指定介護老人福祉施設の人員、施設及び運営に関する基準について(平成12年老企第43号) の11介護の項目では、特養における褥瘡管理について以下のように規定している。
(5)第5項の「褥瘡が発生しないような適切な介護を行うとともに、その発生を防止するための体制を整備」するとは、褥瘡の予防に関わる 施設における整備や褥瘡に関する基礎的知識を持ち、日常的なケアにおいて介護職員等が配慮することにより、褥瘡発生の予防効果を向上させることを想定している。例えば、
イ.当該施設における褥瘡のハイリスク者(日常生活自立度が低い入 所者等)に対し、褥瘡予防のための計画の作成、実践ならびに評価をする、
ロ.当該施設において、専任の施設内褥瘡予防対策を担当する者(看護師が望ましい)を決めておくこと。
ハ.医師、看護職員、介護職員、栄養士等からなる褥瘡対策チームを設置する、
ニ.当該施設における褥瘡対策のため指針を整備すること。
ホ介護職員等に対し、褥瘡対策に関する施設内職員継続教育を実施 すること。
といったことが考えられる。 また、施設外の専門家による相談、指導を積極的に活用することが 望ましい。
この規定に加えて今回の介護報酬改定では、特養(地域密着型含む)と老健のアウトカム評価として、褥瘡マネジメント加算が新設された。その算定要件は以下のとおりである。
イ、入所者ごとに褥瘡の発生と関連のあるリスクについて、施設入所時に評価するとともに、少なくとも三月に一回、評価を行い、その評価結果を厚生労働省に報告すること。
ロ、イの評価の結果、褥瘡が発生するリスクがあるとされた入所者ごとに、医師、看護師、介護職員、介護支援専門員その他の職種の者が共同して、褥瘡管理に関する褥瘡ケア計画を作成していること。
ハ、入所者ごとの褥瘡ケア計画に従い褥瘡管理を実施するとともに、その管理の内容や入所者の状態について定期的に記録していること。
ニ、イの評価に基づき、少なくとも三月に一回、入所者ごとに褥瘡ケア計画を見直していること。
この加算は、入所者の褥瘡発生を予防するため、褥瘡の発生と関連の強い項目について定期的な評価を実施し、その結果に基づき計画的に管理することに対し新たな評価を設けるという主旨である。
ところで要件ロでは、「褥瘡が発生するリスクがあるとされた入所者ごとに〜褥瘡ケア計画を作成していること。」とされていたため、当初僕はこれを読み間違えて、「褥瘡が発生するリスクがある利用者」に対して算定できる加算だと考えていた。
しかし算定要件を改めて読むと、それは大きな間違いであることに気づかされる。
この加算は、「施設入所時及び、それから3月ごと」に、「入所者ごと」=「入所者全員」について、「褥瘡の発生と関連のあるリスクについて、評価を行い、その評価結果を厚生労働省に報告する」ことが求められているものだ。
そのうえで、「褥瘡が発生するリスクがあるとされた入所者ごと」=「リスクのある入所者全員」については、共同作業による計画作成と、それに従った褥瘡管理を行い、その記録を行っているとともに、その見直しを行うことが要件である。
つまり褥瘡発生リスクのない利用者については、ロ及びハの要件実施は必要ないものの、評価と報告は同様に行う必要があることから、リスクの高低もしくは有無にかかわらず、利用者全員に対して加算算定が可能になるというものである。要するに褥瘡予防計画はリスク者だけに作成し管理するが、リスクがあるかどうかを定期的に評価するのは利用者全員だから、算定も全員にできるという意味だ。
そんなことは改めて言われるまでもなくわかっていたという人の方が多いのかもしれない。しかし僕のように、リスク者のみの加算であると勘違いしていた人がいるかもしれないので、一応僕の馬鹿さ加減を白状することも含め、ここでアナウンスしておく。
ところでこの加算は、3月ごとに10単位しか算定できない加算であり、算定単位としてはそう大きな加算だとは言えない。しかし冒頭で示した運営基準により、現在でも褥瘡対策委員会を開催して、個別の検討を行うなどの褥瘡管理は行われているだろうし、対策が必要な利用者については施設サービス計画に対応方法が落とされているだろうから、新加算算定のための作業が大幅に増えるわけではない。
しかも算定要件から見えることは、これは特養や老健に最低限求められるケアの品質であるという意味もあるし、厚労省に報告するデータは、次の報酬改定時の自立支援介護評価の基礎データにつながることは間違いないと思う。そこに関与しない手はない。
よって算定単位が低いからといって、この加算をおざなりにせず、必ず算定するという心構えが必要である。
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