今年度から介護保険と障害者福祉サービスに位置付けられた共生型サービスとは、介護保険サービスとしては短期入所生活介護と通所介護・訪問介護の3サービスである。

ところで施設サービスである特養は、居宅サービスとしての短期入所生活介護の指定を受けている施設がほとんどだ。また通所介護を併設している特養が一般的である。さらに訪問介護事業所を併設している特養も多い。

ということは新設された3つの共生型サービスのすべての指定を受けて、障害児・者と高齢者へのサービス提供を同時一体的に行う特養が誕生し、そうしたサービス形態が今後増えていくと考えてよいのだろう。

勿論、介護保険サービスを提供する特養の併設事業所が共生型サービスの指定を受けるのは、介護保険の共生型サービスではなく、障害福祉サービスの共生型サービスであり、訪問介護にあたる居宅介護、通所介護にあたる生活介護、短期入所介護にあたる短期入所サービスが、特養の併設事業所の中で提供されていくことになる。

しかも最近の特養の動向をみると、人手不足という状況の中で、子供を産んでも辞めなくてよい特養、子供を育てながら働くことができる特養というコンセプトにして、託児所や保育所を併設する特養が増えている。

つまり特養と併設されたスペースに、ごく日常的に幼児がいることも珍しくなくなっているということだ。そこではお母さんが働く場所である特養に、保育園に通う幼児が訪れて、母親だけではなく、特養利用者とコミュニケーションを交わすという姿が日常的にみられる。

当然そうした空間でも、特養や併設事業所、保育所などの空間区分は明確にされているわけであるが、そこに居る人々がコミュニケーションを交わしたり、交流機会が生まれたりすることは当然ある。報酬算定上の法令ルールの範囲であれば、むしろそうした機会は積極的につくられてよいわけである。

それはまさに子供と大人、健常者と障害者がごく日常的に集う地域共生社会であり、小さなコミュニティともいえる。

そういう場所で、幼児は障害児・者や高齢者とコミュニケーションを交わしながら、この社会がいろいろな人の存在によって成り立っており、すべての人間は存在そのものに価値があるという人間尊重の価値前提を持つことができる可能性がある。

そして特養という場所で、看取り介護を受けている人とも接触する中で、人の命の尊さやはかなさにも触れることができるかもしれない。それは人格形成上、決してデメリットのあることではなく、むしろ必要なことなのではないだろうか。

特養が持つ日常生活支援から看取り介護までの機能を最大限に生かしながら、そしてその機能に加えて併設施設や、保険外サービスの機能もそこに加えることで、特養は、「ゆりかごから看取り介護まで」というサービスを実現できる、新たなコミュニティとなり得ると思う。それは地域包括ケアシステムの中で、特養に求められる役割といえるのではないだろうか。

僕は来月8日(日)に、長崎県の五島市で講演を行う予定になっている。五島市は五島列島・福江島にある市である。そこでご招待いただいた社会福祉法人さんの20周年記念講演の中で、「地域における介護の未来のつくりかた」というテーマでお話しするが、その内容は主催者の方から次のように要望されている。

過疎化、少子高齢化が進む離島においてはあらゆる逆風が吹いています。そんななか夢を持ち続け、介護を充実させ、島を持続するアイデアなどをご披露いただければと考えています。』

この要望に応えるためには、まさに特養を拠点にした新たなコミュニティづくりが必要ではないかと考えた。そこでは僕が今まで実践してきた「看取り介護」のケースの中から、逝く人と残された人々の間に生まれる様々なエピソードとともに、そのことを語りたいと思い、今準備を進めている最中だ。

なお翌日の7/9(月)も同市の五島市福江総合保健福祉センターで、介護事業者向けの3時間講演を行う予定になっているので、同氏の関係者の皆様には、是非会場までお越しいただきたい。

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