誤解されがちな共生型サービスは、居宅介護支援基準改正とリンクしているから続く)
介護保険制度と障害者福祉サービス制度に共生型サービスが位置付けられた意味は何だろうか。

介護保険事業者からすれば、今後経営体質の強化を求められる状況で、高齢者福祉サービスだけではなく、障害児・者のサービス分野に参入し、事業拡大を図っていく第一歩になるという意味もあるかもしれない。

しかし共生型サービス誕生のもともとの意味は、障害児・者の方々の福祉援助の継続性を見据えたものであることは言うまでもない。

障害児・者の方々は、 障害福祉サービスとしての・居宅介護、重度訪問介護・生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)・短期入所・児童発達支援、放課後等デイサービスを継続利用している人が多いわけである。それらの方々が65歳に達するなどで、介護保険の被保険者となった場合、サービスの適用関係によって、原則介護保険サービス利用に移行しなければならない。つまりその時点で、障害福祉サービス相当のサービスが介護保険サービスとして存在しておれば、それまで利用していた 障害福祉サービスが利用できなくなるわけである。

しかし共生型サービスが誕生したことで、 障害福祉サービス事業所が、介護保険制度における、障害福祉サービスとの相当サービスの指定を受けることで、障害児・者の方々は介護保険の被保険者になった以後も、利用事業所を変えることなく、継続して介護保険サービスを利用できるわけである。

障害児・者の方々にとって、このことは介護保険の被保険者になった以降も、自分が信頼できるなじみの職員に継続して支援を受けることができるという意味にもなり、求められていたことでもある。

確かに昨年度までにおいても、介護保険と障害福祉サービスの指定を別々に受ければ、同じ事業所によって両者のサービスが提供できる仕組みはあったが、両者の基準が異なっており、その壁は高かったと言え、今回の改正により、その壁をなくし、なおかつ高齢者の方と障害児・者の方が同一事業所内で同時一体的にサービスを利用できることにもなったわけであり、その違いは大きいと言える。

今回は介護保険制度における訪問介護と通所介護、短期入所生活介護において、このことが実現するわけだが、今後を見据えると共生型サービスは、他の分野にも拡大する可能性が高い。

ところで共生型サービスによって、障害児・者の方々が、介護保険の被保険者になった以降も、それ以前に利用していたサービス事業所で、継続してサービス利用できるケースが増えたとしても、それまでと全く同じようにサービスが受けられることにはならない。

介護保険サービス利用に移行した場合、サービスを現物給付化するためには居宅サービス計画の作成が必要になり、自己作成以外では、居宅介護支援事業所の介護支援専門員にその作成を依頼する必要がある。これは障害児・者の方々にとっては、自分の日常支援の「主担当者」が変わることを意味している。
(※居宅サービス計画がない場合は、サービスは現物給付化されずに、償還払いで利用することになる。)

障害者福祉サービスを利用する場合、一部サービスを除いて「相談支援専門員」による相談支援やサービス利用計画の作成が必要とされている。つまり障害福祉サービス利用者には、相談支援専門員という担当者がいる場合が多いわけである。その担当者が介護保険サービス利用に移行した後は、居宅介護支援事業所の介護支援専門員に替わるケースが多くなる。

当然のことながらその時に、新たに担当者となるケアマネと、それまで担当していた相談支援専門員との連携が求められるわけである。そのため今回、障害福祉サービスを利用してきた障害者が介護保険サービスを利用する場合等における、ケアマネジャーと障害福祉制度の相談支援専門員との密接な連携を促進するため、指定居宅介護支援事業者が特定相談支援事業者との連携に努める必要がある旨を明確にする省令改正が行われたわけである。居宅介護支援事業所の介護支援専門員は、この省令改正の意味を理解しているだろうか?

障害福祉サービスと介護保険サービスでは費用負担形態が異なることも大きな問題である。

住民税非課税世帯などに属する障害児・者の方々の、障害福祉サービス利用に関わる負担はゼロであるが、介護保険サービスに移行した時点で、原則1割負担に移行するために、利用者の方々にとっては、いきなり利用者負担が発生して、経済的に困窮する可能性があるのだ。そのためにサービス利用も抑制してしまうかもしれない。

そのために新たに担当者となるケアマネジャーは、費用負担の丁寧な説明が求められるだけではなく、障害福祉分野の費用負担減免制度も知っておかねばならない。例えば障害福祉サービスには、「高額障害福祉サービス等給付」がある。これは世帯における利用者負担額の合計が大きくなり、一定の基準額(月額負担上限額)を超える場合、申請を行うと世帯のサービス利用料(利用者負担額)の合計と基準額との差額が支給(償還)される制度であり、障害福祉サービスと介護保険サービスの併用の場合も該当する。(※障害福祉サービスのうち、居宅介護(=訪問介護)、生活介護(=通所介護)、短期入所を60歳〜65歳になるまで継続して利用している場合、介護保険に移行すると自己負担分は、障害福祉から償還払いされる。)

しかしそれはあくまで申請による償還払いであり、担当者がその制度を知らずに、申請がされない場合、償還も受けられないので注意が必要だ。

将来的には、介護保険制度と障害福祉サービスは、より密接の関わってくることも視野に入れて、今後、介護支援専門員は、障害福祉サービスの勉強もしていく必要があるだろう。

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