今年度からの介護報酬改定議論の中で、「混合介護」が話題になったことを知らない人はいないだろう。

混合介護とは、介護保険サービスと介護保険外のサービスを組み合わせて利用する形態のことを言い、例えば保険給付対象である訪問介護の中で、保険給付対象とはなっていない要介護ではない家族への家事援助サービスなどを、同時一体的に提供する方法等が議論された。

通所介護でも、保険給付の対象外である買い物支援などを、通所介護と一体化して行う方法も議論されたところである。

このように介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせ、効率的にサービスを提供することで生産性が上がり、それは介護事業者の収益アップにつながるとされた。

その背景には給付抑制策があることは言うまでもない。今後高齢者の数が増えることを考えたときに、介護保険サービスのための国と国民の負担の自然増を抑えるためには、給付費用の圧縮・削減が不可欠であるということがある。しかしその時に、収益が減って事業運営ができない事業者が介護保険サービスから撤退してしまえば、制度あってサービスなしという状態に陥るために、保険収入以外の収益確保の方法として保険外サービスを組み合わせる方法が考えられたわけである。

しかしそれは、財源に限りがあるという理由で保険給付サービスをどんどん削るための方便に、混合介護が使われかねないという危険性を孕んだ考え方でもある。

また人手不足の折、保険サービスと保険外サービスを組み合わせることは、介護サービスの効率化が図られ、介護職員の仕事も効率化でき、携わる職員の給与アップも期待できるとされた。

しかし保険給付サービスと保険外サービスを組み合わせてサービス提供することは、そもそも介護する職員の労働量を増やすものだから、仕事が楽になるという意味ではないし、保険外サービスからの収益が期待できる分、保険給付サービスが削られてしまえば、結局、担当する介護職員等の給与アップにつながらないという恐れもある。

そのため確実に事業者が収益を得ようとすれば、できるだけ大きな収入につながる保険外サービスの費用負担が可能な利用者を選別して、保険外費用負担ができない利用者の切り捨てが行われる危険性も指摘された。そのためこの議論は先送りされた経緯がある。(参照:先送りされた混合介護)つまり混合介護は、高所得者ばかりが恩恵を受ける不平等につながりかねないという懸念が払しょくできなかったのである。

このことに関して厚生労働省は4月13日、ルールの明確化に向けて策定・発出する予定の通知の概要を明らかにしたが、その報道を読んでひっくり返ってしまった。

例えば通所介護における混合介護については、外出の同行支援や買い物の代行、物販、レンタルサービスなどの保険外サービスを提供することを明確に認めていくとしている。

この際、通所介護をいったん中断する形をとり、保険外サービスの時間を通所介護の時間に含めないことを前提とするとしている。通所介護を中断したうえで明確に区分して提供できる保険外サービスのメニューとして、緊急時の併設医療機関への受診、理美容、巡回健診、予防接種、物販、移動販売、レンタルサービス、買い物代行サービス、個別の同行支援などが挙げられている。

ということは保険外サービスを実施することで、サービス提供時間が減って、算定単位が減る可能性が高くなるということではないのか。その際に保険外サービス部分を外部の事業者に担ってもらうのであれば、通所介護事業者の収益は上がらないだけではなく減ることになる。保険外サービス部分を通所介護事業者が行うとしたら、それはサービス提供時間に含まないサービスということで、これに関わる職員は配置職員から外れてしまう可能性が高い。その時間帯にも通所介護サービスは行っている場合が多いのだから、その配置に支障を来さないのかを考えたとき、この形態の混合介護は、コストパフォーマンスが低いもののならざるを得ないのではないか。

訪問介護はさらにひどい。同居する家族の分の調理や洗濯をセットで済ませるなど、訪問介護と保険外サービスを同時かつ一体的に提供する形については、「提供不可である旨を明示する」としているからだ。

そのうえで、保険内・外を明確に区分し、文書として記録が必要とされ、あらかじめサービス内容などを説明し、同意を得ることを求めている。さらに利用者の認知機能が低下している恐れがあることを踏まえ、利用者の状況に応じ、両サービスの区分を理解しやすくなるような配慮を行うとしているが、その内容が驚きである。例示されている方法は、エプロンの付け替え、スタッフの変更、いったん家の外に出るなどというものだ。あまりにも形式的で、このようなことで両者の区分をつけることに意味があるのかと思う。

そもそも保険サービスと保険外サービスを同時一体的にしないのであれば、これは混合介護とは言えず、時間も区分しているのであれば、現在でも指定訪問介護事業者が保険外サービスを提供している方法と何ら変わりはなく、新しいサービス形態とは言えないのではないか。

どちらにしても使い勝手の悪いサービス形態であり、コストパフォーマンスも期待できないサービスといえるのではないか。

しかも混合介護の提供ルールの中には、「保険外サービスの情報をケアプランに記載する」ことが含まれてくる。担当ケアマネの仕事量は確実に増えるが、このことで居宅介護支援事業所の収入が増えるわけではない。対価の伴わないケアマネの業務負担増となるという意味だ。

混合介護の軸が、変な方向にずれてしまったような気がするのは僕だけだろうか。少なくとも事業者が求める混合介護とは、大きくずれがあるような気がしてならない。

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