対人援助の場で、しばしば虐待事件が発生してマスメディアを賑わしている。
人によってはそのような虐待行為は、「氷山の一角」でしかなく、報道される以上に多くの虐待行為が行われ、介護事業者の多くが職員の虐待行為に目をつぶりながら、それを隠して事業経営しているのではないかと疑いの目を向ける人もいる。
しかし僕らはそんな氷山に乗ってはいないし、虐待とは無縁のサービス提供を行っている。だが一部とはいえ、虐待行為や不適切行為がなくならない現状は、そうした世間の疑いの目を生まざるを得ない状況といえるし、そのことは変えなければならない最大の問題といえる。
虐待と言わないまでも、介護事業における不適切対応はそこかしこにみられる。例えば自分より年上であり、介護事業からすれば「お客様」であるはずの利用者に、馴れ馴れしい無礼な言葉遣いをすることを恥じない従業者は数知れなく存在する。そのような素人対応をなくしていかないと、介護の仕事は体さえ丈夫なら誰でもできるスキルの必要ない仕事と思われ、いつまでも待遇は良くならない。
虐待や不適切行為は、サイコパスのように特別な性質によって引き起こされるものもあるし、人員不足の中で、向き・不向きのチェックが不十分であることが要因となって、介護の仕事に不向きな人物によって引き起こされる場合も考えられるが、多くの虐待は、行為を行っている本人さえ気が付かずに、感覚麻痺から不適切行為に及び、虐待へと発展するケースが多い。
また対人援助の場における従業者の横柄な態度、無礼な言葉遣いは、しばしば人権侵害につながる問題を引き起こしている。その時、「そんなつもりはなかった。」という言い訳は、人権侵害という結果をもたらした後では、なんの免罪符にもならないのである。
そうした行為が繰り返し行われる原因は、介護事業者において、接遇教育がほとんど行われていないからではないのだろうか。接客と接遇の違いさえ理解していない職員が多いという事実が、そのことを証明している。
そうした状態をいつまでも放置していると、今後の介護事業はますます劣悪なものになりかねない。なぜなら今よりずっと人材・人員不足が深刻化する中で、文化や習慣が異なる外国人も含めた多様な人員が介護事業に携わっていく中で、接遇教育をしないで業務だけをこなす状態は、日本で生まれ育ち、老いていった人々の気持ちを無視した対応にならざるを得ないからだ。そこには受容の精神のかけらも存在しなくなる。
そのような状態で行われる介護とは、行為を支援するのではなく、単に動作支援の業務に終わってしまう。介護ではなく単なる介助でしかないといえよう。
そうしないため、相手から誤解されない対応の基盤となるのが、「サービスマナー」である。
そのことをきちんと教育しなければならない。それも何かの講義の一部としてマナーも教えるのではなく、サービスマナーに特化した教育訓練が必要不可欠になってきている。そうしないことにはその重要性が理解されないからだ。
コミュニケーション技術は特に重要になるだろう。ため口が親しみやすい言葉ではないと学ばせる必要がある。なれなれしい言葉は、年上の人にとっては無礼な言葉にしか聴こえないことがあることを学ばせる必要がある。
そもそもサービスとは奉仕することであり、その性質は、いつでも・どこでも・誰にでも奉仕の心を持つことだ。それは相手を大切に思うことが基本となるものである。
マナーとは、行儀作法のことである。その性質は、人間が生きていくうえで、好ましい言動の作法ということになる。それは人に不快感を与えないことなのである。
ということは、サービスもマナーも、それは対人援助の基本ともいえるものだし、対人援助を「生活の糧」としているものにとっては、基盤としなければならないもので、サービスマナーを身に着けることはプロとしての基本姿勢であるとさえいえるのである。
接遇とは相手を心から想う態度や行動、言葉に乗せて、接客以上に愛のこもったおもてなしをすることである。接遇の「遇」の文字は「おもてなしの心」を意味し、それはホスピタリティの精神を介護受持者が持たねばならないという意味にも通じていく。
これからの介護事業は、顧客確保という面でも事業戦略が必要になる。接客のみならず接遇意識を持った事業者が勝ち組になっていくのである。
この間、大阪市老連の川西理事にお会いする機会があり、「大阪でもサービスマナー研修をしましょう。」と提案すると、即決でやりましょうと言われた。さすがに優れた介護経営者は、感性が鋭く、その必要性を感じ取ってくれるものだと感心した。おかげ様で年度内の来年2月に大阪でのサービスマナー研修の開催が決まった。現在の予定では来年2月14日の午後からサービスマナー研修in大阪を実施する予定になっている。
こんな風にして介護事業所の職員がサービスマナーを身に着けるための専門研修が、全国各地で行われるようになってほしい。すべての地域で介護事業者従業員向けサービスマナー研修を定例実施しないと、介護崩壊が現実しかねないほど、「世間の常識」が通用しないスキルの低い職員が増えているからだ。
研修企画に携わっている方々は、そのことをぜひ考えていただきたい。
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