3月29日に独立行政法人福祉医療機構(WAM)が、「特別養護老人ホームの入所状況に関する調査」公表した。

張り付けたリンク先からその結果を確認いただきたい。そこでは約2割の特別養護老人ホーム(以下特養と略)が、直近の1年間で「利用率が低下した」と回答している。

入所状況をみると、利用率95%以上の施設が6割しかない。ここ1年間で利用率が上昇したと答えた施設が17.6%あった一方で、利用率が低下したとする施設は21.0%となっており、低下が上昇を3ポイント以上上回っている。

利用率が低下した理由は、「他施設との競合が激化したため」が28.8%、「受け入れ体制が整わず、待機者の入所につながらなかったため」が17.3%となっている。つまり利用者確保が難しいという理由が、職員確保ができずに利用者を受け入れることができないという理由を10ポイントも上回っているということだ。待機者があふれ、買い手市場で顧客確保の営業などありえなかった一昔前とは雲泥の差である。時代は確実に変わっているのである。

当然この状況には地域差もあるだろう。他の特養やサ高住との競合が激しくなって利用者確保が難しい地域(都市部に多い)、競合相手となる他施設がないにも関わらず、そもそも特養入所希望者が激減している地域(地方の郡部地域に多い)、入所ニーズはあるものの、職員確保ができないために待機者を受け入れられない地域(都市部、郡部に関わらず全国的傾向)が混在している。

利用者確保困難な理由は、特養の入所要件が原則要介護3以上となった2015年の制度改正が影響していると思える。その影響で待機者が減っている地域が多い。しかし待機者数がゼロになっているわけではない地域で利用者確保ができない特養もあり、そのことは待機者がすべて特養に空きが出ればすぐに入所したいというニーズを持っている人たちではなく、とりあえず入所申し込みだけしておくという、「入所ニーズが低い待機者」の存在があることが浮き彫りになっている。

その中で他施設との競合に勝ち残っていかねばならない。他施設といってもそれは特養間の競合に限らず、施設のユニット化、小規模化が進んだ今日においては、有料老人ホームやサ高住、小規模多機能型居宅介護、グループホーム等との競合が起きており、それは安かろう悪かろうの施設入所ニーズは減ってきていることを意味している。お金が多少かかっても、住環境が良い施設に入ってケアを受けたいというニーズは確実に増えているのだ。

一方で福祉医療機構(WAM)が開設後2年以内の特養に対して、職員の定着状況に関するインターネット調査(昨年8月〜9月にかけて実施)を行った結果を3/23に公表している。(78施設が回答)

それによると採用しても開設1年後には新設法人(特養開設を契機に設立)で4割以上、既存法人で3割弱が退職していた。サンプル数が少なく、データ価値は決して高いとは言えない調査かも知れないが、この傾向は多くの地域でも見られることのように思われる。

このように相変わらず職員の確保や定着に苦戦している施設が多い実状もある。このことは職員採用に応ずる数を増やすだけでは意味がなく、いかに職員の定着率を高めることが重要な課題であるかということを示している。

そして利用者確保と職員確保という二つの課題は、国や都道府県あるいは市町村レベルで、全体的な課題解決を図ることを期待してはならない。そんな悠長な考えをしている事業者は生き残っていけないのだ。地域の中で介護事業を安定して経営し続けるためには、経営戦略として法人・事業者単位で創意と工夫が求められ、独自の利用者、職員確保策を図っていかねばならない。

現在のこうした状況で、利用者確保の義務と責任を特養の相談員に押し付けて、利用者確保ができないことを、個人的能力の問題として糾弾することに終わる法人に明日はない。

市場リサーチは必須であるし、営業地域の中で独自の利用者確保策も練っていく必要がある。

例えば特養の待機者減が進む中で、要介護1及び2の認知症の人の行き場所がなくなるという問題が指摘されている。そうであれば要介護2以下の人が特養に入所できる「特例入所」のルールをもっと活用できるように、保険者と積極的にコミュニケーションを交わして、そのシステムを簡素化して活用すべきである。

こう指摘すると、そのような軽度の利用者を受け入れては特養経営に必要な、「日常生活継続支援加算」を算定できないと指摘する向きがある。そんなことはない。日常生活継続支援加算は、新規利用者に占める要介護度4もしくは5の人の割合が70%以上であるだけではなく、認知症の自立度が薫幣の人の割合が65%以上でも要件該当する。そうであれば認知症が原因で行き場所を探している要介護2以下の人については、認知症自立度が薫幣紊箸覆覯椎柔が高いのだから、特例入所の判断の際に、当該施設の医師が認知症自立度の判定に積極的に介入して判定しなおして、要件該当するように努めるべきだ。

そもそもこの加算の要件に、認知症自立度判定を入れた意味、その判定が近直の介護認定の結果に限らず、最も新しい医師の判定に根拠を求めて良いとした意味を考えてほしい。この部分では全国老施協が頑張って、このルールを獲得したのである。すべての特養がこの加算を算定できるために加えたルールである。それを活用すべきだ。

これらのことを総合的に鑑みると、特養経営については、施設の管理体制をしっかり整備するという考えは時代遅れで、施設管理以前に法人経営の視点がより重要になる。法人に経営戦略室をきちんと置いて、利用者確保と職員確保の独自戦略を練り上げながら、各施設がどのように動くかを総合的に指揮する専門職を配置すべきである。

これは社会福祉法人に限らず、医療保人やNPOおよび民間営利企業が運営するすべての介護事業者に求められる視点だろうと思う。

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