僕は今、松山市で介護事業者における「労務管理」のお話をしているところだ。

こうした労務管理論が建前論ではなく、実効性のある方法論とするためには、組織というものをどうとらえるかが大きな問題になり、この部分では実際に介護事業者の組織管理を行ったことのない人の空論では終わらない講義に努めている。それらの人には負けない理論を持っていると自負しているところである。特に介護施設の中で中心的な頭脳の役割を担う相談援助職を、どう有効に機能させるかという部分については、介護事業経営を行った経験がない、単なる介護経営コンサルタントには理解が及ばない部分があるように感じている。そのことを含めて、本日は管理職に向けた講義を行っているところである。

そもそも組織とは、共通目的・役割・調整機能を持つ人々の集まりのことを言い、組織の中で共同作業を行う人々の集まりをチームという。

「組織」は目標を達成する為にあり、色々な人が居てそれぞれの意見を出し合い、当てはめていくものであるが、そのためには組織の中にいくつかのチームを作り、チームそれぞれで共同作業を行いながら組織全体の目的を達していくことが組織の成長には有効とになる。そうであれるがゆえに、それぞれのチームを引っ張るリーダーの役割が非常に重要になることは言うまでもない。

なぜならば組織とは「役割分担」や「ルール」に従って動き、その組織の共通目的をすべての人が分業し合い、達成していくものであり、この役割分担があいまいな組織は目的を達成できないし、ルールを守ることができない組織は、秩序を保つことができず、内部から崩壊せざるを得ないからだ

そうであれば組織の中で役割分担を明確にする人が最重要人物とならざるを得ない。そういう意味では、職場としてのルールを計画にして、それを遵守させるリーダーの役割が重要になってくるし、業務分掌等で分担された役割を果たすことができるように、現場リーダーが個人個人を導くことは不可欠なリーダーの資質といえるのである。

ところで介護事業者の中で、医師や看護職員、介護職員というのは比較的、この役割が明確である。病気の診断や治療は医師の役割であるし、診療補助行為として医師の指示に基づいて看護を含めた医行為を実施するのは看護職員の役割である。利用者の暮らしを支える身体介護という役割を主に担うのは介護職員である。ここはほとんど疑問のさしはさむ余地がないところである。

ところが相談援助職というのは、それに比べて業務が不明瞭になりがちだ。相談援助といっても、介護事業所の中で四六時中利用者が相談を求めてくるわけではない。そうであれば、ずっと相談されるのを待っているのが相談援助職の役割ではないことは明白だし、そもそも相談という行為も、面接室で1対1で行う場面ばかりではなく、日常の何気ない場面で、何気ない会話の中で行われることもすべて含めての行為であるから、日常ケアに関する行為との区分が難しいということも言える。

それ以前に相談援助職には、直接的に利用者の相談に乗るという行為以外に、ソーシャルワーカーとして社会福祉援助が求められるが、どこまでがソーシャルワークで、どこからがケアワークであるかという境目は明確にされているわけではなく、そこにはグレーゾーンが存在するだけではなく、そもそもソーシャルワークとケアワークを、ごっちゃにして両者の区分が付かない形で、業務対応を求めている事業者も多いからだ。(参照:多職種連携とは何か。

ましてや介護保険制度以後、相談援助職として介護支援専門員という新たな職種が加わったことで、相談援助職の中で介護支援専門員と相談員の役割分担が不明瞭になっている職場が多くなっている。

両者を兼務させて、相談援助職というひとくくりの職種として、ソーシャルワーク全般を担う役割を求めていくことには、それなりに意味があるのだが、両者を兼務させずに、それぞれ専従配置させている介護施設も増えているが、その中で介護支援専門員と相談員の仕事の区分をする際の根拠は、法律に求めことはできない。

指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 では、「第十二条 指定介護老人福祉施設の管理者は、介護支援専門員に施設サービス計画の作成に関する業務を担当させるものとする。」・「4 計画担当介護支援専門員は、前項に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、入所者及びその家族に面接して行わなければならない。」と、介護支援専門員にしかできない業務を一部定めているが、相談員がしなければならない仕事で、相談員しか担うことができない仕事の定めなど、法律の規定には存在しないからだ。

ここをどう考えればよいだろうか。

僕はかつて、「施設ケアマネジャーは、相談援助職でありソーシャルワーカーですよ」という記事や、そのほかの記事のなかで、両者の兼務はきわめて合理的だと説明してきたが、相談援助の重要な役割が増えている今日、両者を兼務させて少ない人数で相談援助の仕事を回すことが不可能になりつつある現場で、両者配置を別にしてそれぞれ専従させたうえで、両者の業務分掌を明確化しようとすることは否定されるべきではない。

その時、介護支援専門員は、厚生省令第三十九号等で専任業務と定めている業務を中心に、ケアプランというツールで介護の品質を管理する役割を担うという重要な役割がある。看護師という資格のほかに専門看護師という資格が生まれたように、相談援助職の中でケアマネジメント技術をさらに高めた専門相談援助職員として、介護支援専門員を位置付ければよいだけの話だ。

では相談員が専従配置された場合、そこで担うべき一番重要な役割とは何だろうか。介護支援専門員との業務分掌は、どのように考えるべきであろうか。(明日に続く

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