12日のお昼に、「新処遇改善加算(19年10月)によって笑う人、泣く人」というブログ記事を更新したが、ちょどその日に、社保審・介護給付費分科会が行われており、その中で厚労省は、給与改善対象として最も重視すべき人材の対象である、「経験・技能のある介護職員」については、同一法人で勤続10年の介護福祉士に限定せず、「業界10年の介護福祉士」も加えられるようにする方針を決めた。
これによって他事業所の経験年数を含めてキャリア10年の介護福祉士の経験がある職員が加算の支給対象になることが明らかになった。そして加算算定した部分を支給する際に、各事業者の判断で「他の介護職員」・「他の職種」への加算原資の配分を認めることとしている。
ということは多くの職員に加算原資を配分しようとすれば、原資となる「業界10年の介護福祉士」が数多くいなければ、配分の額は少額になってしまうのだから、この加算をより多く算定しようとして、今から業界10年の介護福祉士の引き抜き競争が始まる可能性もある。そういう意味でも、介護事業者にとってこの加算は悩ましい加算である。
また当日の介護給付費分科会では、経験・技能のある介護職員を最も重視するためのルールとして、「月8万円の賃上げとなる人、あるいは賃上げ後に年収が440万円を上回る人が事業所内に必ず1人以上いなければならない」ことを他の職員への配分の条件とした。これを無視し、幅広いスタッフに薄く広く配る運用は認めないというのである。
しかし「月8万円の賃上げとなる人」という条件と、「賃上げ後に年収が440万円を上回る人」の条件の壁は、高さにかなりの差がある。
仮に年収が440万円を上回る職員現在何人いようとも、その人たちは「賃上げ後に年収が440万円を上回る人」には該当しないが、現在年収が420万円の人がいたとすれば、その人に年間20万円以上の賃金改善ができれば、この条件はクリアすることになるわけである。後者の条件に該当する場合は、他の介護職員や他の職種に広く加算原資を配分することは可能になるだろう。
一方、「月8万円の賃上げとなる人が必ず一人以上いる」という条件を加算原資の配分要件とする事業者は、ずいぶん悩ましい問題を抱えざるを得ない。加算原資を他職員にも広く配分するためには、加算対象となる職員の8万円の原資から他の職員に回すために、当該加算対象職員の賃上げ額を8万円未満に削り取らねばならず、その削り取る額が多いほど、他の職員の給与改善額は高くなるわけである。
そんな中で一人の職員だけ加算原資を全額手渡して、月額8万円の給与改善をすることが可能なのか?それは公平性の観点から極まて難しいと思え、実際誰か一人だけに加算額全額の8万円の給与アップを行い、それ以外の加算対象職員の給与の改善額は、他の職員へ振り向ける分を削った額にしかならないとしたら、そのことだけで加算原資を削られた職員の退職動機に結び付いてしまうかもしれない。それは現実には不可能ではないかと思える。
そうするとこの加算を算定して配分する事業者は、「賃上げ後に年収が440万円を上回る人が一人以上いる」という条件を算定要件とし、他の職員に振り分けるしかないのではないだろうか。するとそれができる事業者は、規模の大きい事業年数も長くなっている事業者に限られてくるように思う。
一方で、「月8万円の賃上げとなる人が必ず一人以上いる」という要件において加算算定する事業者については、それができたとしても、月8万以上きゅよ改善しない加算対象職員の給与は8万に限りなく近くする必要があり、実際に加算対象外の職員に回される原資は雀の涙にも満たないかもしれない。しかしこうした事業者については、介護福祉士がそこに転職したいと応募が多くなる可能性はある。
ところで加算原資の配分については、さらに細かなルールが定められており、配分割合の優先順位は、下記の通り定められている。
1. 経験・技能のある介護職員
2. その他の介護職員
3. その他の職種
そのうえで 次の要件を加えている。
・「経験・技能のある介護職員」の賃上げ額の平均は、「その他の介護職員」の賃上げ額の平均の2倍以上に保つ
・「その他の職種」の賃上げ額の平均は、「その他の介護職員」の賃上げ額の平均の2分の1を超えてはならない。
ということで、3グループの賃上げ幅は2:1:0.5ということになる。これはあくまでも各グループの「平均」を指標とし、個々の賃上げ額をどうするかは事業者が判断できる。またこのルールの範囲内であれば、有望な若手などを高く評価することも可能だが、「その他の職種”の賃上げ」は、年収440万円を超えない範囲でしか認められない。ということで「業界10年の介護福祉士」に該当しない職員には、あまりにも恩恵が薄いルールといえるだろう。
また同じサービス種類の中であっても、経験・技能のある介護職員の数が多い事業所や、職場環境が良い事業所について、更なる評価をするということで、加算率は2段階に設定されることが示されている。
これらに内容については「表の掲示板」の、「新処遇改善加算に新方針〜これって結構難題ではないでしょうか? 」でも意見交換され、様々な意見が述べられている。
その中でthetkさんという方が、「もう処遇改善加算とか止めにして、会社を経由せずに直接本人の口座に入金するシステムとか、税率軽減やら社会保険料軽減とかに欲しい。マイナンバー活用しましょうや。」というボヤキにも似た意見を述べられているが、ついついそのように考えてしまうのも仕方のない、事業者にとって厄介で、複雑で、面倒くさい加算算定ルールになっている気がしてならない。
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当事業所では、正社員 介護職員6名中4人が介護福祉士。1名がもうすぐ国家試験受験であり、10年越えは2名います。
masaさまの記事を読んで、今回のすべての10年加算は純粋に全額 10年戦士個人に支給することを決意してました。
これであれば、年収420万円超えも可能と思いましたが、「8万円という数字は、これまでの加算を含めた数字であって、純粋に8万円では無さそうだ」と研修で聞いたことがあるとの情報を他者から耳にしました。
「純粋に8万円ではない?ってことは月に数万円程度のアップ?じゃあ、420万円という数字なんて届くのか?・・・」という事で混乱しています。
自身 事業所を立ち上げ、年収420万円という数字は超えるのに大変な思いと大借金をして規模を拡大し、さらには別事業を立ち上げてやっとの数字です。休日なんてほぼ無しです。
そんな中、10年越えの介護福祉士が報われてよかったなーと思っていました。決して420万円が高い給料とは思いませんが、「おおおお うちの10年戦士も よし 420超えれるー」って喜べました。
本当に今までの加算込々で8万円なのか、少し確認作業していきます。
私個人は、今回の処遇改善加算は純粋に10年越えの介護福祉士に支給したいです。微妙なのは、生活相談員やケアマネージャーですが、ケアマネ事業所は3人態勢にして事業所加算を取りつつ給料はアップさせていきます。
デイのうちの10年戦士は、生活相談員から介護職復帰を望みましたので、私 生活相談員に復帰します。(笑)
長文失礼しました。
masa
がしました