介護事業経営者の最大の悩みは、言うまでもなく人材確保である。

優れた人材を確保することが、利用者確保にもつながるし、適切な労務管理につながり、そのことによって事業経営の安定化にもつながる。

しかし全産業を通じて人材確保が困難となっている中で、3Kイメージや待遇が悪いというイメージが払しょくできない介護業界に、なかなか優秀な人材は集まってこない。人材どころか人員さえも確保が難しくなっている。

しかしそれは施策の問題というよりも、我が国の人口構造の問題という根本的要因が存在しているし、これを外国人の介護業界への就労で解決しようとしたとしても、外国人は日本人と結婚でもしない限り定着しないので、人材・人員確保の解決策には結びつかない。(参照:人口減少社会の中で ・ 国の施策に頼ってばかりの人材対策は成功しない

そもそも外国人を労働力と考える政策は愚劣であり、労働力として求めても、そこにやってくるのは人であるということを忘れてはならない。文化や生活習慣の違いがある人を雇い入れるためには、事業者側にもその能力が求められるのだ。同じ日本人と適切な雇用関係を構築できない事業所で、外国人を安易に雇い入れて起こるトラブルは数知れなくなる恐れもある。

そんな中で、介護労働力の確保を『地域ぐるみで行おう』という取り組みがみられる。その取り組みを否定するつもりはないが、その取り組みによって地域の介護事業者のすべてで人材・人員が満たされると考えるのはどうかしているし、地域ぐるみでの人材確保の取り組みを行っておけば、行っていない地域より少しはましな状況になるだろうと考えるのも、甘いと言っておきたい。

現状で、どのような形でどんな取り組みを行ったとしても、地域ごとに人が集まる事業者と、人が集まらない事業者に分かれていくのは必然で、むしろ人の集まらない事業者が存在するからこそ、人が充足する事業者も存在するといえるのである。

つまり人材を集めるためには、他の事業者と差別化を図って、他の事業者にはいかない人を作らねばならないということになる。地域ぐるみの取り組みは、この差別化を阻害し、地域全体の介護事業者が人集めで、win winとなるのではなく、みんなが損をするzero-sum gameとなるのが必然である。

特に地域ぐるみで人材確保に取り組んでいる場合、そこでは地域ぐるみの活動に寄りかかって、そこに乗っかておりさえすれば何とかなるというハイエナ事業者を生み出して、それでもなおかつ人材確保が困難な理由を、施策のせいにして、他者との差別化を図る自助努力を失わせる傾向が生まれる。

地域で取り組んでなおかつ人が集まらない結果を、自助努力の足りなさではなく、どうしようもないという言い訳に置き換える事業者を生み出し、創意工夫する知恵を奪っていく。

そういう地域に人材も人員も集まらない。

必要とされるのは、他の事業者にはない人集めのノウハウを独自に生み出す創意工夫であり、それは事業者として個別に行わないと意味のないものになるのだ。そういう覚悟が、今後の介護事業経営には必要となる。

古い就業規則のルールに縛られて、発想を飛躍できない介護経営者に未来はないし、国や地域の取り組みに寄りかかる事業者にも明るい未来はない。

それが証拠に、いまだかって地域ぐるみで人材確保に成功した事例は存在していないのである。

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