スマートフォンやタブレットが普及して、動画が簡単に撮影できる時代である。さらにインターネットは日常に欠かせないツールとなり、SNSを利用していない人が少数派になっている。そのため日常のさりげない映像や画像がSNSにアップされるようになった。

その中には介護施設の日常場面がアップされているものも珍しくはない。

介護施設などの利用者が、その中で楽しそうにしている映像・画像に心を癒されることもある。しかしそこに映る人にきちんと承諾をとって撮影したうえで、ネット配信の同意も得ているのだろうかと心配になることもある。どんなに素敵な笑顔でも、不特定多数の人が見ることができるネット画像として配信されることを好ましく思わない人もいるはずで、このあたりの配慮を常に忘れないでほしいと思う。

それとともに、良かれと思ってネット配信している映像が、世間の常識から乖離していると思われるものもあり、介護施設等の非常識さが見て取れるものもある。

先日、僕とフェイスブックでつながっている人の配信映像を見て、そのことを強く感じた。

今、各地で猛暑となっていることから、介護施設でも涼やかに過ごすためにいろいろな工夫がされている。そんな一場面がSNSを通じて映像配信されていた。

その映像とは、ある特養がお昼ご飯の時に、「流しソーメン」を行って、利用者の方がそれを食べているシーンである。そのこと自体は、被写体となっている方に同意をいただき撮影して配信しているとしたら何も問題ないだろうとは思う。

しかしわすか十数秒のその映像に僕は涼やかさを感じることはできず、不快感しか持つことができなかった。そして介護の現状がこれでいいのかと憤りさえ感じた。介護施設の非常識が、このような場面でも存在していると思わざるを得なかった。

その映像では、竹で作った本格的な流しソーメンのレーンに、「そうめん」を流し入れて、入所者と思しき女性がそれを食べる様子が写されていたのであるが、ソーメンが女性の前に流されてきたとき、画像に飛び込んできたのは、誰かの腕である。画面にいきなり出てきたその腕は、素手のまま流しソーメンのレーンに突っ込まれ、その素手でソーメンを掴んで流れを止め、女性利用者が箸でそれをすくって食べている。

僕がそこで感じたものは、涼やかさでもなく、ほのぼのとした気分でもなく、気分の悪さでしかなかった。

素手でソーメンを掴んだ人は、事前に手をよく洗って不潔な状態ではないのだろうと想像する。しかし自分が口にして食べるものを、素手で掴んで箸ですくわせている状態が普通の食事シーンとしてあり得るだろうか?ましてや素手でソーメンを掴んでいる人は、調理専門の人ではなく、自分以外の他の人の食事介助も同時に行っている人であったとしたらどうだろう。ソーメンをすくえない人の介助が必要であるならば、せめて素手ではなく箸を使って流れを止めるお手伝いをするくらいの配慮があってもよいだろう。

僕は決して潔癖症ではないが、素手でレーンに流れるそうめんを掴むことに涼やかさもさわやかさも感じないし、そんな流しソーメンを行う意味も分からない。

素手で麺を掴むくらいなら、流しソーメンなどせずに、最初から器に盛ってソーメンを出してくれと思う人がいても当たり前ではないだろうか。僕自身であれば、そんな流しソーメンは決して食いたくない。僕にはその場面は楽しそうに食わせてさえおけば何でもありみたいな映像に映って哀しい。

どちらにしても世間一般的に言えば、流しソーメンのシーンで、第3者が麺を素手でつかんで流れを止めるなどということを行なえば非難の的になる。それが介護施設では当然の介護として行われるとしたら、やはり、「介護の常識は世間の非常識」と言わざるを得ない。

フェイスブックでつながっている人は、匿名であっても、ある程度知り合いの関係の人である。しかしこの映像を放置して、その施設で似たようなことが繰り返されるのを見ないふりをしてよいということにはならないと思ったので、「世間の常識とは乖離している状態ではないか」ということをコメントとして書き込んだ。

その直後に、「気づきませんでした」として、その映像は削除されたのであるが、削除したからよいということではなく、その施設内で僕のような非難の声があったことについて話し合ってもらいたい。

職員すべてが、その状況がおかしいと気づく人になってもらいたい。

介護施設の中には、嫌だという思いを素直に訴えることができない人もいるのだ。それらの人々の代弁者になるのが我々の務めである。

代弁できる人とは、利用者の様々な思いに気づく人である。仮のそのことを利用者本人が不快に思わないとしても、自分や自分の親が同じことをされて、少しでも嫌な思いを持つのではないかと思われる行為ならば徹底的に行わないように配慮しなければならない。そうしなければ人権というものは簡単に奪われてしまうし、人の尊厳などなきものにされてしまうのである。

対人援助というのは、それほどデリケートなものだと考えてもらいたい。

そしてインベントや行事というものは、利用者のために行っているものであるというごく当たり前の視点に立ち返って、利用者目線からその在り方を考えてもらいたいものだ。

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