生産労働人口が減り続けるわが国では、全産業において労働力の確保が最大の課題となる。
その中で若者が選ぶ仕事として決して人気があるとは言えない介護事業は、人材確保面ではさらに厳しい状況を迎えざるを得ない。
そのため介護事業経営は、顧客確保戦略を盛り込んだうえで、人員確保・育成システムを織り込んだ経営戦略を立てていかないと破綻するのは必然である。
だからといって人をかき集めさえすれば、その質は二の次かといえば決してそうではない。対人援助である介事業は、人の感情と向かい合う職業であり、その感情を害する質のサービスは、常に破綻の危機を抱えることになる。
特に昨今のスマートホンの普及は、誰でもどこでも簡単に動画撮影を行うことができる状況を生み出し、頻繁に報道される介護事業者による虐待・不適切サービスを耳にする人が、自分の親が受けている介護サービスの実態を知ろうとして、隠し撮りを行うことはごく自然な成り行きといってよい。
その時介護事業に従事する人々は、隠し撮りされることに憤りを感ずるのではなく、いつでもどこでも隠し撮りされた自分の姿を見られて恥ずかしくない仕事をすることに努めるべきである。隠し撮りのカメラに注意するのではなく、隠し撮りされても堂々とその姿を見てもらって恥ずかしくない介護サービスを実現することが、介護のプロといえる姿勢であり、矜持である。
また昨今の介護経営事情を見ると、顧客を確保できず事業経営が成り立たない事業者が増えつつある。介護給付費の単価アップが期待できない情勢では、顧客を増やして定員を増やしたり、ベットの稼働率を上げていかない限り、人材を定着させながら事業経営を続けることができる収益を挙げることはできないからだ。
虐待報道などの影響で、世間からより厳しい視線を受けざるを得ない社会情勢の中で、顧客確保につながるのは、施設設備などの表面上の豪華さではなく、実際の暮らしの質=高品質な介護サービスである。
そうであれば管理職のみならず、介護事業従事者のすべてが法令を正しく理解したうえで、それを遵守することはは当たり前であり、そんなものは顧客確保の要素にさえならないということ理解したうえで、その先のホスピタリティ意識を従業員全員が持つことが安定経営には不可欠となる。
そのためには、顧客満足を軸にした教育訓練の実施は不可欠である。介護サービス技術、福祉用具の利用方法、高齢者疾患に対する医学的知識、衛生管理、緊急時の対応、介護事故防止といった教育も重要であるが、それ以外に接客マナー、利用者の秘密保持、利用者とのコミュニケーションなどについての教育訓練が、介護事業経営の上では非常に重要となる
このようにホスピタリティの基礎となるサービスマナー研修を定期的に行っていない事業者は、それだけでも経営危機を内包しているといえるのだ。
各事業者は内部研修の中で定期的に「サービスマナー研修」を実施すべきである。
こうした研修を定期的に行っているのが、東京都社会福祉協議会である。同会では武蔵野大学の岩本先生の「高齢者福祉施設におけるサービスマナー研修会」を毎年定期的に行っているが、僕が唱える「介護サービスの割れ窓理論」もサービスマナーの基礎をなす理論であるとして、今年から僕も同会のサービスマナー研修の先駆けとなる研修講師を務めることになっている。
平成30年10月5日(金)13:00〜17:00、飯田橋レインボービル 7階で行われる、「介護施設のサービスマナー」という講演では、自身の体験例や理論、思いなどを含めてサービスマナーの重要性をお話しさせていただく予定である。
対象者は経験の浅い職員ということであるが、若いうち、経験の浅いうちにしっかりとしたマナーを身に着けないと、古いさび付いた無礼さで、人を傷つけることに鈍感になってしまうので、この研修は非常に重要となるだろう。
認知症の人に対する「タメ口」によって、行動・心理症状につながる事例も含めて、サービスマナーが意識されないサービスの貧困さを改めて理解していただけるようにしたいと思う。
こうしたサービスマナー研修は、本来であれば事業所職員全体で受講したほうが効果が上がるので、ぜひ各事業所でそうした研修を企画してほしい。その時に外部講師が必要なら、いつでも気軽に声をかけて相談してほしい。予算が限られている場合も、その予算に応じて日程調整するので、メール等でご連絡いただければ幸いである。
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