指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)の改正により、基準第13条第18号の2において、『介護支援専門員は、居宅サービス計画に厚生労働大臣が定める回数以上の訪問介護(厚生労働大臣が定めるものに限る。)を位置付ける場合に、当該居宅サービス計画を市町村に届け出ることとされている。』とされたことで、本年10月以降、居宅サービス計画に位置付ける訪問介護における生活援助中心型サービスについては、一定回数を超えた場合に、市町村に届け出が必要とされることになった。
そのうえで市町村は、地域ケア会議等でその計画が適正なものであるかチェックを行い、過剰サービスと認定すれば当該計画の作成者に是正勧告等を行うことになる。
届け出が必要な生活援助中心型サービスの回数は、直近の1年間(平成28年10月〜平成29年9月分)の給付実績(全国)を基に、各月における要介護度別の「全国平均利用回数+2標準偏差(2SD)」の回数を算出した上で、要介護度別に最大値となる月の回数を用いることとし、要介護状態区分に応じてそれぞれ1月あたり以下の回数とする案が示されている。(出典:厚生労働大臣が定める回数及び訪問介護(仮称)に関する意見募集について)
・要介護1 27回
・要介護2 34回
・要介護3 43回
・要介護4 38回
・要介護5 31回
僕は今、様々な地域からの招待を受けて、介護保険施度改正や報酬改定に関する講演を行っている。それらの中には、介護支援専門員の団体向けの研修も含まれている。その際に、この届出とケアプランチェックについては、届け出なければならない居宅サービス計画を作成することを躊躇(ちゅうちょ)しないでくださいと言っている。
国が言う基準回数を超える生活援助中心型サービスを、居宅サービス計画に組み入れることは少しも恥ずかしいことではない。その計画回数に根拠さえあれば良いのだから、きちんとアセスメントした結果として、その必要性を説明できれば何の問題にもならない。
むしろこうしたルールができたことで、その届け出を嫌って、生活援助中心型サービスの回数が基準回数に達しないようにするということありきで計画されることによって、利用者ニーズに対応できなくなることの方が問題だ。
要介護3の方で、生活援助中心型サービスが月43回を超える利用が必要な人はたくさんおられる。必要性を一つ一つ積み上げていけば、国の示す基準回数を超えてしまう人は数多くいるわけである。そのことを計画担当介護支援専門員が、地域ケア会議などに参加して、市町村の担当者等にちきちんと説明できれば良いだけの話だ。
勿論、市町村の担当者等にもいろいろな資質の人がいて、届け出られたプランはすべて過剰なサービスだと思い込んでいる人もいないとも限らないので、ここの部分では介護支援専門員のソーシャルワーカーとしての「説明能力」・「交渉力」が問われてくることは言うまでもない。
この届出ルールは、必然的に市町村のケアプランチェック機能の強化につながっていくわけであるが、きちんとしたアセスメントに基づいた、根拠のある居宅サービス計画を作成している介護支援専門員にとってそれは何ら業務に支障となるものではなく、むしろ自分の立案した居宅サービス計画の根拠や意味を説明できる機会を得るという意味で、行政職員とのコミュニケーション機会の場が増えるなかで、より密接な関係性を創りあげることができるとともに、自らのスキルアップにもつながるとして、ポジティブに考えてほしい。ルールができてしまったんだから、ここはネガティブに考え続けても仕方がないわけである。
しかし一方で、このルールを橋頭保にして、次の報酬改定時に、さらに居宅サービス計画の縛りをきつくしようという動きも垣間見える。

この表は、財政制度分科会(平成30年4月11日開催)資料84頁のものである。
これを読み込んで理解できることは、財務省は今回、訪問介護の生活援助を多く位置付けたプランの市町村への届け出が新たに義務化されたことに言及しながら、基準回数について訪問介護の生活援助中心型サービスに限らず、他のサービスにも広げて設定し、市町村がチェックできる居宅サービス計画の範囲を広げようとしているということだ。
その考えを来月にもまとめる政府への提言(建議)に盛り込む方針も示している。
財務省がそこで主張していることは、介護サービスの過剰な提供を防ぐ観点から、ケアプランの標準的な内容を作成・設定すべきというもので、標準化した居宅サービス計画を具体的に示すべきであるというものでもある。AIを使った居宅サービス計画の自動作成も、これにより一段と現実化するかもしれない。
しかしひとりひとり異なる生活環境とパーソナリティのを持つ要介護者のプランが本当に標準化できるのだろうか。僕はその標準化が進む先に明るい未来は見いだせない。
金太郎飴のような画一的計画によって、過度に抑制されたサービスしか利用できない要介護者の方々が、社会保障の光の当たらない部分で、文化的とは程遠い最低限の暮らしに甘んじる社会にしないためにも、居宅介護支援事業所の介護支援専門員の皆さんは、次期報酬改定に向けて、自らの作成する居宅サービス計画の根拠を、誰に聞かれてもきちんと説明できるスキルを確立せねばならない。
自社の利益誘導に終始した画一的サービス計画は、いずれAIの作成した居宅サービス計画にとってかわられるという危機感をもって、本当の意味でのアセスメントに基づくケアマネジメントを展開していかねばならない。
自動作成できる居宅サービス計画では決して解決できない課題に向き合っていかねばならない。
利用者の生活課題にアプローチして、一人一人の利用者の暮らしの質を向上させるという結果を出していく必要があることを忘れてはならない。
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