4月は介護サービス事業者に、たくさんの新入社員が入職してくる時期である。

そのためこの時期になると、4月に入職する職員に対する事前研修を始めている事業者も多い。現場指導を行うに先駆けて、基礎知識を座学でシッカリ教え込む期間をつくる職場が増えてきた。その方が職員が育ち定着し、常に人員が足りずに職員募集をしなくて済むことが証明されているからだ。

4/1の入職と同時、にいきなり介護の現場でOJTを開始するような無謀な事業者には、職員は定着しないことが明らかになってきたためである。
(※勿論4/1〜座学による基礎研修をはじめ、それを終えてから4月半ばで現場指導を行うという方法でもよいだろう)

座学による基礎研修期間を組み込んだ、きちんとした研修プログラムをシステム化している事業者の管理者の方々は、必然的に高い意識を持った方々でもある。高い理念を掲げて、その理念を実現するために、職員にも高い目標を持ってほしいと考え、正しい介護知識や介護技術を持つように期待をかけている。

そのためにいろいろなことを、たくさん教えたいという思いが強い施設長さんが多い。自分が介護に対して抱いている熱い思いをすべて伝えたいと考えているからだ。

しかしここで少し冷静になってもらいたい。

伝えたいことがたくさんあるとは思うが、新入社員にそれをすべて吸収できるキャパがあるかどうかということだ。

新入職員の立場で考えると、この時期は職場の雰囲気に慣れ、職員や利用者の顔と名前を一致させ、仕事の手順をはじめ、いろいろなことを覚えなければならない。そのような時期であるからこそ、詰め込み過ぎずに、基礎部分だけをしっかりと確実に伝えたいものだ。管理者の思いを、すべてこの時期に詰め込こもうとしても、その思いは新入職員という器には入りきれないことにも配慮が必要なのだ。

また座学でいくら思いを伝えても、実際の介護場面で先輩職員が、その思いとは裏腹な対応をしているとしたら、座学による基礎研修は意味のないセレモニー化して、まったく無駄なものにになってしまう。

例えば言葉遣いを含めた利用者対応について、お客様として接するにふさわしい丁寧な対応の必要性をいくら唱えても、現場の実務についた瞬間、それがお題目に終わって、職場の全体の雰囲気がサービスマネーに欠け、ぞんざいな言葉が飛び交い、横柄な態度が許されているようならば、ものの一月もしないうちに新入職員の感覚は麻痺して低きに流れ、無礼な慣れ慣れしい言葉を親しみやすい言葉かけであると勘違いし、横柄な態度をなんとも思わなくなる。

これでは貴重な時間とお金をかけて、基礎研修を行う意味がなくなってしまうのだ。それは絶対避けなければならない。

逆に、職場全体でサービスマナーの意識が高く、横柄な言葉を注意する土壌があるなら、そうした職場で「タメ口」で利用者に話しかける新入職員は居なくなる。それだけでも職員教育の当初の目的は達せられるのだ。つまりこの部分は、職員が日常的に利用者に適切な態度と丁寧な言葉遣いを行っているだけで、あえて座学で伝えなくてもよいことになる。

このあたりの意識を強く持って、座学による基礎研修で伝えるべきこと、伝えなくて良いことを区別してプログラムをつくってほしい。もちろん、わかりやすい伝え方をまずは心がけるべきであり、簡単なことを難しく伝えることがプロだという勘違いをなくすことは最も重要である。

忘れてはならないことは、職員研修というのは、入職時研修で終わるものではなく、一生続くものであるし、入職後1年間は、新人職員として定期的に段階を踏んだ教育が行われる必要があるということだ。

鉄を熱いうちに打つことは大事であるが、熱い管理者の思いを、この時期だけですべて伝えようとすると、管理者の熱すぎるエネルギーに燃え尽きてしまう新人も出かねないという配慮も必要となるのである。

ゆっくり確実に、少しずつ水や肥料を与えることで、小さな種は素敵な花びらを開いてくれるようになるだろう。誰かのあかい花になるために・・・。

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