今朝4月20日の北海道新聞朝刊一面には、「2025年の道内 高齢者172万人」の大見出しが付けられ、「介護の担い手確保 助手養成拡大も」という文字が躍っている。

道内の要介護者数と介護職員数記事要点を抜粋すると、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年に、道内の65歳以上の高齢者が172万人を超え、要介護者数等と介護職員の需要数が右図のようになる。

必要な介護職員の需要数は11万7千人であるにもかかわらず、その確保の見込みは立っていないことから、道は介護福祉士らを人材派遣会社を通じ施設へ派遣する事業や、高齢者や主婦を「介護助手」として養成する事業を拡大する。児童生徒に将来、介護の仕事を選んでもらえるよう、小中学校などで3年間で計6千人に介護体験講座を開く。

さらに要支援・要介護者を減らすため、リハビリ専門職が指導する体操教室を、本年度は全道5カ所で新設し、介護予防に力を入れるとしている。

果たしてこの対策が人材確保策として有効なものといえるだろうか。

介護予防に力を入れることは当たり前のことで、実効性のある具体策に取り組む必要はあるだろう。しかし問題になるのはその具体策で、アリバイ作りの介護予防策では意味がないことに意が及ばないと意味がないものとなる。この点はこの記事からは見えてこない。

小中学生に介護の仕事を選んでもらうための体験講座も大事なことだ。しかし体験した子供たちが将来職業を選ぶ段階で、介護の仕事には将来がないと思うような給与体系では何の意味もないわけだが、道の対策はこの部分に相反する対策が含まれている。

例えば、『高齢者や主婦を「介護助手」として養成する事業を拡大する。』という部分であるが、これが訪問介護の生活援助を中心としたサービスの担い手を育成するために今年度に創設された9科目59時間の新研修を指すのか、それ以外の道の独自研修を指すのかは不明瞭だが、どちらにしても介護助手とは、介護事業者の主力となる介護職員ではなく、周辺作業を担う人材確保策にしか過ぎない。それはおそらく老後の小遣い稼ぎ程度の収入しか得られない仕事でしかなくなるだろう。

しかしそうした介護助手が増えたとして、介護サービスの必要な人材確保につながるかといえば首をかしげざるを得ない。僕が特養の総合施設長を務めていた際には、人材確保策として多様な雇用形態・勤務形態を認めていたが、夜勤や主たる身体介護を行わない職員をいくら増やしても、現場の職員から歓迎されることはなかった。業務の省力化にはつながらず、そういう職員を10人雇うより、夜勤もできて、主介護業務がきちんとできる職員を一人採用するほうが歓迎された。

2025年以降は後期高齢者が増え、重度の要介護者に対応しなければならない場面も増えるのだから、主たる介護の周辺業務(生活援助等)しか行えない人をいくら増やしても、「焼け石に水」にしかならないだろう。しかもそれは、介護労働の低賃金化に拍車をかけるものだ。

それよりもさらに愚劣なのは、「介護福祉士らを人材派遣会社を通じ施設へ派遣する事業」である。派遣会社を通じて介護現場で働く職員が増えるという意味は。、派遣会社が、本来介護職員に手渡すべき人件費の一部を、中間マージンとして搾取するという意味である。

介護職員処遇改善加算の活用などの効果で、介護職員の平均年収は上がってきてはいるが、他産業の平均年収ベースとはまだ差がある。その一番の原因は、フランチャイズ・コンサルタント・派遣会社などに支払う費用が増加して、介護サービス事業者の従業者に支払うべき給与の一部が、そこに回ってしまっているからである。

本来介護事業にフランチャイズ展開はそぐわないし、きちんと経営能力のある経営者がトップに居れば、経営コンサルタントに頼る必要はない。それにも増して愚劣なのは、職員確保を中間マージンを搾取する派遣会社に頼ることだ。

道の示した人材確保策は、介護助手という低い収入しか得られず、かつ介護人材確保にもつながらない人員を増やすことと、派遣会社を通じて介護事業者が雇用する人材を増やすということであり、これは中間マージンという搾取により、介護職員全体の給与を含めた待遇が、現在より低下させるものだ。これは「介護労働は社会の底辺」と揶揄される状況につながりかねない。

道に求められているのは、派遣会社を通じて職員を確保させることではなく、なぜ派遣会社が人材を確保できるのに、介護事業者が直接雇用できないかを検証して、その原因を明らかにするとともに、派遣職員ではなく、介護事業者が直接雇用する職員を増やすことができる施策をとることだ。その一部には、現在派遣社員として働いている人を、直接雇用に変えるための助成事業が含まれてよいはずだ。

ちなみに、派遣職員を切って社会福祉法人の人材不足を乗り越えた経験をお持ちの、社会福祉法人愛隣会 特別養護老人ホーム駒場苑 施設長 ・中村 浩士 氏と僕がコラボする講演会が、5/25(金)10:25〜エッサム神田ホール1号館 で行われる。「介護事業&社会福祉法人 経営戦略セミナー 生き残る介護 伸びる介護」では、中村氏の貴重な体験談を聴くことができる。

僕も当日、「変わる介護。社会福祉法人の生き残り戦略」というテーマで講演を行うので、当日は是非会場までお越しいただきたい。

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