今週火曜日は、松山市で行われた愛媛県老人福祉施設協議会主催・第1回管理職員研修会の講師を務めてきた。
今朝その研修会のアンケートなどの反響についてのメールがお送られてきた。それは次のような内容であった。
『アンケートを確認したところ、参加者満足度が非常に高く、「もっと多くの方に聞いてもらいたい」との感想が寄せられていました。また、参加された方の感想が拡がり、参加したいとの問い合わせも続いております。』
ありがたいことである。この研修は第2回として8月22日(水)にも同じ内容で研修会が開催されるので、今週の研修に参加できなかった方は、ぜひその日に愛媛県総合福祉会館までお越しいただきたい。
この研修は介護事業経営のための労務管理などを中心にして、今後の介護事業経営に必要な視点などを、僕の経験と今後の見通しを基にして話をさせていただいているが、その中で介護経営リスクを減らすためには、経営者や管理者は労働法規等を正しく理解しておかねばならないと指摘している。
例えばつい先日国会審議を終えた「働き方改革」も新たな労働法規なので知っておく必要があるのは当然のことである。その内容は以下の通り集約できる。
1.時間外労働の上限規制
2.フレックスタイム制の改正
3.年次有給休暇の改正→年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、1年間で最低「5日」は会社が労働者に年次有給休暇を取得させる(「5日」については会社が時季指定権を持つ)、という制度が追加されている
4.特定高度専門業務・成果型労働制の新設
5.中小事業主に対する時間外割増賃金率の適用
このうち介護事業者に最も影響が大きなことは、3ではないかと思う。介護事業者においても年10日以上の年休が与えられている働き手が自主的に5日以上を消化しない場合、事業者が本人の希望をふまえて日程を決め、最低5日は有給休暇を消化させることが義務づけられる。これに違反した場合、従業員1人あたり最大30万円の罰金が科されるのである。
例えば被雇用者が有休をとることを拒否して、有休を消化しないということも許されなくなるわけだ。このルールは、2019年4月1日〜適用されるわけだから、もう1年を切っている。これに備えた業務体制の見直しが迫られる事業者もあると思える。
僕が過去に総合施設長を務めていた社会福祉法人の状況を思い起こすと、このことはあまり大きなハードルにはならないと考えていたが、当日の受講者の中には、この問題はかなり大きな問題で、従業者全員にこの義務を履行することはさらに人手不足感を助長すると考え、今から対策を練らねばといっておられる方もいた。
このことに関連して厚生労働省は7月18日、企業側が年休の消化日を指定したのに、従業員が従わずに働いた場合、有休を消化させたことにはならないとの見解を示している。その場合も事業者は法令違反を問われペナルティを課せられるわけである。そうであれば事業所側は、指定した日にきちんと休んでもらう手立てを講ずることも課題になりそうだ。
ただしこの5日の有休消化については、あらかじめ労使協定で、お盆や年末年始を従業員が年休を取る休業日と定めておく「計画年休制」を導入している場合、こうした計画年休の日数は、消化義務の5日間にカウントできるとの考えも示している。よってリフレッシュ休暇や夏季特別休暇などの制度を別に設定している事業者は、このルールに該当し、それを含めて5日以上休めておればよいと考えてよく、その制度を廃止して、有休をとるように変える必要はないと思える。
しかし有給休暇が取りやすいかどうかという職場環境は、人材が集まる一つの重要な要素である。
他産業、特にサービス業から転職して介護の仕事を始める人の中には、介護業界は人気がなくて人手不足であるといっても、なんだかんだ言っても夜勤の後は明け休みだし、その翌日は公休が取れる。有給休暇も消化できて、年間休日数がサービス業より多いという理由で転職してくる人もいる。
それだけサービス業は、休みがとりにくいともいえるわけだが、他産業からの転職者を広く受け入れて人材のすそ野を広げることは、介護人材確保にとって求められることである。そうであれば全産業に求められる有給取得率の向上の流れに対して、介護業界が遅れを取ってしまっては、この業界からの人材流出はさらに進んで、制度あってサービスなしという状況に陥りかねない。
介護事業経営者の方々には、そうした危機感をもってこの新制度に対応していただきたい。
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