今年度の報酬改定で見送られた居宅介護支援費の利用者自己負担導入について、すでに3年後の報酬改定でもその議論が再燃することが明らかになっている。
このことについて僕は、過去のブログ記事でも再三、反対の声を挙げている。
それは、自己負担導入がケアマネジメントの質の向上につながらないだけではなく、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、利用者のニーズに沿わない「表明された希望」にのみ従う、「御用聞き」状態を助長するというのが、その主な理由である。
どこぞの大学教授か何か知らないが、学者がそのことに一点の理があるようなことを言っているが、それは現場を知らないボケ論理でしかない。
居宅介護支援費の利用者自己負担導入とは、ケアマネジメントが正当に機能しなことにつながる由々しき問題であるのだ。
そのこととは別にこの問題を、居宅介護支援事業所の経営的な視点から考えてくると、利用者自己負担の導入は、居宅介護支援事業所の収益を悪化させる要因にもなるということを、「居宅介護支援費への自己負担導入は、介護支援専門員の職が奪われるという意味でもあるんだぜ」という記事で解説している。
セルフプランの作成を無料で支援して、その見返りに自分の所属法人のサービスに利用者を囲い込もうという事業者は確実に存在するし、自己負担導入が実現したら、そうした事業者は増えるだろう。
そこではケアマネジメントの質など存在さえしなくなる。リンク先を張り付けた記事で指摘しているが、このことは合法的に行われてしまうので、行政指導が及ばない問題となり、事実上野放しで行われる。そのことだけでも大問題だ。
それに加えて、国保連への請求だけではなく、利用者への請求という業務が増える負担も、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が負わねばならない。しかしこの業務は単に費用を請求して支払いを受けるにとどまらず、支払いが滞る人に対する催促などの様々な手間が付随することになる。そうであっても一定割合の未収金は必ず生ずることは、現行の居宅サービス事業者や介護施設の利用者負担の滞納率を見れば明らかだ。この問題の責任(未収金の集金等)も担当介護支援専門員が負うことになる。
つまり居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、居宅サービス計画を作成し、給付管理をしながら利用者支援を行うだけではなく、利用者自己負担分の請求と受領に関する一連の業務負担が増える中で、顧客減と一定割合の利用者負担分の滞納という収益減リスクにさらされることになる。これによって業務が増えて給料が減る介護支援専門員が多くなるかもしれない。
そもそも現在でさえも、忙しい業務に追われているのに、そのような業務負担と受領責任を負うことを良しとするのだろうか。
有能な介護支援員の方々が、プライベートの時間であっても、常に利用者のことを頭の片隅で考えながら、日々の支援行為に当たっている姿を見るにつけて、そのような状態に居宅介護支援事業所の介護支援専門員を置きたくないというのが、僕の反対理由の一つにもなっている。
居宅介護支援事業の中で、介護支援専門員の方々が、その能力をより発揮できるための働きやすい環境をつくり、その能力がより発揮できるようにすることが、国民の福祉の向上や地域包括ケアシステムの深化には、より重要なことではないのだろうか。
それほど介護支援専門員という有資格者は、この国の福祉の底辺を引き上げ、この国の福祉の質を支える重要な役割を担っているのである。
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本当は素晴らしいお仕事なのにいつ頃からか、おかしくなってきてます。