労働組合「日本介護クラフトユニオン」(東京)が今年4月〜5月に実施した「ご利用者・ご家族からの ハラスメントに関するアンケート」の4月時点の速報値が出されたとき、「従業員を護るために事業者としてしなければならないこと」という記事を書いて論評したが、先ごろ正式な調査結果報告書が出された。(※張り付けているリンクは最新の最終報告書である。)

それによると介護職の74.2%が、高齢者やその家族からハラスメントを受けた経験があり、そのうち40.1%がセクハラに該当する行為を受けたとされている。

セクハラの内容は、「サービス提供上、不必要に個人的な接触をはかる」とか、「 性的冗談を繰り返したり、しつこく言う」という内容が上位を占めているが、利用者自身だけではなく、利用者の息子から体を触られたり、電話番号をしつこく聞かれたりするケースも報告されている。

これはもうヘルパー個人の資質とか、事業者責任だけで解決できる問題ではない。

リンクを張った資料とは別に、「ハラスメントの具体的内容」という資料も存在するが、そこではセクシャルハラスメントが187件、パワーハラスメントが300件、両者の混在したケースが149件報告されている。セクハラと報告されたケースの一部を引用すると下記のようになる。

・調理している間、隣の部屋から私の後姿を見ながら自慰行為をしていた。
・キスを迫られた。アダルト画像を見せられた。
・用意した食事をテーブルに配膳し台所に戻る際、抱き着かれベッドに倒された。突き放し振りほどき台所に逃げ離れて帰り支度を始めた時、 口止め料として3万を出して黙ってほしいと言われた。
・調理をしているとき後から抱き着かれ胸を触わられた。
・排泄介助中手を話せないことをいいことに胸や尻や股間を触られた。
・移乗の際、首筋にキスをされた。介護時、胸や太ももを触られた。
・子供をつくろうと言ってくる。


これらの行為は、認知症の利用者による行為とは限らず、正常な判断能力が保たれていると思われる要支援者や要介護者の人によっても行われている。

パワーハラスメントも具体例が掲載されているが、まさにヘルパーや介護職員を、奴隷と考えているかのような、それらの人々を非人間化するような暴力的発言が羅列されている。

この問題について表の掲示板で議論されたスレッドには、『役場に相談した際に「そこを何とかするのがプロだろう」と言われました。』というコメントもあるが、ヘルパーの人格を無視したハラスメントに至る人物に対して、介護事業者の専門性で対応できると考えるほうがどうかしている。

認知症の対応として、不適切な行為に対してどのように応ずるべきかということは、ヘルパーのみならず、計画担当者であるケアマネも含めたチーム全体で考えるべきだろうが、認知症だからといってすべての行為を許容することにはならず、現に自傷他害のある人については、それは専門的な治療対応が必要であり、介護サービスの対象ではないとしてサービス提供を拒否できることになっている。

そもそも介護の専門性に、エロ爺いのあしらいなど存在しないのである。

この調査結果報告書では介護従事者の心得として以下の5点が示されている。
*介護従事者が毅然とした態度をとれば大丈夫だと思う。
*はっきりと「そのような言動はやめてください」と全職員で足並みそろえて言 う。
*コミュニケーション能力を高める。
*サービス提供者の心得などの学習
*事業所内での情報共有


そのうえで、『国を挙げて、介護者の人権対策を! 事業者がスタッフを守ってください! 介護者の権利も、利用者の権利と同様に 守られるようにしてほしい! 』と訴えているが、それは至極まっとうな訴えである。

介護サービス従事者だから、その仕事の中で個人の尊厳や権利を奪われてよいことにはならないし、ましてや自らの身体や精神に危険の及ぶ行為を、「仕事だから我慢しろ」ということにはならないわけである。

契約の上で行われる介護サービスは、事業者と顧客双方の信頼関係を築きながら、お互いを信用し思いやりながら継続していくものである。個人の暮らしの場に介入し、利用者の人生に深く関与する介護という仕事であるからこそ、この信頼関係を何より大事にしなければならない。

モラルやルールをも守る姿勢は、事業者だけではなく、顧客の側にも求められて当然であると思う。

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