とされるのだ。

このことに未だに気づいていない事業主には、そろそろ退場の時期が来ていると自覚させる必要があるかもしれない。

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