バイスティックの7原則の一つに、「非審判的態度」というものがある。その意味については、僕が過去に書いたブログを参照いただきたい。
対人援助におけるソーシャルワーカーの役割の中には、利用者と社会資源を有効に結び付けるという役割もあるが、その際に、利用者に成り代わってソーシャルワーカーが何事もすべて決定するわけではない。ソーシャルワーカーとしてしなければならないことは、利用者のニーズや課題を明らかにし、それらに対応する社会資源についての情報を利用者に正確に伝え、選択肢を示したうえで、自己決定を促すことである。
勿論、何らかの事情で自己決定能力に欠ける人に対しては、ソーシャルワーカーが代弁機能を発揮して、利用者に成り代わって物事を決定しなければならないが、その場合でも、ソーシャルワーカーの価値観の押し付けにならないように最大限の注意と配慮を行ったうえで、利用者の過去の生活習慣や、ものの考え方を思い起こしながら、利用者の望みを実現する方向で物事を決めなければならない。
どちらにしても、自己決定の制限対象者でない限り、利用者の意思を何よりも尊重しなければならないのである。
介護保険制度における介護支援専門員の役割も同じであり、居宅サービス計画にしても、施設サービス計画にしても、介護支援専門員の価値感の押し付けのような計画は最悪であり、利用者の意思をニーズを結び付けて考えなければならない。これができない人は、いずれAIにとってかわられるのかもしれない。
徹底的に利用者本位を貫いて、自己決定を支援すること・・・それは終末期の過ごし方の選択についても同様に言えることだ。
例えば経管栄養については、このブログでも何度か論評している。そこでは終末期を過ごす方々のQOLを下げるばかりではなく、意思疎通ができない状態で経験栄養によって命をつないで何年も生きている人のうち、気管切開している人などは、数時間おきに気管チューブから痰の吸引をするたびに、もがき苦しむ姿が存在しており、その人たちはまるで、もがき苦しむために延命されているように見えるなどという実態を指摘している。だからと言って経管栄養が「必要ないもの」とか、「悪者視」されてはならない。
経管栄養とは医療技術の一つに過ぎず、安楽な終末期に繋がる必要な胃婁増設という考え方も成り立つし、経管栄養によって延命したいという希望もあって当然である。
延命のために経管栄養にするかしないかは、治療にあたる医師が、本人の意思を無視して決めるべき問題でもないし、ましてや施設関係者などのサービス提供者が決める問題ではなく、対象となる本人の意思によって決めるものである。利用者自身が経管栄養を行うか否かを選択した後は、その判断が良かったのか、悪かったのかさえ審判する必要はなく、対象者の判断を尊重すべきである。
食事の経口摂取ができなくなった状態が治療によっても回復せず、高齢者自らが自分の生命を維持できなくなった状態であると判定されたとしても、それでもなおかつ生命維持のために経管栄養を行ってほしいという人がいた場合、その意志が何よりも尊重されなければならないし、その際に周囲の人々は、それがベストの選択であると利用者の決定事項を支持しなければならない。
このように終末期の利用者の選択に対する非審判的態度とは、単に審判しないだけではなく、積極的支持が求められるものだと思う。そうしないことには利用者自身や周囲の人々に不安を与えてしまうからである。
自らの価値観はともかくとして、自分が関わる利用者の決定事項については、決して疑わずに支持するということでしか、その利用者の尊厳を護ることにはならないということを理解しなければならない。
そんな風なことを含めて、終末期を過ごす人の支援方法を考える「看取り介護セミナー」が始まっている。第1回の札幌セミナーを終えたばかりであるが、少し期間をおいて年明けから仙台〜東京〜名古屋〜大阪〜岡山〜福岡と、残り6会場を回る予定である。
札幌会場の受講者からも、5時間という長丁場を感じさせない、内容の濃いセミナーであると評価をいただいている。看取り介護セミナーという文字に張り付いたリンク先から詳細を確認し、参加申し込みできるので、お近くの会場にぜひお越しいただけるようにご検討いただければ幸いである。
看取り介護セミナーではあるが、このセミナーは介護の質を向上させるために必要な具体策が満載されている。そういう意味で、介護サービスの品質向上を目指している介護事業経営者の方は、是非、ご自身並びに職員さんの派遣を検討していただきたい。
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