対人援助におけるサービスマナー確立の課題1より続く)
サービスマナーの基本は正しい言葉遣いである。お客様に対して適切な言葉遣いで対応することが、礼儀としてまずは求められるのである。そこからサービスは始まるのだ。

相手に不快感を与えず、かつお客様に好ましいと思ってもらえる言動の作法は、対人援助のプロとして持つべき最低限のスキルである。我々には介護のプロとしてコミュニケーション能力が問われることを自覚すべきだ。

しかしその基本ができていない介護事業者が多すぎるのだ。それもこれも「言葉遣い」をはじめとした、顧客に対応する正しいサービスマナー教育がされていないことが唯一無二の原因である。この部分の経営者の意識は低すぎるといってよい。今まではそのことは介護事業経営に影響がなかったのかもしれないが、今後は決してそうではないことを強調しておきたい。

社会情勢を鑑みると、事業者全体のサービスマナーの構築は経営に直結する問題であると気づかねばならない。

なぜなら財源事情から給付は制限されるとは言えど、介護保険サービス受給者が増え、給付費用は現在の10兆円から2028年には20兆円になるのだから、10年間で10兆円増加する給付費をターゲットにして、この業界に参入する企業は増えることになる。競争相手が今以上に増えるのだ。

しかし現在より顧客単価は抑えらる中で競争が激化するという意味は、その中で売り上げを伸ばそうとすれば顧客数をいかに伸ばしていくのかが経営戦略として最重要課題となるということだ。介護事業に参入事業者が増える中で、顧客確保競争が激化し、すべてのサービス種別において顧客確保に困らない売り手市場という状況ではなくなっていくのは必然の結果である。

そんな中で介護事業経営を続けていくためのは、他の事業者と差別化して顧客から選ばれていくことが最大の課題となることは間違いなく、顧客から選ばれるために、組織としてサービスマナーを確立し、それを基盤としてホスピタリティの精神を持つ職員を育成していくことは急務の課題である。

介護事業者におけるサービスマナーを確立するためには、組織全体でその啓蒙と教育に取り組んで、従業員の意識を改革せねばならない。本来のあるべき姿とは何かということに気づかせねばならない。そうであれば対人援助に携わる人間の美しさと、醜さの両方を気づかせねばならない。

介護事業者の若い職員が、自分の祖父母と同じくらいの年長者に、「〜だよ」・「〜でしょ」・「何やってるの」などと声をかけている姿は、端から見て決して微笑ましい姿ではなく、親しみやすさはみじんも感じられない。

その姿は無礼で不快で、醜い姿でしかない。若い人たちは自らのその醜い姿になぜ気が付かないのだろう。その恰好悪さになぜ気づかないのだろう。

介護事業者の中にも、先輩や同僚や後輩が顧客である利用者に、「ため口」で話しかける醜い姿を見て不快感を持っている人はいるはずだ。事業所内で従業員が人生の大先輩である利用者の方々にタメ口で話しかけている状態に問題意識を持つ職員も多いはずである。そうであるにもかかわらず、顧客に対する不適切な言葉遣いがなくならない一番の理由は、サービスマナーを個人の資質の問題として捉え、組織運営の問題と考えていないからである。

その状態を変えるために、組織全体で改革に取り組もうとする職場では、必ず抵抗勢力が頭をもたげるだろう。その中には、人手が不足してただでさえも忙しいのに、「言葉遣い」という些細なことに取り掛かっている暇はないなどというわけのわからない抵抗が生まれるかもしれない。

しかし顧客に対する言葉遣いは決して些細なことではないし、不適切な言葉遣いを放置しておく限り、礼儀やおもてなしの精神は生まれない。

そもそも言葉を丁寧にするということに、どれほど時間が削られるというのだろう。日常的に「丁寧語」で話しかける訓練のためには、それなりに時間は必要かもしれないが、その習慣を身に着けた瞬間から、言葉遣いや態度に気を付けることに時間は取られない。業務負担の増にはならないのである。

従業員に求めるものもたいして難しい内容ではない。別に言葉の達人になって、尊敬語と謙譲語、丁寧語と美化語を使いこなせと言っているわけではないのだ。最低限のお客様に対するマナーとして、「ため口」はやめて、お客様が不快になるリスクのない、「丁寧語」で会話しましょうということに過ぎない。

訓練の時間が必要だと書いたが、しかしサービスマナーの確立のために顧客である利用者の方々に「タメ口」で話しかけるのはやめようとすることに、どれだけの訓練を必要とするというのだろう。そんなものは注意された本人の自覚一つで、注意された瞬間から変えて実行できることだ。

それもできない従業員なら、対人援助のプロとして持つべき最低限のコミュニケーションスキルがないという意味だ。

そんな人間は介護事業に向かないと言わざるを得ない。さっさと退場いただこう。

そんな程度のこともできない輩は切るべきだ。介護事業経営者には、そのような覚悟も求められるのを忘れてはならない。
対人援助におけるサービスマナー確立の課題3に続く)

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