厚労省の公式サイトに、「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」が5/21付でアップされた。

それによると、団塊の世代が全て75歳を超える2025年に必要となる介護職員の人数は244万6562人となり、2016年度実績である189万8760人との差は54万7802人であるとされ、「毎年6万人程度の人材を確保していかなければならない」としている。しかし近年の入職・離職の動向が大きく変わらず続いていった場合、2025年度の時点で210万9956人しか確保することができないために、需給ギャップは33万6606人となる。そのためにより深刻な人手不足を回避するのは難しいとしている。

そのため国は、人材のすそ野を広げる様々な対策をとってきており、その中には外国人を今まで以上に数多く受け入れる施策も含まれてはいるが、人手不足対策としての実効性は薄いと思われる。(参照:留学生の増加は人材難を救うか? ・ 介護技能実習生を配置職員とカウントする方針について ・ 外国人労働者が介護の人手不足対策の決め手になるのか?

そうであるがゆえに、人に替わることができる介護ロボット等の導入が必要不可欠と考える人も増えている。しかし今現在、人と同じように介護ができるロボットは存在していない。近い将来、この問題が克服され、人に替わる介護ロボットが介護サービスの場で使われるようになるだろうか。

僕自身は、人に替わる介護ロボットを一日も早く開発してほしいと思っている。なぜなら日本の人口動態や経済状況から考えると、どのような施策をとろうとも、介護業界の人手不足の解消は不可能で、このままなら人員を確保できないことが理由で事業を続けられない介護事業者がたくさん出てくるし、そのために必要な介護を受けることできない、「介護難民」が大量に生まれることは確実だからだ。

しかしそのことが実現するのかどうかは疑わしい。人と同じ働きができる介護ロボットは、おそらく車の自動運転よりも開発が困難と思われる。

例えば先般の介護報酬改定では当初、「介護ロボット導入加算」が議論された。(参照:加算の考え方がおかしくないか?)しかし実際に単純労働を人に替わって担える介護ロボットが存在しないことがわかり、この加算は見送りとなった。

移乗介助に有効であるとされる、「装着ロボット」は、物を持ち上げるときの筋力を最大25キロ分補助するそうである。このため介護業界以外では、装着ロボットが日常的につかわれている場面がある。例えば羽田空港のバスターミナルでは、外国人客が大きなスーツケースを持って、リムジンバスに乗り込んでいるが、そこでバス会社の職員は、普通に腰に装着ロボットをつけてバスの荷物入れに荷物を出し入れする仕事をしている。重いものを持つ仕事には普通に装着ロボットが役立っているわけだ。

しかしその装着ロボットが、介護の現場に普及していないのには理由がある。

脱着に数十秒かかることや、重量があって装着者に負担がかかること、使用には空気を入れる必要があるなどの手間がかかり、急な呼び出し時に対応しづらいなどの制約があることも指摘されている。そもそも力が必要な行為と力より巧緻性が求められる複数の行為を並行してこなさなければならない介護とのミスマッチがあるのが最大のネックである。特に腰に装着するタイプの場合、腰を横にひねるという動作に支障を来すことが問題だ。上下の動きはできても、ひねりが困難になることで、人の移乗行為支援動作が難しくなるのだ。これは荷物を持ち上げて運ぶ動作との一番の違いとなる。ここが人相手の行為の難しさである。

この問題を克服する術はあるのだろうか。

しかしロボットをうまく介護の現場に導入して、人手をかけなくてよい部分を増やさないと、この国の介護は限界点に達してつぶれざるを得ない。そんな心配が現実になりつつある。

本来、「介護ロボット導入加算」という考えは外道であり、導入費用は補助金として支給されるべきではあるが、その外道の加算さえも導入できなかった現実は、介護の未来を暗いものにしかねない。

人に替わる介護ロボットはできないのかもしれないが、せめて介護サービスの場の省力化が実現できる介護ロボットの開発を急いでもらいたい。 

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