今日は11時から大阪グランフロントのITフェアで介護事業におけるICTの実用化などについて、制度改正と合わせた講演を行う予定で、いつもより早い時間に記事更新している。

ということで本題・・・。

今年度の介護支援専門員の実務研修受講試験を受けた人の数が、昨年度より一気に6割強も少なくなり、37.5%にとどまっているそうである。

その理由について、今年度から受験要件が、法定資格を有する者などに厳格化され、介護福祉士の資格のない介護業務の実務経験だけで試験を受けられなくなった影響が出ているのだろうと論評されている。

このことを介護支援専門員のなり手がなくなることにつながる問題であると深刻に考えて論評している向きもある。

しかし僕はこのことに関しては、違う意見を持っている。

受験資格の見直しに絞っていえば、制度開始から18年を経た今、その制度によって誕生し、制度運営の中心的役割を担ってきた介護支援専門員の成り手は今のままでよいのかを真剣に考える時期に来ており、そのきっかけとなるのが受験資格の見直であると考えてもよいのではないかと思う。

そもそもソーシャルワークの1技術であるケアマネジメントについて、それに精通した人に与える資格であるにもかかわらず、そのベースになるソーシャルワークの基礎知識と援助技術を持たない者にも受験資格を与えてきたことがよかったのかどうかを検証しなおす時期である。

介護の実務経験のみで、介護支援専門員実務研修受講試験の受講資格を与えるという考え方は、この制度を創設する際の当初にはなかった。しかし法案が国会審議を通過した後、制度の具体的運用方法を組み立てる際に、制度あってサービスなしという状況を創らないために、介護支援専門員という資格者をある程度の数まで誕生させる必要性が叫ばれ、介護の実務のみの受験資格を認めたという経緯がある。

介護サービスの現物給付化の手段として、事前のケアプラン作成を要件としているにもかかわらず、そのプランを作成できる有資格者の数が利用者の数に追いつかないと、介護保険制度は絵に描いた餅となる恐れがあったために、急遽、介護実務のみの受験資格を認めたのである。

その結果、資格試験の受験ハードルはずいぶん下がり、そのおかげで介護支援専門員の数が足りずに、ケアプラン作成待ちの利用者が困惑するという事態は避けられたが、資格試験のハードルを下げたことでソーシャルワークの質の低下を招いたり、介護支援専門員個々の質の差が目立つなどという弊害もみられるのは事実だ。

さらに介護支援専門員という新たな資格ができたことが、夜勤を伴うハードな介護業務を避けて、その資格を目指そうとする新たな目標を創った反面、そのことで介護従事者の数の減少に拍車をかけるという面も見られたということも否めない。これは果たしてこの国の介護の現実を検証しなおしたときに、よいことだったのか、ゆがんだ方向ではなかったのかを、一度立ち止まって考えるべき時に来ている。

受験資格の見直しと、受験者の減少は、そのことを考えるきっかけになるとポジティブに評価してもよいのではないだろうか。

現在、居宅介護支援事業所も介護施設も、介護支援専門員が足りないという状況ではない。逆に介護支援専門員の資格を持ちながら、その実務に携わっていない人も多い。

介護施設であれば、介護支援専門員の資格を有した人が、介護支援専門員と介護職員を兼務している人も多いが、その実態は介護職員でありながら、何ケースかのケアプラン作成業務をこなすだけのケアプランナーに陥って、ソーシャルワークなど全く行っていない状況も見られる。こうした弊害についても洗いなおす作業が必要だ。

介護支援専門員の大量生産という時期に終わりが来たことが、個々の質の差を均等化するきっかけになるかもしれないし、待遇改善のきっかけになるかもしれないという面もあるのだから、ことさら受験者の数の低下を嘆く必要はないのではないだろうか。

受験資格や試験内容のハードルを上げて、実務者のスキルの向上を図るという考え方を否定する必要性は全くないといってよい。

それは意味のない更新制度や主任ケアマネ制度を漫然と続けるよりもよりましな方向であると思える。

そもそも今回の受験者数の減少を、受験資格の見直しの影響という一点から評価することは間違っている。法定資格者以外の受験者が昨年までの受験者の6割を占めていたなんて言う事実はないからだ。受験要件の見直しは受験者数減のきっかけに過ぎず、別の要因があることを知るべきである。

処遇改善加算の対象とならない介護支援専門員は、加算対象職種となっており、かつ夜勤手当などがつく介護職員より年収が低い例も多々ある。来年10月に支給されることが確実視されている新処遇改善加算の対象職種は、介護職員以外にも広がる可能性があるといっても、介護職員が配置されていない居宅介護支援事業所は対象外であるとされている。

一定件数を超えた生活援助が含まれる居宅サービス計画の届け出義務と、それをめぐる過度な行政介入を、ケアマネ公開処刑と揶揄する向きもある。

そんな中で、数十人の人生に深く介入するケアマジメントの業務の負担を考えたとき、介護支援専門員という仕事の将来を悲観する関係者も増えている。そのことが試験を受験しなければならない負担と相まって、受験者数の減少につながっているという認識が必要だ。

受験資格の見直しのみにターゲットを絞った受験者数減の議論は、笑止千万でしかない。

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