先週金曜日(10/5)に、飯田坂で行われた東社協主催のサービスマナー研修講師を務め、介護事業者におけるサービスマナーの必要性と、マナーを意識したサービス提供の方法論を講義してきた。

東京都社会福祉協議会が、サービスマナー研修を始めたのは介護保険制度が始まった当初からである。

その動機と理由は、措置制度という、「行政が決めた施設に入所させる仕組み」の中で、サービスを提供する側と、サービスを受ける側との間に明らかな上下関係が生じ、サービスを提供する職員には「お世話をしてあげる」という感覚が生まれ、サービスを受ける利用者には、「お世話をしていただいている」という感覚が生まれ、その結果人生の大先輩である高齢者に対して、幼児言葉での叱り、友達感覚での話し方が横行し、やがてそれが指示的・威圧的な口調につながって、虐待と見まごうような不適切な対応が目についたからであるとのことだ。

そのため武蔵野大学の岩本操准教授が講師を務めるサービスマナー研修を続け、同時に岩本准教授が執筆した「サービスマナー実践テキスト」などを発刊している。(参照:サービスマナーの実践は専門的行為である  ・ サービスマナーの軽視がもたらす人権侵害

僕も東京都社会福祉協議会さんからは何度か講師として招かれており、その中で「介護サービスの割れ窓理論」を提唱する立場から何度かお話をさせていただいていたところ、岩本准教授が僕の講演を聴いてくださる機会があり、その後のオフ会でもご一緒して、「今度是非一緒にサービスマナーについてのコラボ講演を行ないましょう」という話をしたのが一昨年のことであった。

そのことがきっかけで、今回岩本准教授の定例講座の露払い的な内容で、僕が講演を行なうことになったわけである。

ところで介護事業者を対象にしたサービスマナーの研修の難しいところは、対人援助サービスを利用する方々は、施しを受ける人ではないし、単なる利用者でもなく、「顧客」であるという説明から入らねばならないことだ。

介護関係者の中には、利用者が顧客であるという理解ができておらず、その定義に疑問を投げかける人さえいる。

しかし介護を職業として、そこで生活の糧を得ている限り、そのサービスを利用する人は間違いなく、「顧客=お客様」なのである。

そもそも「顧客」とは、自社の商品・サービスを販売する対象であり、すでに購入(あるいはサービス利用)してくれている顧客だけでなく、購入の可能性のある範囲までを含めてとらえる必要がある。そのことは他産業では常識とされているのに、介護関係者(医療関係者も同様だが)で、この意味を理解していない人が多すぎるのだ。

利用者は顧客ではないだろうと考えるオツムのレベルが疑われる人もいることが最大の問題だ。

顧客が「買う」と考え、「買う」決断し、「買う」行動をとり、「買う」ためのお金を支払うのだ。介護サービス事業も、サービスを利用してくれる人がいないと経営できないという常識が分かっていないのかと疑いたくなる。

サービスマナー研修は、保健・医療・福祉・介護分野以外の営利産業・サービス業でも行われる機会が多いが、そこでは「お客様に対して、ため口で接してはならない」と教えることはない。それはあり得ないのが常識だからだ。

ところが保健・医療・福祉・介護分野のサービスマネー研修では、そのことを教えなければならない。そこから始めなければならないくらい、礼儀という面ではレベルが低いのだ。

他産業では顧客に対してため口で接してよいかどうかなど議論にさえならないのに、保健・医療・福祉・介護分野ではいまだに、ため口で接することが「親しみやすさ」の表現であると勘違いしている輩が多すぎるのである。その結果、親しみやすい職員どころか、馴れ合いを日常とする無礼で失礼な対応に終始する職員を生んでいるのだ。

利用者は顧客であり、顧客に対しては好ましい言動の作法が必要不可欠で、なおかつ他の事業者より多くサービスを利用していただくためには、真のおもてなしの心が求められるというところから話を始めなければならない。そして丁寧語で会話しても「親しみ」は十分伝わるというを説明し、顧客にため口で接するのは礼儀を欠く失礼な行為でしかないところから話を始めなければならない。

この状態こそ現在の対人援助サービス、介護業界のサービスマナー意識のレベルの低さを表しているといっても過言ではないだろう。それはスキルの低さであるといっても過言ではない。なぜなら介護とは、コミュニケーションースキルが求められる職業なのだから、丁寧な言葉遣いで対応し、コミュニケーションを交わすことができないというのは、介護を職業とするプロフェッショナルとしての技術を持っていないという意味になるからだ。

この意識レベルの低さを変えて、ホスピタリティの基盤となる「サービスマナー」の確立を急がないと、介護という職業は、無意識に人の心を傷つけ、人の心を壊しながら、無礼を押し付ける状態がなくならないまま、安かろう悪かろうサービスとして存在し続けることになりかねないのである。
対人援助におけるサービスマナー確立の課題2に続く)

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